育成年代におけるサッカークラブの在り方【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】 | サカママ メインコンテンツに移動
育成年代におけるサッカークラブの在り方【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

育成年代におけるサッカークラブの在り方【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは。大槻です。
能登半島地震によりお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。被災された皆さまのご健康と一日も早いご復興を祈っております。

2024年がスタートしました。サッカーを志す子ども達も進学や移籍で環境が変わる子も多いのではないでしょうか。今回は少し角度を変えて、サッカークラブの在り方と指導者に求められていることについて整理をしていきたいと思います。

サッカークラブの在り方を考える

これまで多くのジュニア年代のサッカークラブを見てきましたが、ひと昔前に比べるとボランティアで成り立っている少年団などの学校単位のクラブチームだけでなく、民間のクラブチームが増えてきたように感じています。その背景には、Jリーグの開幕、社会の変化(遊び場の減少、早期エリート教育化、働き方改革)、少子化の影響などが挙げられます。

クラブチームの増加によって、必然的にクラブチーム間の競争も出てきて、子ども達に選ばれるクラブになる努力が必要になってきています。サッカークラブにも運営がありますから、会員確保は大きなポイントになっていると思われます。他クラブとの差別化を図ることで、『このクラブでサッカーをやりたい!』と思われるようなクラブ運営をしていくことが求められているような気がしています。

『クラブとしての特色をどこに作っていくのか?』という視点を持つことは、どんなクラブであっても必要なことかもしれません。各クラブにさまざまな拘りや特色があっても良いと思いますが、忘れてはいけないことがあります。

 

〝主役は子ども達〟であること

まずは子ども達とその保護者の方が安心安全に楽しくサッカーが出来ることが大切だと思っています。クラブを強くしたい、選手を育てたいという想いだけが先行してしまい、目の前の子ども達がおざなりになってしまっては本末転倒ではないかと思うのです。

①安全管理

子ども達のサッカーの現場でどんな危険が起こるのかを予見しておかなければなりません。安心安全に子ども達を見守れる危機管理能力は、とても大切です。練習までの行き帰りの指導、使わないボールの置く場所、ゴールの転倒防止、備品や水筒などを置く場所、友達との関係性など子ども達に危険がないか、常に周囲を見渡しておく必要があります。これはサッカーの指導以上に大切なことです。

②発育発達の知識を持つこと

子ども達がどのような成長段階にあるのか、何が出来て、何が出来ないのかを見極める必要があります。特に成長段階においては、身体だけでなく、心と理解力などの目に見えづらい部分の見極めがとても大切です。子ども達が〝身体的に出来ないことなのか〟〝理解が追い付いていないのか〟を見極めて働き掛けをする必要がある訳です。〝大人の当たり前は、子どもの当たり前ではない〟ということを常に頭に入れておくことが大切になってきます。

難しい練習をすればサッカーが上手くなるという訳ではありません。子ども達の段階に応じた目標を設定して、楽しいと感じられる練習になるように指導者が工夫をしていくことが大切です。

③大人同士の関係性を大切に

子ども達は大人の振る舞いをよく見ています。指導者間、保護者同士、指導者と保護者など大人同士のポジティブな関係性の構築は子ども達の発育発達に大きな影響を与えるでしょう。まずは大人同士がお互いを尊重し合える心を持ちたいものですね。

 

勝ち負けだけではない価値を作る

サッカーも勝負事ですから、勝利を追い求めるのは当然のことです。ですから、クラブとして、勝つことでクラブの価値を高めていきたいと考えるのは自然なことかもしれません。しかし、勝利を追い求め過ぎてしまい、子ども達のことを無視した厳しい口調、心無い言葉を掛けている場面を目にしたことがあります。子ども達が大人の発言に対して萎縮してしまい、自分の判断が奪われていくようなことがあるかもしれません。これは指導者だけでなく保護者の立場であっても同様です。

大人からの過剰な期待と要求によって、子ども達は失敗をすることに対して臆病になっていきます。臆病になってしまった子ども達は、チャレンジをしなくなってしまい大人に言われるがままにプレーをするようになっていくでしょう。

ジュニア年代は、比較的従順なので言われるがままにプレーするかもしれませんが、年代が上がっていくと自分の意志で考えて行動するようになっていきます。上手くいかなかった時にはバーンアウト(燃え尽き症候群)や自分で考えて動くという習慣に乏しくなってしまうこともあります。


※バーンアウト(燃え尽き症候群)
それまで熱心にサッカーに取り組んでいた子が、突然やる気を失ってしまうことを言います。目標が達成されなかったり、過剰なプレッシャーがかかってしまい精神的に疲弊してしまうことで大好きだったサッカーを嫌いになってしまったりすることもあります。


ここでも何度も記事にしていますが、育成年代においては特に〝結果〟だけで判断せずに〝姿勢〟に対して評価をしてあげることが大切です。出来る、出来ないではなく、取り組む姿勢を育てていくことで結果的に出来るようになっている…そんな状態が理想かもしれません。

クラブとしても、指導者としても勝利を追い求めることは当たり前のことです。しかし、それが子ども達に対して過剰なプレッシャーになってしまう環境では、子ども達は自分の判断でプレーが出来なくなってしまいます。勝利を追い求めながらも、冷静になって何が出来て、何が出来ないのか…それを見極められるようにしておかなければなりません。子ども達の心を奪ってしまっては、逆効果になってしまいます。

 

終わりに

クラブとしても、指導者としても勝利することで認められるような側面は絶対にあると思います。しかし、それだけで選手が育つか? といったらそうではないと思います。指導者の想いだけで子ども達にぶつかるのではなく、子ども達の状態や状況を見極めて働き掛けていく必要があると思うのです。

勝ち負け、出来る、出来ないだけで判断するのではなく、子ども達の〝成長を見守れる〟ということに価値を作っていくことのほうが遥かに大切なことだと思っています。そしてその先に結果が付いてくれば一番良いですよね。我慢も必要ですし、時間も必要かもしれませんが、そこに指導者としてのやりがいがあるように思います。

何度失敗してもチャレンジをやめさせなかった子が、そこから自分自身の基準を作り、更に変化させていくことで日の丸を付けるまでに成長しました。自分の中にあるそういった経験や基準の数々が今も子ども達の指導に役立っています。