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成長に繋げていくミスの処方箋とは?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

華麗なボール扱いだけではなく、心を育てよう!【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆様、こんにちは。大槻です。

今年の夏休みはいかがでしたか?夏休みが始まったかと想ったら、もう終わりに近付いています。暑くて嫌だな...と感じた夏休みですが、振り返ってみるとなぜか寂しさがあるのは自分だけでしょうか?

さて、先月から取り上げて欲しいことや質問などを受け付けております。その中から興味深い質問をいただいたのでご紹介したいと思います。今回は、頂いた質問にお答えしながら、子ども達との関わりの中で大切にして欲しいことをまとめてみました。

【質問】
《私はサッカーを遊びの一貫と思っているのですが、SNSなんかでは、沢山の子供達の華麗な技やプレー動画が沢山。どことなく、子供よりも親の方が真剣でやらされている様に見えてしまう事もあります。サッカーをする本来の楽しみ方など教えて欲しいです。》

スマートフォンの普及やSNSの影響によって、育成年代のサッカーを取り巻く環境が大きく変わってきたように感じています。情報化の進む社会の中で、大人がどのように向き合い、そしてどのように子ども達と向き合っていけば良いのでしょうか?一緒に考えていきましょう。

情報化社会における自己判断力の大切さ

先程も触れたようにスマートフォンの普及やSNSの影響によって、メディアの在り方だけでなく、育成年代のサッカーを取り巻く環境が変わってきているように感じています。

これまでの日本のスポーツ史を考えても、スポーツはメディアと密接に関わってきました。メディアのおかげで露出が増え、スター選手を生み出すだけでなく、流行を作ること、広告収入に繋がることもあります。日本のスポーツは、メディアのおかけで成長してきたという側面もあります。

しかし、逆に言うとメディアの影響が強いことにより、印象が操作されてしまうという危険性も含んでいます。最近ではメディアの在り方も変わってきて、スマートフォンやSNSの普及により個人でも気軽に発信が出来るようになってきました。結果として、育成年代の情報が溢れてしまっているように感じています。その中には、不確かな情報もありますし、不安を煽るようなものもあると思います。だからこそ大人が情報に惑わされることなく、子ども達の成長にとって大切なことを判断して欲しいと思っています。

ボール扱いが上手い=サッカーが上手い?

幼い子が巧みにボールを扱う動画を目にしたことがあります。大人でも出来ないようなスピードでボールを扱う姿に目を奪われました。相手がいない状況下でボールを扱うトレーニングは大人になっても行うものです。特にサッカーの導入期では、思い通りにボールを扱う上で重要なトレーニングになります。加えて子ども達の『出来た!』という実感も得やすいので、その達成感が自己肯定感に繋がっていくでしょう。

しかし、複雑な〝ボール扱い〟が出来るようになったからと言っても、サッカーが上手くなったのか?と言ったらそうではありません。サッカーのベースとなる重要な要素ではありますが、それもサッカーの一部分にすぎません。

ですから、〝ボール扱い〟だけに縛られる必要はありませんし、華麗なボール扱いが出来ないからと言って、大人がそこに縛られてしまい子ども達に強制する必要はありません。出来ないからダメなんてことは全くないのです。

 

サッカーと社会性の関係

我が子が初めてボールを蹴った日のことを覚えていますか?よちよちとボールと一緒に歩く姿や目の前にボールがあれば小さな足で嬉しそうにボールを蹴り返したことでしょう。そんな姿を観て微笑ましく感じた人が殆どだと思います。

子ども達のサッカーは〝ボールと自分〟の関係からスタートします。ただボールを蹴っていれば楽しかったところから、サッカーや社会への理解に伴って少しずつサッカーの『楽しい』が変わってきます。次第に〝ボールと自分〟の関係から〝ボールと自分と相手〟に変わってきます。一つのボールを奪い合う相手を理解できるようになります。まだ理解が進んでいないとボールを奪われて泣いてしまったり、思い通りにならないことに腹を立ててしまったりすることもあるでしょう。こういった子ども達の様子を観察していると理解がどれくらい進んでいるのかを知ることが出来ます。

