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指導者の言霊「森山佳郎 現ナショナルトレセンコーチ兼U-16 日本代表コーチ」

指導者の言霊「森山佳郎 現ナショナルトレセンコーチ兼U-16 日本代表コーチ」

子どもたちがミスを恐れずに積極的にプレーできる環境を

僕が指導する時に注意しているのは、子どもたちがミスを恐れずプレーしたり、武器を磨くために、自分の特徴をいかした積極的なプレーを促してあげることができるか、ミスをどこまで許容することができるかという点です。指導者が選手のプレーに対してネガティブなジャッジをしたりプレーを制限してしまうと、どうしてもプレーが小さくなってしまったり、一度失敗するとやめてしまって安全なプレーに終始してしまうので、ミスしてもいいから自分がやろうとしている事をしっかり頭に入れて、チームの勝利のため、自分の成長のために前向きにトライさせることを大事にしています。ミスを指摘しないわけではないですが、ダメと言うよりも「今の状況ならこんな選択肢もあったよ」と提示してあげるんです。もちろん、ミスをして下を向いていたり、選手として取り組みの姿勢が良くない場合は厳しく指摘しますが、前向きにチャレンジしようとした事に対しては評価しています。思い切ってチャレンジして手くいかなくても、次はさらに工夫してもう1回やってみるというメッセージを伝えて、ポジティブな評価を与えるよう心がけています。

また、指導者として大事なことは、子どもたちを選択肢の多い選手にしてあげることだと思います。特に今はユース年代のサッカーを見ても、プレークオリティーや状況判断の質とスピードのレベルが上がってきているので、そういう部分をおろそかにしてしまったら、いくら武器を持っても通用しません。なので、指導者が選手たちにプレーの基準を示さないといけないと思います。海外にチャレンジする子どもたちの話を聞くと、日本人はボールの扱いは上手いけどサッカーを知らない、という理由で評価されないとよく聞きます。指導者が、サッカーというスポーツの本質を理解し、子どもにもサッカーの理解を深める働きかけが出来ないとだめだと思いますね。

細かい指導も必要ですが、子どもたちが本気でチャレンジする雰囲気や激しくボールを奪い合うような練習環境設定が大事だと僕は考えています。規則に縛りつけられたような練習では、試合中に活かせる本物の技術や個人戦術はとても身につきません。イキイキとした声が響きあったり体がぶつかる音がしたり、真冬であれば湯気が上がるような熱のある練習や試合をすることで、初めて本当の技術や戦術が身につくのではないでしょうか。

自分のことは自分で出来てこそ戦えるフットボーラーになれる

ピッチの中で100%でないことはあり得ないので、その為には自分も本気でなければなりません。なので、ピッチのラインをまたぐ時は一気に本気モードに切り替えるような意識を持ってトレーニングに入るようにしています。選手たちにも、ピッチに入る時には「やってやるぞ!」という気持ちで入れよと話しています。本気で練習をやらないと本番で絶対に使えないし、練習のための練習では意味がないですからね。ただ、オン・オフははっきりさせるようにしていて、ピッチでは本気でやらないなら許さないという雰囲気を漂わせますが、普段は指導者ではあるけれど、サッカー仲間でもあるので、違う顔で接するようにしています。

保護者の方には、子どもたちが自分のことは自分で出来るよう接してほしいですね。僕は1人の自立した人間こそが戦えるフットボーラーになると考えています。忘れ物をしたり挨拶できないなど、ピッチの外で自立していない子は、ピッチの中のプレーにも表れます。意志や意欲が働いて毎日の積み重ねが出来る子と、ただ毎日過ごしている子では、長いスパンで考えると大きな差がついてしまいます。サッカーの90分間の試合時間の中で、1人の選手がボールを持つ時間は約3分弱程度と言われていますが、ボールを持っていない時にどのようにチームに関われるかがとても大事だと思います。サッカーの90分間と日常生活の24時間は通じるものが絶対あるので、家庭での過ごし方も大事だよということをこれからも伝えていきたいです。

※この記事は2015年1月15日に掲載したものです。