【サッカー上達のために「正しい姿勢」を身につける】「セロトニン」をつくりだそう
何かと気になる子どもの姿勢。そもそも姿勢の悪さはどこからきているのでしょうか? 子どもの身体の問題を研究し続けている日本体育大学・野井真吾先生によると、姿勢が悪くなっている原因は、生活習慣にあるとか!? だからこそ、今日からできることを取り入れて!
長年続く子どもの姿勢の悪さその要因とは?
現代の子どもたちの姿勢の悪さは心配です。けれど、今に始まったことではありません。5年に一度、教育現場の先生に聞く「子どものからだ調査(実感調査)」では、「『座っている時、背もたれに寄りかかったり、ほおづえをついたりしてぐにゃぐにゃになる子』が最近増えていると実感」が1978年にワースト1位(小学校)となり、その後もずっとワースト10以内に入っているのです。
姿勢が悪くなっている原因の一つには、背筋力の低下が考えられます。便利で快適な生活になりすぎて、日常に関わる筋力を使う機会が少なくなっているからです。
姿勢はやる気や集中力にも関係しています。なぜなら、やりたくないことをしている時、姿勢は崩れますよね。やる気や集中力は大脳の前頭葉が司っています。近年、前頭葉の発達が未熟な子が増えていると言われていることもあり、それも姿勢が悪い子が増えている理由だといえるでしょう。
セロトニン不足が姿勢の悪さや睡眠に影響
そして、一番の要因と考えられるのが「セロトニン」不足です。セロトニンとは、脳内に分泌される神経伝達物質のこと。顔やお腹、背中、足などの身体を支える筋肉「抗重力筋」に緊張を与え続ける作用があり、良い姿勢をつくるには、この抗重力筋が重要になるのです。また、セロトニンはイライラを減らしたり、緊張を抑える働きもあります。
では、なぜ子どもたちはセロトニンが不足しているのでしょうか。セロトニンは、太陽の光を浴び、身体を動かすことで増えていくものです。けれど、今の子たちは、昔に比べて遊びが変わり、外遊びの機会が減っていますよね。また、先にも述べたように社会が便利になりすぎて、身体を動かすことが少なくなっているからです。イライラする子、キレやすい子が増えているのも、セロトニンが足りてないことが要因の一つといえるでしょう。
セロトニンは、睡眠にも影響を与えます。というのも、セロトニンは夜になると「メラトニン」という、体温を下げ眠りのもととなるホルモンに変わるからです。セロトニンが不足していると、よく眠れなかったり、朝起きられないなど、生活リズムの乱れにもつながっていくのです。なお、メラトニンは、暗さを感じる中で作り出されます。そのため、夜遅くまでゲームをしたり、スマホをいじって明るい光を受けていると、メラトニンの分泌が抑えられ、寝つきが悪くなってしまうのです。
正しい姿勢を身につければパフォーマンスアップに!
日常生活の中で正しい姿勢でいれば、内臓の働きや血液の流れがよくなり、身体の働きを正常に保つことができます。何より、正しい姿勢は、身体のどこかに負担がかかったり、無理をするような体勢ではないので、サッカーをするうえでケガの予防になり、パフォーマンスの向上にもつながるのです。ただし、スポーツにおける良い姿勢は、日常生活の良い姿勢とは異なり、種目によっても違います。サッカーの場合、重心がやや前で、すぐに反応できる姿勢が良い姿勢といえるでしょう。この姿勢をつくるためにも、日常生活の中で正しい姿勢を意識することが大事なのです。
「姿勢」という言葉は、「姿の勢い」と書きますよね。元気がないと勢いはでないことから、姿勢と元気は密接に関係しています。時々、お子さんがどういう姿勢でいるかを確認するといいでしょう。そうすれば、元気なのか、疲れているのかもわかるはずです。
日中は太陽の光をたくさん浴び、身体を動かし、夜は暗いところで過ごせば、自然とセロトニンやメラトニンが増え、生活リズムが整っていきます。そうすれば姿勢が良くなり、イライラも減り、サッカーの上達につながるものです。正しい姿勢を身につけるために、まずは生活習慣を見直してみることが大切です。
良い姿勢のもと「セロトニン」を増やすには?
毎日の生活の中でできる「セロトニン」の分泌を増やす秘訣をご紹介。できることから始めよう!
1.太陽の光を浴びる
セロトニンの分泌を増やすには、日頃から太陽の光を浴びること。とくに朝は、セロトニンが少ないので、なるべく早く起きて朝日を浴びることを習慣にしましょう。朝ごはんを食べることで、少しセロトニンが分泌されるので、朝食も忘れずに。また、学校で窓側の席になったら、1日に4~5時間も太陽の光を感じながら過ごすことができるので、セロトニンが増える可能性も!
2.深呼吸をする
深呼吸をすると、セロトニンが増えることがわかっています。日常生活の中で、時々、深呼吸をするといいでしょう。また、セロトニンは緊張をほぐす作用があります。試合前など緊張した時に深呼吸すれば、リラックスでき、いつもと同じ力を発揮できるはずです。なお、姿勢が悪くなったと思った時は、右記の方法で深呼吸すれば、自然と正しい姿勢に。
3.身体を動かす
イライラしたことがあった時、散歩をしたら気分が落ちついたという経験はありませんか? それは、歩く(動く)ことで、セロトニンが分泌されたからです。また、ラット(実験動物の一種)の実験ではあるものの、歩くことでセロトニンが増加したという結果も。セロトニンを分泌するには、公園で遊ぶの はもちろん、30分程歩くだけでも効果的です。
4.寝る前にゲームやスマホの光を浴びない
いくら昼間に太陽の光を浴びてセロトニンを溜め込んでも、暗さを感じないとメラトニンはつくり出されず、眠りに影響します。そのため、夜遅くまでテレビを見たり、ゲームやスマホをいじって明るい光を浴びるのは避けること。寝る2時間前までには、やめるようにしましょう。
5.カーテンを開けて寝る
いち早く太陽の光を浴びるために、カーテンを開けて寝るのもオススメです。まぶたは光を通すことができるので、目を閉じて寝ていても、朝日が差し込んできたら感じることができるのです。とくに朝起きるのが苦手な子は、取り入れてみて。
サッカージュニアは「セロトニン」が十分出ている?
サッカーを頑張っている子どもたちは、太陽の光を浴びながら身体を動かしているので、セロトニンが十分分泌されているのでは?と思う親御さんもいるのかもしれません。確かに、運動をしていない子に比べると、セロトニンは分泌されています。けれど、サッカー以外の時間、子どもたちは太陽の光を浴びたり、運動をしていますか?
また、昔の子は、外で鬼ごっこなどの伝承遊びをする中で、自分たちでルールを決め、ワクワク・ドキドキしていたものです。サッカーをしている子たちも、試合でワクワク・ドキドキはするでしょう。けれど、ルールがあるゆえに、気持ちが冷めてしまうことが多々ありますよね。外遊びをしていた昔の子と、週に数回サッカーをするだけの子では、明らかにセロトニンの出方が違います。従ってサッカーだけをやっていれば十分とはいえないのです。
写真/岩波純一、編集部他
参考文献/野井真吾著『大人になってこまらない マンガで身につく正しい姿勢で元気な体』(金の星社)、『からだの元気大作戦!』(芽ばえ社)