これはサッカーへの理解だけでなく、子ども達の社会が広がってくることで認識出来るようになってくるような側面もあります。子ども達の発育発達に応じた働き掛けをしていくことで〝サッカーが楽しい〟という気持ちが〝上手くなりたい!〟という気持ちえを育て、〝負けたくない〟という気持ちに育ってきます。

そして更に理解が進んでくると〝ボールと自分と相手と仲間〟という関係になっていきます。仲間と一緒にゴールをする喜びや仲間と協力して試合に勝ちたいという気持ちが育ってきます。これは学校でのグループワークなどを通しても身に付けていける大切なことだと思います。

このように子ども達のサッカーは、社会との関わりの中で育っていくところがあると思います。サッカーも人間が行うことです。そのプレーにはその人の考え方や思考。価値観が大きく影響します。日常の保護者の皆様の関りだけでなく、地域の方々、保育園や幼稚園、学校でのお友達や先生との関りも影響していると言っても良いでしょう。

 

他人と比較をしない

赤ちゃんが歩き始めるのに個人差があるように、成長には個人差があります。しかし、何でも早く出来るようになると誇らしい気持ちになったりするものですよね。成長過程には差があっても大人に近付いてくるとその差は少なくなっていくものですから、長い目で見守る必要があると思います。ただどうしても出来ている子を見ると我が子と比較してしまい焦ってしまうものです。

『〇〇ちゃんは上手に出来ているよ。』
『〇〇くんは凄いよね。』

頭では解っていても焦る気持ちから、そんな言葉を投げ掛けてしまったことはありませんか?他人(兄弟)との比較は子ども達に劣等感を抱かせます。ここで大切なことは〝出来る〟〝出来ない〟ではなくて〝出来るように立ち向かっていくこと〟なのではないでしょうか?取り組む姿勢を評価してあげないとやる気を失ってしまうことに繋がるでしょう。

子ども達は良いところを認めてもらえたら一生懸命になって取り組むようになるでしょう。確かに〝巧みなボール扱い〟を身に付けることは大切なことだと思います。しかし、心を育てていくことは何よりも大切なことだと思います。人気漫画の主人公の『人間は心が原動力』という言葉はまさにその通りですね。

 

最後に

SNSやメディアに取り上げられるような巧みな〝ボール扱い〟は大切な要素です。しかし、それに大人が縛られてしまい子ども達に強制するのは違うと思っています。子ども達に強制して、他の子と比較しながら出来るか、出来ないかで評価をしてしまえば、子ども達は自信を失うだけでなくサッカーから離れていってしまうかもしれません。

サッカーは勝利に向かってチームメイトと協力してプレーすることが大切です。それは社会でも同じですし、目標に向かって力を合わせて行動しなければなりません。しかし、そこで自分がやりたくないからといって役割を放棄したり、自分勝手に好きなことをしたりすれば社会は上手く機能するのでしょうか?サッカーにもチームの中で与えられた役割があり、お互いに尊重し合いながらプレーすることが求められます。

SNSやメディアで観るような華麗な〝ボール扱い〟も試合の中で活かせなければ宝の持ち腐れです。自分のやりたいプレーばかりを優先してしまい、チームの信頼を失うような振る舞いをしていては、持っている力を発揮することは出来ないでしょう。

〝ボールと相手〟から始まるサッカーですが、サッカーというゲームの理解だけでなく社会との関わりの中でサッカーも成長していくと私は考えています。情報に溢れる時代です。何が正しくて何が悪いのか?判断に迷うことがあると思います。しかし、〝出来る〟〝出来ない〟ではなく、〝取り組む姿勢〟を育てていくことを大切に〝明るく、楽しく、元気よく〟大人や子どももポジティブに過ごしていきたいですね。

サッカーに限らず、子ども達の学びの機会は日常に沢山あります。

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WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル