【フィジカルトレーニング ~vol.09~】速く走るには正しい姿勢がすべて
速く走るには正しい姿勢がすべて
自ら以前は鈍足だったと語る元日本代表FW岡崎慎司も、根本から”走り”を見直し、基礎から”正しい姿勢と走り”に取り組むことで加速力を身につけた。
その岡崎を指導してきた杉本龍勇氏が、スプリント向上のポイントを伝授する。
TRAINING POINT
・戦術を理解していかにゴールを逆算するか
・正しい走りを身につける前にまずは正しい姿勢
・正しいフォームでダッシュしなければ意味がない
・速く走るには股関節の可動領域と腕の振り
元日本代表FW岡崎慎司も昔は鈍足だった!?
世界最高峰と言われるプレミアリーグでプレーし、日本代表としても活躍したFW岡崎慎司も、かつては鈍足でした。Jリーグでプレーしていた当時の彼と言えば、豪快なダイビングヘッドによるゴールが代名詞。しかし、裏を返せば、クロスに対して頭から飛び込むしかゴールを決める手段がなかったとも言えます。ようするに足でシュートするポジショニングが取れていなかったため、ダイビングヘッドするしか得点する方法がなかったのです。
ストライカーにとって重要なのは、シュート技術はもちろんのこと、チームによって変化する戦術を理解したうえで、自らが得意とする得点パターンであり、形に持ち込めるかどうか。大事なのはゴールまでのプレーを逆算し、それに応じた動きができるかどうかです。
では、昨今、岡崎がレスターや日本代表で挙げていたゴールはどうか。得意としていたダイビングヘッドによるゴールは大幅に減り、足によるゴールが増えています。それだけ今の彼は、適切なタイミングで、適切な位置へと走り込めるようになっているのです。
もともと岡崎は、運動量はありましたが、正直、100m走が速くなる素質はそれほどありませんでした。そこで着目したのが、加速力をどう上げるか。中長距離ではなく、ゴール前での2~3mであり、そこに入っていくための加速力を上げようとしたのです。
まず、岡崎に課したのが正しい姿勢で走るということ。以前の彼は猫背のような姿勢だったため、普段の生活から正しい姿勢を心掛けてもらい、それを保持することを求めました。そのうえで正しい走りによるダッシュやスプリントなどに取り組んだのです。
高校生の練習においても、スプリント系のトレーニングは行っているはず。しかし、ここで誤解してほしくないのが、スプリントは回数をこなしたからといって加速力がアップするものではないということ。スプリントのベースにあるのはあくまで技術。正しいフォームで走らなければ、いくら量をこなしても上達することはありません。量により改善するのは、長距離走だけです。
正しい姿勢を保持したうえで、正しい走りを身につけるポイントを挙げるとすれば、足は股関節からつながっているため、股関節の可動領域を広げることが重要です。可動領域が広がることで、足の回転率は下がるかもしれませんが、その場で足をジタバタさせているだけでは、DFよりも速くゴール前に到達することはできません。今まで5歩かかっていた地点に3歩で到達できればいいわけですから。
また、最近の高校生の走りを見ていると、腕を振ることを忘れがちです。走っているときに、頭からつま先までのラインが崩れていないか。足の運びの動きはスムーズか。腕を触れているか。今はスマートフォンで動画が撮れる時代。毎回ではなく、期間を決めて自分のフォームを撮影してチェックしてみるのもいいのではないでしょうか。
加速力を向上させるのに、魔法はありません。正しい姿勢による正しい走りに尽きます。岡崎でも改善するのに1〜2年はかかりました。地道に思えるトレーニングを繰り返していくしかないのです。
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◯正しい姿勢
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×間違った姿勢
正しい姿勢とは胸を張るよりも背筋を伸ばすイメージ。速く走るためには、これを習慣化する必要がある。頭が胸より前に出たり、猫背になっている人は注意。
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◯正しいランニングフォーム
背筋が伸びた状態を維持。膝が90度に上がるように股関節の可動領域も重要。腕を振ることも忘れずに。
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×間違ったランニングフォーム
前傾した状態や猫背になっていては前への推進力は出ない。足の回転率が上昇しただけでは前に早く進まない。