お昼寝は効果なし!? 熱中症と睡眠の深~い関係
連日猛暑が続いていますが、みなさんはどんな熱中症対策をしていますか?
実は睡眠不足になってしまうと、熱中症になりやすくなってしまうのです。
そこで第2回目は、睡眠と熱中症の関係について解説していきます!
★前回の記事はこちら
しっかり睡眠をとればサッカーも上手くなる!?睡眠のチカラとは?
そもそも深部体温って?なぜ熱中症になるの?
みなさん、「深部体温」という言葉を聞いたことはありますか?
私たち人間の体温には、皮膚表面の温度と深部体温の2種類があります。
深部体温とは、手足などの皮膚の温度ではなく、脳や内臓など体の内部の温度のことで、皮膚の温度よりプラス1度高いと言われています。
実は、この深部体温は熱中症と深い関係があるのです。
普段私たちは、体温が上昇してもかいた汗が蒸発することで表面の温度を下げ、熱を放出することで深部体温をコントロールしています。
しかし、湿気が多い環境下などでは汗の蒸発が不十分な状態になり、体内の熱がうまく放出されず、深部体温が下がらない状態になってしまうことも。そのため、深部体温(脳や内臓の温度)の上昇によって、熱中症の症状を引き起こしてしまうのです。
とくに深部体温が40度まで上がると全身けいれん、42度で多臓器不全になる可能性が高まると言われており、深部体温の上昇は命に危険を及ぼすほど怖いものなのです。
深部体温は睡眠の良し悪しも左右する!
深部体温は、私たちの健康状態に大きく影響を与えるだけでなく、実は睡眠にも密接に関係しています。私たち人間の深部体温はサーカディアンリズム(体内時計)の働きで日中高く、夜間は低くなります。
上記のグラフの深部体温と指先の皮膚温の変化をみると、眠りにつく4時間も前から指先の皮膚温が少しずつ上昇し始め、高温になるとやがて深部体温が下がり始めているのがわかります。
これは皮膚温を上げて放熱することで深部体温を下げ、眠るための身体の準備をしているからです。私たちの身体は、睡眠中は深部体温の温度を下げて臓器や筋肉、脳を休ませ、朝の起床時間に向かって徐々に深部体温が上がる仕組みになっています。
入眠時に皮膚温が上がり、深部体温が下がって両者の温度差が縮まっていくことが、睡眠のスイッチになります。
逆に、夜になっても深部体温がなかなか下がらないと、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が下がってしまうこともあります。
よく赤ちゃんが眠くなると汗をかいたり、手足がポカポカしてくるのも、手足の皮膚から放熱をして深部体温を眠るために下げているからなのです。
深部体温は、 良い睡眠をとるためにも大切なポイントとなるわけです。
睡眠不足の時は熱中症になるリスクが上がってしまうことも
睡眠と熱中症の関係については、「睡眠不足になると深部体温のコントロール機能が低下し、深部体温が下がりにくくなる」(2014年独立行政法人労働安全衛生総合研究所)と発表されています。
この研究は、健康な方を対象に7〜8時間眠った翌日と、4時間しか眠らなかった翌日に暑い環境下(室温35℃、湿度40%)でウォーキングをしてもらい、深部体温の変化を見るというものでした。(出典:体力科学 一般社団法人日本体力医学会/2014年63巻1号「睡眠不足による暑熱負担の増悪と予防対策」)
すると、午前中のウォーキングでは差が見られなかったものの、午後のウォーキングでは4時間睡眠の方が休憩時間中の体温の戻りが悪く、その後、さらに深部体温が上昇してしまうという結果に。
つまり、睡眠不足の時は暑さによって上昇してしまった深部体温が下がりにくくなってしまうため、熱中症にかかるリスクが上がってしまうというわけです。
お昼寝も効果なし!睡眠不足は深部体温が下がりにくくなる
では睡眠不足時にお昼寝をすれば深部体温の上昇を抑えることができるのでしょうか?
睡眠不足の方に20分間お昼寝をとってもらった場合の深部体温の変化も調べられています。しかし、残念ながら眠気やパフォーマンスの改善は見られたものの、お昼寝は睡眠不足による深部体温の上昇を抑える効果は認められませんでした。
お昼寝では、熱中症の予防にはならないため、夜まとまった睡眠をとることが重要だというわけなのです。
さらに、この研究では睡眠不足によって日中ぼーっとしてしまったり、暑さに対する不快感が増すなどの心理的な作用も報告されています。睡眠はフィジカル面だけではなく、メンタル面にも大きな影響があることがわかります。
まだまだ続く猛暑。日々行っている熱中症対策の中に「十分な睡眠時間をとる」ことも入れてみてくださいね!次回は熱帯夜に快適に眠るためのポイントをご紹介します!