ミスの不安に負けない!理想のプレーをするためのマインドセット
元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第22回目。
ミスから逃れるために理想とかけ離れたプレーをしてしまった経験が誰しもあると思います。今回のテーマは、「ミスを恐れたプレーをしてしまう心理的要因と、理想のプレーをするために心がけること」についてです。
ミスを恐れてしまうのはなぜ?
「ミスを気にしてしまう」
先日、中学3年生のお子さんからこんな相談がありました。「得意なプレーは自信を持ってできるが、苦手なプレーはミスしないか心配でうまくプレーできない」ということです。誰しも『ミスをしたくない』という気持ちがあると思います。そして『ミスをしたくない』という気持ちから本来自分が理想としていたプレーからかけ離れたプレーをしてしまうことがあるのです。今回はこの部分をメンタル面から考えていきます。
ミスをしてしまう心理を言語化
彼のポジションはDF(センターバック)です。まずは得意なプレーを聞いてみました。「ヘディング、1対1のディフェンス、インターセプトが得意です。こういったプレーは自信を持ってプレーできます」
次に、ミスを気にしてしまう苦手なプレーを聞いてみました。「ドリブルとパスが苦手で自分にボールが来た時にとにかくミスしないようにプレーしてしまいます。周りからは『もっとチャレンジしろ』と言われますが、ボールが来ると取られたくないのですぐに遠くにボールを蹴ってしまい、相手ボールにしてしまうことが多いです」
ここで、ボールをもらったときはどんな感情になるのか詳しく聞いてみました。「自分がボールを取られたら失点に繋がってしまうので不安があります。またパスをどこに出すか探していると、『早くパスを出さなきゃ』と思い焦ってしまうことも多いです」ということです。
次に、理想としてはどんなプレーをしたいのか聞いてみました。「前にスペースがある時はドリブルでしっかり運んで、味方の選手が受けやすいボールをどんどん出していきたい」ということでした。
理想のプレーができなくなる原因
この時、理想のプレーとミスをしないためのプレーは違うことがわかります。なぜミスが気になり本来の理想のためにプレーできなくなるのかというと、ここには防衛本能が隠れています。人間は生まれ持って防衛本能というものを持っています。
これは自分の身を守る本能です。例えば石が自分に飛んで来たら避けると思います。なぜかというと当たると痛いからです。物理的に言えば防衛本能とは石を避けることで身を守るということですが、なぜかを考えると痛みを感じたくないからだということです。もし石が当たって痛いということを知らなければ、避けることをするかというとしないはずです。
ではこの時、防衛本能がどのように関わっているかというと、『ミスすることへの不安や焦りを感じないため』にプレーをしてしまうということです。するとミスをしないことが目的となり、本来の目的からかけ離れた行動をとってしまうのです。
理想のプレーをするためのマインドセット
ではこの時どのようにマインドセットしていくのかですが、不安や焦りをどうにかしようとするのではなく、不安や焦りがある中で自分のプレーに肯定感をつけていくことがおすすめです。そのためには理想のプレーに対し、今の実力で可能なプレーを明確に設定していくことが大事です。
ここで現状できるプレーを確認していくと、「ドリブルで運び出すことは難しそうなので、とにかくいいポジションをとって近い選手にどんどんパスをしていくことならできそうです」自らできるプレーを設定し、取り組んでもらいました。
すると後日こんな変化を伝えてくれました。「自分で決めたことを繰り返していくうちに、不安の中でもできる感覚があって、何度かボールを運び出すことにもチャレンジできました」試合の中で自信を持ってプレーできた感覚を味わえたそうです。
自分ができることから始めてミスを減らしていこう
ミスが気になることはあると思います。
その先には人間が持つ防衛本能があり、自分を守ろうとすることにより本来の目的から行動がずれてしまうことがあります。お子さんをサポートする際は、本人が感じている感情に寄り添い、その中で本人ができる行動設定をしていけるとより自信に繋がっていくでしょう。