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ミスが続く原因かも?プレッシャーを感じているときの視野の持ち方

ミスが続く原因かも?プレッシャーを感じているときの視野の持ち方

元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第30回目。現在さまざまなスポーツのプロアスリートが取り入れている視覚のトレーニング。今回は、そんな視覚のトレーニングで鍛えられる目の動き、視野の取り方などが与えるパフォーマンスへの影響について、心理面からご紹介したいと思います。

集中しないといけない場面でミスを重ねてしまう

中学3年生のA君からこんなご相談がありました。

A君:「試合で最初のプレーをミスしてしまうと、その試合が終わるまでうまくいかないことがあります。ミスを引きずりたくないので、トラップやパスなどを集中してやろうとするのですが、いつものようにトラップやパスができず、どんどん自信がなくなっていきます」

私も同じような経験を現役時代にしたことがあります。集中しないといけないと思いプレーに目を向けるのですが、ミスが重なり失敗を恐れるメンタリティーでプレーに臨まなくてはならず、パフォーマンスを発揮しづらい感覚で試合を終えていました。このようなときに役立つメンタルスキルをご紹介いたします。

まずA君に、最初にミスをしてしまうとどんな気持ちになるのか聞いてみました。

A君:「次もミスしてしまったらどうしようというプレッシャーを感じます。ミスを重ねないようにボールに集中するのですが、いつもどおりプレーができなくて、よりプレッシャーが増していく感じです」

ボールに集中するときはどんなふうに集中していますか?

A君:「とにかくボールだけを見て、目を離さないようにしています。狙ったところにボールを当てられるように努力しています」

 

プレッシャーを感じていない状態の視野の取り方を意識する

このとき、A君はボールを見るということに集中しています。これは心理的な視点から考えると、プレッシャーが高まって視野が狭くなっており、視野が一点に集中しやすくなるということです。

スポーツ心理学では、視野を一点に集中させるより少し広く俯瞰で見たほうが体の反応スピードは速いと言われています。つまり、ボール一点に集中することでより正確なプレーを求めていたA君ですが、体の反応としては遅くなることが起きうるということです。

そこでA君に、普段の練習でトラップやパスを出すときはどんな視点でプレーしているのか聞いてみました。

A君:「トラップするときはパスを出してくれる人を見て、ボールの軌道を見ながら、止めるときもふわっと足元を見ているような感じです。パスするときは出すところやスペースを見て、蹴るときもほとんど足元を見ていないことも多いです」

それでは、うまくいっているときの視野を考えて今度の試合に取り組んでいこうと伝えました。その後A君はこんなふうに話してくれました。

A君:「プレッシャーが高まってきているときこそ視野を大きく取ることを意識してプレーしてみました。そうするとうまくできているときと同じような感覚でプレーできるようになりました。それでもプレッシャーや焦りが出たときにボールばかりに視点が行ってしまうことがあるので、そんなときこそ視点を考えてプレーしてみます!」

 

視野の確保を意識して、普段どおりのプレーをしよう

このように、心理的にプレッシャーが高まったときに視点が一点に集まりやすくなることから考えてみると、視野を大きく確保することがパフォーマンス発揮を助けてくれるということがあります。

写真のポートレート画像のように、一点に集中すると周りがぼやけて見えます。逆に、パノラマに視点を持っていくとより全体が見えてくるものです。全体が見えてくると反応スピード、判断力の向上にも役立ちます。

お子さんのプレッシャーが高まり、いつものプレーが発揮できなくなっているときは、視点の部分からサポートしてみると解決の糸口が見つかるかもしれません。プレッシャーがかからない方法を探すのではなく、プレッシャーかかったときの行動を見返してみましょう。

WRITER PROFILE

山下訓広

1986年5月29日、千葉出身
流通経済大学付属柏高等学校、流通経済大学卒業後、J2 ロアッソ熊本に入団。
ロアッソ熊本退団後、シンガポール、ミャンマー、インドネシアと東南アジアでプロサッカー選手として活躍し11年間のプロ生活を経て、現在は株式会社43Labに所属しメンタルトレーナーとしてトップアスリート、ビジネスマン、ジュニアアスリートに向けたメンタルトレーニングを行っている。

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