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アスリートに大切な「歯」に注目してみよう!

みなさん、こんにちは。スポーツナースの山村です。
今回のテーマは「」です。 昨年のワールドカップでも、マウスガードを装着していた選手が何人かいましたよね。サッカー選手に限らず、アスリートにとって歯はとても大切です(もちろんアスリートでない人にとっても大切ですが)。そこで今回は、歯とスポーツの関係や、競技中に歯が抜けてしまった時の処置について紹介していきます。

アスリートはなぜマウスガードをするの?

格闘技やラグビーなどのコンタクトスポーツの選手が使用しているイメージがあるマウスガードですが、サッカー選手が使用することも増えたように感じます。先のワールドカップでは、日本代表だと遠藤航選手がマウスガードをしていましたね。競技中にマウスガードを使用する目的には、次のようなことがあります。

  • ボールが当たるなどした際の外傷予防
  • 接触時などに歯が凶器となることを防ぐ
  • 強い噛み締めによる歯のすり減りや破損防止

上記の他、まだ議論されている部分もありますが、脳震盪予防のために使用するケースもあるようです。今回は、3つ目の「強い噛み締め」に注目してみましょう。

力を入れる時の「噛み締め」、歯にかかる負荷は?その効果は?

皆さんも重い物を持つときや力を入れる際に、歯を食いしばることがありますよね。人の噛む力は普段の食事で男性が60kg、女性が40kg、思いっきり噛み締めた場合には70kgになると言われています。また、夜間の歯ぎしりでは顎の骨に500~1000kg程度、歯1本単位では250kg程の荷重がかかるとも。こうしてみると、普段の生活から歯に負荷がかかっているのが分かりますし、スポーツ時の歯の負荷がかなり高くなりそうなことも想像できますね。サッカーでは、ボールを蹴る際やスローインの際などには、歯を食いしばり身体に力を入れて安定した動作を維持しようとします。こういった際に歯を守るためにマウスガードが役に立つというわけです。

また、上下左右8本の歯に均等に力を入れられると、歯を嚙み締めた際に筋力が4~6%程度アップするとも言われています。そのため、最近ではマウスガードの有効性として、筋力・運動力アップ、バランス感覚の向上などもあげられるようになりました。この他にも、噛むことで脳の運動機能や認知機能を司る部分の血流が上がるので、動きが活発になったり、判断力にもプラスの影響を期待できます。海外のスポーツ選手にはガムを噛みながらプレーする方もいますが、こういった意味もあるんです。

尚、マウスガードはスポーツ用品店などで購入するタイプと、歯科医が関わらず企業が型取りなどして製作するもの、歯科医が関わり作成する3つのタイプがあります。マウスガードの使用が義務化、または年齢などにより一部義務化されているスポーツの場合は歯に対する意識も高く、歯科検診を定期的に受けているケースが多いのではないかと思います。サッカーに関しては、マウスガードの着用は個人の自由になるので、あまり意識がいかないかもしれません。ただ、歯も大切な体の一部。そして、競技力の向上のためにもとても大切なものです。日頃のブラッシングが適切に行えているかなどを確認してもらうだけでもケアにつながるので、ぜひ親子で意識してみてほしいと思います。

歯が抜けてしまった時の処置は?

 

最後に、接触プレーや競技中に転んでしまったりして、歯が脱落してしまった場合の処置についてをお話しします。歯が脱落してしまうと、もう元に戻らないのかな…?と慌ててしまうかもしれませんが、脱落した歯が永久歯の場合は適切な処置を行えば再植できることも多くあります。(乳歯の場合は再植ができません)

歯が脱落した場合は、まず抜けてしまった歯を可能な限り早く抜けた場所に戻すことが必要です。この時の時間は30分程が目安ですが、スポーツ現場から30分以内に病院へ…というのはなかなか難しいですよね。そのような場合は、歯の保存液か冷たい牛乳、生理食塩水に入れて抜けた歯を保存しましょう。こうすることで6時間程度の時間の猶予ができます。

また、歯の再植には歯根(歯茎に埋まっていた部分)にある歯根膜が大切になります。土がついていたからと言って、抜けた歯をゴシゴシ洗ってしまうと歯根膜を傷つけてしまうので良くありません。その場合は、先ほどもあげた保存液や牛乳で洗い流し、乾燥しないように液に入れておきましょう。また、その際は歯根ではなく、歯冠側(歯茎から出ている部分)を持つようにしてくださいね。

歯の保存液はドラッグストアなどでもあまり見かけないものなので、チームで備えておく場合は牛乳か生理食塩水が良いかと思います。牛乳の場合は冷たいものが必要なので、その点は気をつけてくださいね。

 

WRITER PROFILE

山村麻衣子
山村麻衣子

シングルマザーとして3人の子育てをしながら、救命センターで看護師として働き、スポーツナースとしても活動しています。末っ子は高校サッカーで全国を目指し奮闘中です。万が一が起きている現場にいるからこそ、スポーツの現場でも安全や予防の必要性を感じているので、コラムではメディカル目線のサポート情報などを中心にお届けしていきます。