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パフォーマンスを安定させるためのイメージトレーニング

パフォーマンスを安定させるためのイメージトレーニング

保護者の方からこんなご相談がありました。試合前はやる気十分で行くのですが、試合の中で自分がミスをしてしまうと、その後も気持ちが切り替えられずにずっとミスを引きずったまま、怖がりながらプレーしているように感じるということでした。こういったことはサッカーの中ではよくみられることだと思います。

私自身もそういった気持ちを感じたことがありますし、周りの選手を見ていても同じ場面はありました。これは子どもだけではなく、大人の世界でも見受けられる状況です。こんな時にメンタル面がどのようにプレーに影響を与えているのかを考えてみましょう。

ミスが切り替えられないことで生まれる自己否定感

ミスを切り替えるための大切なイメージトレーニング

試合中にミスをしてしまいなかなか切り替えられないとき、それはミスをすることにより自分に否定感を味わっているということがあげられます。ミスをすることにより「こんなはずじゃなかったのに…」「もっとできるはずなのに」といった自分がイメージしていたものに対しての否定感が表れます。

この否定感は自分がイメージしていたプレーに対しての差が大きければ大きいほど強くなります。この否定感が実際のプレーにどのような影響を与えてくるかというと次のミスが怖くなったり、不安に感じたりすることがあるかと思います。

パフォーマンスを安定させるために必要なイメージトレーニング

ここで大切なのは試合前の準備となります。この準備はイメージトレーニングになります。イメージトレーニングというと「すごいスルーパスを出す」「すごいドリブルで抜いてやる」「すごいシュートを決めてやる」という風に良いイメージトレーニングを想像する方が多いかと思います。しかし今回パフォーマンスを安定させるために必要になってくるのは自分にとっての最悪のプレーを想像するイメージトレーニングになります。

悪いイメージトレーニングなんかをしたら、実際に悪いことが起こってしまうのではないのかと不安を感じるかもしれませんが、これがパフォーマンスを安定させるために重要になります。もちろん良いイメージトレーニングをすることが悪いということではありません。良いイメージトレーニングをしたうえで悪いイメージトレーニングもしておくということです。

想定しておくことで繋がる次への準備

想定しておくことで出来る次への準備

例えばある中2のサッカーをしている子どもからこんな経験を伝えられたことがあります。「ディフェンスの選手で、良いイメージを持って試合に臨んだけれど開始5分で自分のトラップミスで相手にボールを取られてしまい失点してしまった」ということです。 そのあともずっと気持ちを切り替えられずに、自分への否定感を感じながら試合が終わってしまったそうです。

この時のことを聞いてみるとやはり「こんなはずじゃなかった」という気持ちが出てきて次のミスが心配になったと言っていました。ここで前述でも述べた【最悪のイメージトレーニング】がどのように役立ってくるかというと、もしかしたらトラップミスを奪われることもあるかもしれないと準備しておくことで、「こんなはずじゃなかった」ではなく「やっぱりこういうことも起こりうる」と自分の中に想定内の感情が生まれてきます

「こんなはずではない」というメンタリティと「やっぱり起きた」というメンタリティではその後の気持ちの持ち方が大きく違ってきます。またこの【最悪のイメージトレーニング】の中で重要なのは、最悪な出来事が起きた時に自分がどのような感情になるのかも想定しておくことです。悔しい、つらい、悲しい、恥ずかしいなど様々な気持ちになることを想定しておくと、これもまた「やっぱりこの感情になったな」と想定内のものになります。

そして最悪の出来事が起きた時、次はこういう行動をしようという行動の準備までしてください。先ほど例に挙げた子は、こういったことが起きてしまったら次のプレーはどうする?と私が聞いたとき、「トラップにより集中する」と答えました。

私が「次は必ずミスしませんか?」と聞いてみると、「少し不安」という答えが返ってきました。ミスをした時に次に取る行動は、自分にとって超えられそうな簡単なハードルを予測・イメージして準備しておくことが大切です。そのことを伝えたうえで、その子にもう一度「次に必ずできるプレーは何か」と聞いてみると「パスが来たらダイレクトで大きく前に蹴ること」と答えが返ってきました。ミスをした後の行動をイメージしたことで【行動の準備】が出来たことになります。

気持ちを切り替えられるのは良いイメージだけではない

ミ気持ちを切り替えられるのは良いイメージだけではない

このように最悪のイメージトレーニングで大切なのは出来事・感情・行動この3つを揃えて準備しておくことです。そうすることで頭の中が整理でき、簡単なプレーから選択していくことで否定感ではなく肯定感を積み上げていくことができます。そうしていつもの自分のプレーを取り戻しやすくなります。

試合前の準備は【良いイメージトレーニング】だけでなく【最悪のイメージトレーニング】もしておく。お子さんがミスをした気持ちを切り替えられずに困っているときは、試合前に出来事・感情・行動の準備を一緒に整理できるとより早く切り替えがきくようになるでしょう。

WRITER PROFILE

山下訓広

1986年5月29日、千葉出身
流通経済大学付属柏高等学校、流通経済大学卒業後、J2 ロアッソ熊本に入団。
ロアッソ熊本退団後、シンガポール、ミャンマー、インドネシアと東南アジアでプロサッカー選手として活躍し11年間のプロ生活を経て、現在は株式会社43Labに所属しメンタルトレーナーとしてトップアスリート、ビジネスマン、ジュニアアスリートに向けたメンタルトレーニングを行っている。

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