指導者の言霊「ジョセップ・フェーレ・イバルス バルセロナ・サッカー・アカデミーヘッドコーチ」
楽しんでトレーニングすることでモチベーションやクオリティが向上
私が指導するときに大切にしていることは、子どもたちにサッカーを楽しんでもらうことです。なぜかというと、子どもたちはサッカ ーが好きだからこそ、ゲームでベストを尽くしたり、学ぶことも多いからです。もしサッカーが楽しくなければ、サッカーのクオリテ ィも落ちてしまい、効率よくサッカーを学ぶことができません。そのためにトレーニングメニューは、サッカーを楽しみながら学べるような内容を考えています。サッカーを楽しむ環境があれば、子どもたちもリラックスしてプレーできるし、モチベーションや練習のクオリティの向上にもつながるのです。
子どもたちとコーチとの関係にも気をつけていて、お父さんのように近すぎるわけでもなく、かといって遠すぎる存在でもなく、お互いがコミュニケーションをとれるフレンドリーな関係を保つように心がけています。コ ーチがチームをリードする方法はたくさんありますが、怒鳴らなくても指導できると思うのです。 子どもたちは同じ目線に立ってあげないと、上から言われていると感じてしまいます。そのため、子どもたちが座っている場合は、一緒に座って目線を合わせながら話すようにしています。また、練習に魅力を持ってもらうために、子どもたちが理解しやすい言葉を選んで説明する、会話の中にジョークを交える、わざと大げさにやってみたりするなど、ジュニア世代ならではの指導を日頃から考えています。
年齢を問わず、指導する上で大事なことは、トレーニングだけではなく、人間として大切なことも教えることです。それは道具を大切に使ったり、指導者や相手をリスペクトする気持ち、フェアプレーの精神など、さまざまです。例えばスペインでは、練習後にスパイクを磨いたり、シャワールームを使ったらシャワールームをきれいにするなど、使ったものは常にきれいにするということを子どもたちに意識させています。
サッカーを学ばせるために質問して自分の力で答えを導く
私は子どもたちにとって“練習や試合が1番の指導者”だと考えています。 子どもたちは練習や試合をすることでサッカーを体で覚えていくのであって、指導者は練習や試合の手助けをする立場だと思うからです。そのため、トレーニングメニューがとても重要になってきます。トレーニングメニューに必要なのは「楽しさ」「モチベーション」「学び」の3つです。 これらが全部そろったトレーニングメニューを考えてあげることが何よりも大切だと思うのです。
また、指導者が子どもたちのプレーに対して「それはするな、あれをやりなさい」と強く言うことは、一時的にプレーを修正できても、彼らの学びにはつながりません。私の場合は、しっかりと学ばせるために、プレーについてよく子どもたちに質問をしています。「今のプレーはどうしたの?」と言う感じで子どもたちに質問をして、もしその答えが間違っていたら、正しい方向へ導いてあげるために、「なんでボールを失ったの?」と、さらに質問をしていきます。自分自身で答えを考えることで、結果的に学びにつながるのではないでしょうか。
子どもたちはとても想像力豊かなので、ときにはすごいひらめきが出てくることがあります。 私が思っていた答えよりもはるかに良い答えのときもあるので、そういった場合は、素直に認めてあげるようにしています。
時々、練習や試合を観にくる親御さんのなかに、内容に対して口出しをする方がいます。親御さんと指導者がコミュニケーションをとることは大切ですが、ピッチではコーチが責任を持って指導していますので、コーチをリスペクトして任せてほしいのです。そして、子どもが助けを必要としているときは手助けをしてあげてください。手助けをするということは、全部やってあげるのではなく、あくまでサポートをしてあげるということです。 お子さんがサッカーでつまずいたときは、優しく手を差し伸べてあげてほしいと思います。
※この記事は2015年2月17日に掲載したものです。