思春期の身体や心の変化、どう向き合う?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】 | サカママ メインコンテンツに移動

思春期の身体や心の変化、どう向き合う?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは!大槻です。
今年の夏休みはいかがでしたか? コロナの影響により難しい状況が続いていますが、行動制限も緩和されてきて合宿や遠征、家族旅行と充実した時間を過ごせた方も多かったのではないでしょうか。

さて、今回は「成長期の子ども達との向き合い方」について考えていきたいと思います。成長期のサッカー少年・少女達の身体と心の変化には、どのように働き掛けていけば良いのでしょうか。

クラムジーを知っておこう

 

進路選択の記事でも触れましたが、小学校高学年くらいになると“第二次成長期”を迎えます。この時期は特に身長の伸びが著しく、1年間で10㎝以上伸びる子もいるほどです。身体が大きくなっていくことはポジティブに捉えられることも多いですが、その一方で急激に身長が伸びて身体のバランスを崩してしまうこともあります。この状態を“クラムジー”と言います

身体が急激に大きくなったのにも関わらず今までと同じ感覚で身体を動かすと、感覚的なズレが起きてしまい、スムーズに動くことが出来なかったり、バランスを失ってしまったりします。見ている方からすると、「今まで出来ていたのになんで?」と言いたくなってしまいますが、本人も一生懸命にやっているのに身体が動かない……そんな状態なのです。大人はこのクラムジーという時期を理解した上で子ども達に働き掛けていかなければいけません。

クラムジーへのアプローチ

身体が上手く動かせない、早く動けない、ミスが増えてしまう……そんな時、一番悩んでいるのは子ども自身です。まずは本人に身体の状態を伝え、不安を和らげてあげることが必要です。子どもにとって非常に難しいこの時期に「なんで出来ないの?」「やる気あるの?」といった声を掛けてしまうと、子どものやる気を奪うことに繋がってしまいます。中には練習が足りないといって負荷を上げてしまうこともあると聞きますが、それもまた逆効果です。

では、具体的にはどのような取り組みが必要になるのでしょうか。この時期はスピードや強度といったものを求めるのではなく、まずは今まで取り組んでいた技術の復習をゆっくりと行うと良いでしょう。
例えば、簡単なドリブルのスラローム、対面パスなどクローズドスキルを反復することで身体のバランスを整えていくことが効果的です。ここで大切なのは速く行うことではなく、正確に丁寧に取り組むことです。スムーズに出来るようになってきたら、少しずつスピードを上げて取り組んでみると良いでしょう。また、サッカーから離れてラダーを使ったステップワークや他の競技に触れるなどして身体操作を整えていくことも必要です。この時期の過ごし方でその後のプレー面での成長が大きくなりますから、焦らずに取り組んでみてください。

心の変化にはどう向き合う?

 

成長期の子ども達は身体の成長だけではなく、思春期を迎え、心の変化が見られる時期でもあります。近くにいる仲間や社会から影響を受けながら、「自分が何者であるのか?」といった“自我同一性”を確立させていくことになります。周囲からどのように見られているかを意識したり、他人と比べて安心したり落ち込んだり……様々な葛藤を抱える時期です。

特にサッカーに取り組む子ども達に限って見ると、思春期は次のような問題に直面していることが多いように感じます。

  1. 自分の理想のプレーが出来ない
    →出来ないことに気が行き過ぎてしまい、自分の良さに対しても自信が持てなくなってしまう。
  2. 理想の自分と現在地とのギャップ
    →現実を受け入れることが出来ず、理想に向かって何をすれば良いのかもわからない。
  3. 友人との関係
    →人との違いを恐れて仲間と同じであるかが気になり、同じことをすることで安心を得ようとする。

上記の他にも、思春期特有の悩みを抱えた子ども達に対しては、どんな声を掛けてあげたら良いのか保護者の皆さんももどかしい気持ちになるかもしれません。ただ、先にも述べたように、思春期の子ども達は自分がどのように見られているかを気にするところがあります。ですから、思い通りにプレーが出来ない様子であっても、「もっと頑張りなさい!」という厳しい言葉を投げかけるより、「あなたの○○は誰にも負けてないと思うけどなぁ……」と、それとなくその子の良さを伝えてあげる方が良いでしょう。子ども達は親の言うことを無意識のうちに自分事として受け入れるところがありますから、一番近くにいる保護者が子どもの良さを認めて信じてあげることが大切なのです。

子ども達は、家庭の外に出たときには気を張って頑張っています。厳しい現実に向き合うこともあるでしょうし、時には厳しい言葉を掛けられることもあるかもしれません。ですから、家庭では子ども達が自分らしくいられるように、否定することよりも承認してあげることが大切だと思うのです。

身体や心の変化も、順調な成長過程の一つ

「小学校の頃はかわいかったのに……」なんて話をよく保護者の方から冗談で聞くことがあります。身体の変化で今まで出来ていたことが上手く出来なくなったり、会話が減ってきて何を考えているのかわからなくなったりすることがあるかもしれません。しかし、それは順調な成長過程だと思って上手に付き合ってあげることが大切です。

時には自分勝手な考え方や意見を口にすることがあるかもしれません。そんな時は、問題にどう立ち向かえば良いのかを示してあげてください。どのような態度で物事に取り組めば良いのか、どのようにすれば自分自身が表現出来るようになるのか、すぐには出来なくても取り組む姿勢を育てることが後の成長に繋がっていくはずです。この時期を通して、自分自身と向き合って問題を自ら乗り越えられる力を養っていけると良いですね。

とは言え、自分がどうだったか……。しっかりとした取り組みをしていました!と胸を張って言えるものではなかったと思います(笑)。
皆さんの思春期はいかがでしたか?

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー