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中学サッカー進路選択は長い目で見て!【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは!大槻です。
サッカー少年たちは夏休みを前にして慌ただしくなってきた頃かと思います。各地域で行われている全国大会の予選、公式戦、夏の合宿や遠征の準備など調整ごとも多くなってきますよね。また、各カテゴリーの最高学年の子どもたちにとっては、進学やチーム選びなどに頭を悩ませている時期ではないでしょうか。
そこで今回は、新年度に向けたチーム選択について整理していきたいと思います。進路については、以前にもコラムで触れているので前回の記事も合わせて参考にしてください。

セレクションに向けたクラブの考え方【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

「進路選択の三角形」はなぜ大切なの?

以前にもお話させていただいたことがありますが、ジュニアユースの進路を考える際に念頭に置いてほしいのが「進路選択の三角形」です。「進路選択の三角形」とは、自宅、学校、クラブのそれぞれを結んでできる三角形のことを指しています。

 

中学年代は心身共に大きく成長する時期です。大人への準備段階という意味でも、中学年代の生活環境を整えることはその後の成長の大きな鍵を握っていると思います。では、なせ「進路選択の三角形」を意識しなければいけないのでしょうか。それには、中学年代に迎える3つの変化が関係しています。

第二次成長期による身体の成長

 

第二次成長期とは、身体が急激に成長する時期であり、大人の身体に近付く時期のことを言います。個人差はあるものの、統計的には男子が12歳~16歳前後、女子が10歳~16歳前後にこの第二次成長期を迎えると言われています。まさに中学年代は成長期と時期が被ることになります。従って、この時期に「栄養」「休養」「運動」の3つの要素が揃った良い環境を整えていくことが大切です。

例えば、自宅とクラブの距離が離れていると、食事のタイミングが上手くとれなかったり、移動時間の分だけ睡眠時間が削られていく可能性も考えられます。この問題を解消するために送迎をして時間を短縮する…という方法もありますが、保護者の負担が大きくなってしまいますし、自立を促すという観点から見ても現実的ではないように思います。

精神的な変化と不安定な心

 

第二次成長期で成長していくのは身体だけではありません。この時期は「思春期」とも呼ばれ、心の変化が見られる時期でもあります。特に「自分が何者であるのか?」と言った「自我同一性」が確立されていく時期に差し掛かります。周囲との関係性の中で自信をつけることもあれば、落ち込んでしまうことも…。また、親に反抗したり反発したりすることがある一方で、突然甘えてきたり…。何を考えているのか分からない…といったこともあると思います。

このような不安定な心情は成長に必要な過程ではあります。しかし、その不安定な心情に加えて生活のリズムまで崩れてしまうと、疲労も積み重なり学校生活もサッカーも中途半端な状況になってしまいます。特にサッカーを志す子ども達は、サッカーが上手くいかない=何も手が付かないといった状況に陥りやすいところがあるので、生活のリズムを整えることが大切です。そのためにも、自宅・学校・クラブの生活圏を無理のない範囲に収めるようにしてほしいのです。

余談ですが…サッカーで言えば、ポジション特性の理解が出来るようになるのもこの時期だと感じています。サッカーにおける良い選手の概念が広域になってくるのもこの時期です。(あの子はヘディングが強いよね、展開力があるよね、守備が強い、など…)
自分の特徴を理解したり、仲間の特徴を意識したり出来るようになってくることを考えると、本当の意味で戦術的な落とし込みが出来るようになるのもこの時期なのかもしれませんね。

学業との両立がより必要不可欠に

 

中学までは義務教育なので進学先の心配をする必要はないかもしれませんが、中学卒業後はそれぞれが進路を選択しなければいけません。高校受験を考えると、小学校の時以上に学業との両立が必要不可欠です。どんな進路に進むにせよ、より良く生きるために知識と知恵を得ることは大切ですし、物事に取り組む姿勢を育てるといった意味でも学業を疎かにしてはいけないと考えています。

とはいえ、サッカーと学業の両立は体力的にも時間的にも非常に大変です。良いクラブだからと言って時間をかけて遠いところまで通うことになれば、睡眠時間だけではなく学業と向き合う時間を確保するのは難しくなるかもしれません。もし遠いところに通うのであれば、移動時間に勉強をするなど、どうやって学業の時間を確保するかまで考えておく必要があるでしょう。

具体的にはどのくらいの距離なら良いの?

進路選択の三角形の重要性が分かったところで、「それじゃあ具体的にはどのくらいの距離なら良いの?」という疑問が湧いてくると思います。地域によって考え方は違ってくるかと思いますが、自宅・学校とクラブとの距離が遠くても1時間程度に収まるようであれば良いのではないでしょうか。
最近では私学に通いながらクラブチームを選択する子も増えてきましたが、あまりにも一辺が遠かったり、学校が逆方向であったりと移動時間が長くなってしまうこともありますから、一度、三角形を書き出してみると良いと思います。
あくまでもご家庭の考え方次第ですが、心身共に成長期にある子ども達の生活のリズムを整えることは、長い目で見ればプラスになることの方が多いように感じています。

成績や知名度だけでなく、長い目で中学年代を捉えよう

 

中学年代に起こる3つの変化から「進路選択の三角形」を考えていきましたが、いかがでしたか?
中学年代は心と身体が成長していく年代ですから、生活のリズムを整えていくことは非常に重要です。大会の結果や有名だからという理由だけでクラブを選択するのではなく、長い目でこの年代を捉えていくことが大切なのではないでしょうか。

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル

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