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人生を変えたシューズ、今度は自分たちが作る側に【サッカーを仕事にするということ】

高校を卒業し、次なるステージでサッカープレーヤー以外の夢を見つけ、専門学校でスキルを磨く先輩たちを追う。今回はヒコ・みづのジュエリーカレッジで「靴職人」を志す“モノづくりが大好き”な3人の元サッカー少年を紹介する。

「自分のため」から「人のため」の靴作りへ

 
亀井怜央(かめい・れお)
武相高校フットサル部出身。浪人中に人生の目標をみつけ、大学受験からシューズコースへ進路変更。21歳。

靴の制作に携わる仕事は狭き門と言われています。僕は浪人をしていたので、大学を卒業してから靴業界を目指すには最低5年の時間を要することになります。それなら今すぐにでも夢に向かって時間を使った方がいいと思い、進路変更して専門学校に行くことにしました。

学校では色んな分野の靴を制作するので、最初は「これが僕が作りたいスポーツシューズに関係があるのか?」と葛藤がありました。でも革靴にしても基礎の部分は共通することが多く、経験を積むことでいろんな技術がつながっていることがわかりました。その過程で「自分のために」と思っていた靴作りが、いつの間にか「人のために」と思うようになっていきました。

自分一人が良いと思ったことより、周りの多数の意見を取り入れたシューズの方が喜ばれるものが作れると気づいたんです。だから今の目標は当初の「スパイクの制作」から二つ増えて、「健康に役立つスニーカー」「歩行をサポートするキッズシューズ」を作ってみたいと思っています。

 
「自分独自の色を出したい」との思いで制作したレディースシューズ。美しいと思った生肉の脂身の模様がアクセントとなっている。

高校時代の「魔法の靴」を自分が作りたい

 
柴垣裕翔(しばがき・ひろと)
中学生の頃から靴に興味があり、高校のサッカー部時代から靴のリメイクなどを行う。20歳。

スニーカー好きが高じて、靴を制作するクラフトマンに憧れを抱くようになりました。「愛するサッカーと靴に携わる仕事をしたい!」と高校の先生に相談した結果、専門学校に進学し職人としてのスキルを磨くことを決意しました。

僕が靴作りで大事にしたいのは、履いている人が気持ちよく歩いて走れること。高校時代にカンガルー革のスパイクを履いた時の衝撃を今でも覚えています。それまで薄く安いビニール素材のような靴を履いていた僕にとって、革のスパイクは足に吸い付くような感覚があり驚きました。履くほど足に馴染んできて、こんな魔法のような靴を自分がつくってみたいと思うようになったんです。

プレーヤーとして靴擦れを起こした経験などが役立っていて、今は木型の設計から足を痛めないように配慮して作成するようにしています。デザインを考えるのも楽しいですが、僕は職人としてのスキルを突き詰めたいです。一人でも多くのプレーヤーに、僕が高校時代に得た感触を味わってもらえるように、靴作りに邁進していきたいと思います。

 
砂漠から着想を得て、素材からこだわって作ったシューズ。寝ることも忘れるほど制作に没頭したという。

科学技術を駆使して思いを表現したい

 
大澤岳瑠(おおさわ・たける)
小学生からサッカーを始める。高校時代は理系で成績上位。大学進学を検討していたが、靴作りにひかれてシューズコースに入学。19歳。

科学技術に興味があり、文部科学省よりSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けた高校で、電子顕微鏡でサッカーシューズのアッパー構造等を研究していました。もともと「なんでだろう?」をとことん追求する性分で、スポーツメーカーでの製品開発に携わる仕事に就けるなら大学に進学する必要はないと考え、専門学校に進学して靴の基本から色んな分野の靴の制作に取り組んでいます。

今では四季を模様で表現し、照らす角度によって光が拡散する仕組みの靴など、頭の中のイメージをシューズで表現できるようになりました。デザインとともに、僕は靴職人としてのスキルも追及していきたいと思っています。それはプレーヤーの実体験として、高校のサッカー部の最後の大会で履いたシューズの履き心地の良さを今でも覚えているからです。今度は僕が作る側として、一人でも多くのプレーヤーの思い入れのある一足を提供できるように、努力していきたいと思います。

高校生のみなさんには、サッカーと関係のないことが意外とサッカーに直結していることがあることを知ってほしいです。好きなことに貪欲に、とことん突き詰めてほしいですね。

 
有名メーカーの新作を想定した課題で、3D技術を使い「川をイメージ」してCGで制作した一足。

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