沸騰するような暑さから選手を守る、熱中症対策でできる工夫とは?
みなさん、こんにちは。スポーツナースの山村です。
8月が終わりに近づいていますが連日の猛暑日、さらには地球温暖化ではなく地球沸騰化時代と言われ始めています。まさに沸騰という言葉にぴったりな暑さの毎日。そんな暑い時の熱中症対策シリーズ4回目は「水分補給」です。水分補給の知識や気をつけるべきことなど、私の経験を交えて紹介します。
プレーにも影響する脱水の症状
私たちの体は、大人で60%、小児では70%が水分でできていると言われています。水分には身体に重要な役割を果たす電解質(イオン)が含まれており、大量に汗をかいたりして、この水分が失われると脱水になります。
脱水になると「喉の渇き、体重減少、尿量の減少」などの症状が現れます。またそれ以外にも「目眩や立ちくらみ、嘔吐」などは、日常生活にも影響を及ぼすでしょう。実は脱水により体重の3%以上の水分が失われるとパフォーマンスにも影響すると言われています。3%と言われても分かりにくいと思いますが、喉の渇きを感じる時点で2%の脱水が起きていると言われています。
また3%の脱水ではぼんやりするなどの症状が出始め、判断能力に影響が出始めるため、プレーの質が低下しかねません。またそんな状態でフラフラしている選手に『大丈夫か?』と声をかけても、きちんと判断できなくなっていたり、そうでなくても、選手はサッカーが大好きで、暑くてしんどくても頑張りたいと思って無理をしたりしてしまいがちですよね。
ですが、この暑さの中で無理は禁物です。また、脱水の症状として嘔吐がある事を伝えましたが、嘔吐してしまうと水分補給が自分ではできないため、熱中症を引き起こすリスクも上がります。そうなる前に水分補給をしっかり行いましょう。
工夫しながら水分補給
喉の渇きを感じる時点で脱水は始まっているため、渇く前に飲むことが大切です。また我が家では、体重測定をしてから練習に行き、帰ってきてから再度体重測定をします。そこで体重の誤差から、『今日のトレーニングに対して水分補給がどの程度できていたか』を本人が自覚できるようにしています。始めたのは中学生の頃で言われるがまま実施していましたが、高校生になった今は、何も言わなくても自分で測定するのが日課となり、持っていく水分量を調整できているみたいです。
水分補給も、水ではなく電解質の入ったスポーツドリンクが良いことは皆さんもご存知かと思いますが、運動中に糖分の入ったスポーツドリンクは飲みにくいようで、選手はあまり好みません。そこでよくお伝えするのが、スポーツドリンクを飲み、最後の1口は水にして口の中をさっぱりさせる方法です。そうする事で糖分により吸収速度は上がり、口の中のベタつきも抑えながら電解質を補うことができます。
熱中症対策、できることから始めよう!
酷暑のなか、人工芝グラウンドの表面温度は最高70度になることもあります。人工芝は土や天然芝と違い、熱を吸収・溜め込みやすい素材で、また水を蒸発させる事ができないため、表面温度が高くなります。さらにサッカーをする際に靴と足、靴と芝に摩擦熱が生じるため熱が籠ります。
そのため、選手は火傷をしたり、水疱ができたりすることもあるみたいです。(写真1;息子もいまだに夏は水疱ができる事があります。)夏場にはスパイクに水をかける選手を目にする事があるかと思います。ですが靴下が濡れて気持ち悪く感じたり、表面を濡らしても中の熱までは下げられなかったりなど、なかなかできる対策がないなと思っていました。
そこで見つけたのが、スパイクの中敷に合わせてカットするだけで使用できる断熱のインソールです。息子の使用感はというと…『全然違う!暑くない!!」と好評であり、チームメンバーからも『どこの?』と質問攻めだったようです。初めて使用した際には靴擦れを心配しましたが、息子は全く問題なかったようです。このインソールは夏の暑さだけでなく、冬の寒さにも役立ちそうなところが魅力的だなと思っています。
インソール以外の対策としては、休憩中などにスパイクやソックス、インソールに溜まった熱を逃す事です。お昼ご飯を食べる際や休憩中にはスパイクを脱ぐことが効果的です。またスパイクの色を黒系ではなく白系にする( 過去記事参照:服装からできる熱中症対策って? )など、選手の安全のためにできることから始めましょう。
※本記事は、看護師としての経験や知識をもとに書かれているものです。
熱中症が疑われた場合は、必ず専門の医療機関をご受診ください。