次に取り組むべき課題が見つからない時の「課題の見つけ方」
元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第25回目。みなさんは、自分の調子が悪い時は明確に課題が見つかって、逆に調子がいい時は、次の課題は何を取り組めばいいのか見失った経験はありませんか?そんな今回のテーマは、「課題の見つけ方」についてです。
次に取り組むべき課題が見つからない
自分の調子が悪い時は明確に課題が見つけやすいことが多いと思います。自分が繰り返しミスしてしまったことなどがそのまま課題として浮き彫りになることが多いからです。しかし、調子がよく試合にも出られている時は何を修正するのか、これからどんな練習や課題をもって取り組めばいいの分からないということがあったりします。
中学三年生のA君からこんな相談がありました。
「僕は周りの選手より体も大きいし、足も速い方なのでプレーであまり困っていることはありません。試合で点も取れています。ただ、このまま練習に取り組んでいればプロサッカー選手になれるのか不安があります。周りの人にこんな練習をやったほうがいいと、勧められるので取り組んでいますが、レベルアップしていけているのか分からなくなることがあるんです。」
プレーに自信を持っており、結果も残せているという実感があるそうです。周りからの期待もあり様々なことにも取り組んでいますが、レベルアップしていけている実感がなく不安を感じています。
そこで今どんな課題があるのか聞いてみました。
「試合でトラップミスがありました。あの時にしっかりトラップできていれば、ボールを失わずに済んだと思うので課題だとは思いますが、その日のグラウンドは地面がデコボコで弾んでしまったこともあったので、ミスにつながってしまったと思います。今、練習の中で意識してトラップしているので、修正はできてきているように感じます。コーチや親からもっとこうしたほうがいいんじゃないか?といわれるのですが、自分としてはさほど課題と感じていないところだったりするので、あまり上達している気はしません。なので練習の継続はしますが、大きな課題とは思えない気がします。自分がどんなことに取り組めばいいのかわからない事が課題かもしれません。」
課題がないことは、うまくいっていることのように思えます。しかし取り組むことがわからなくなると不安になったり、向上心が低下したりということが起きてくることがあります。 課題とは、自分がうまくいっている時はないものかというと、そうではありません。
将来のなりたい自分をイメージして課題を見つける
ここでA君にこんな質問をしてみました。
●将来はどんな選手になりたい?
「プレミアリーグで得点王になれるような選手になりたいです!」
●じゃあプレミアリーグで得点王になるにはどんな選手になればいい?
「ゴール前で仕事ができて、ディフェンスの時もボールをしっかり追えることが大事だと思います。」
●ゴール前でどんな仕事が必要?
「体を張ってキープできたり、タイミングよくスペースに走りこむ事だったり、チャンスで必ず点を決められることだと思います。」
●そうなるためには今のA君になにが必要かな?
「もっとフィジカルを強くしないとだめです!あとは攻撃、守備の時も走れる体力ともっとスピードもつけないといけない気がします。シュートの精度ももっとあげなくちゃ!」
このように課題が浮き彫りになりました。今あがった課題をもとに何をどのように取り組むか考えてもらいました。
フィジカルについては、下半身だけでなく相手を抑えるための腕の力もつけたい。
体力は試合の中でダッシュできる回数をもっと増やせるようにしたい。
シュートに関してはセンタリングからのシュートの得点確率をもっと上げたい。
この後そのために必要なトレーニングを自分で決めてスケジューリングまでしてもらいました。A君は「課題も明確になったので取り組んでいきます!」と意気込んでいました。
向上心を持っていれば課題はなくなることはない
うまくいっている時ほど課題が見えづらくなるなど、人から与えられた課題ばかりに取り組んでいると向上心がそがれてしまう場合もあります。しかし、なりたい自分を考え、具体的にどんなことができる選手になりたいのかを考えていくと課題はより明確になってくると思います。向上心があれば課題がなくなることはありません。
お子さんがお困りの際は課題を与えるのではなく将来を考え、一緒に課題を探すお手伝いをしてあげるとより物事に取り組みやすくなると思います。