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指導者の言霊「鈴木良介 ソルティーロファミリアサッカースクール コーチディレクター」

指導者の言霊「鈴木良介 ソルティーロファミリアサッカースクール コーチディレクター」

“夢を明確に描いて強く思う”本田圭佑から教えられた姿勢

ソルティーロファミリアサッカースクールは本田圭佑がプロデュースしているスクールです。僕は彼と出会って、“夢を明確に描き、強く思うこと”の大切さを知りました。最初は無理かもしれないと思うような夢でも、もしかしたら実現できるかもしれないと思わせるパワーが彼にはあるんです。だから、僕もその大切さを伝えていきたいと考えています。例えば子どもたちに「世界に出てサッカーをやりたい人はいるか?」と聞くと、多くの子どもが恥ずかしそうに手を挙げる。でも、それではダメなんです。絶対になるんだという強い気持ちを持つことが大事なんです。恥ずかしがることはない。それをまずは伝えたいですね。

その気持ちを「思い描き 走り続ける」という言葉に表しました。自分の夢や目標を持っている人はたくさんいると思いますが、それをいかに強く思い、明確に描き、夢に向かって努力し続けられるか。子どもであれば、周囲に何を言われようと胸を張って、夢を口にすることができるか。この言葉はありきたりで、誰にでもすぐ理解できる言葉でしょうが、だからこそ難しいのではないかと思います。指導者は子どもの夢をサポートするイメージが強いかもしれませんが、それだけではないと考えます。夢を与えるだけではなく、それをどのように叶えるのかを、身を持って伝えていかなければならない。僕自身にも夢があるから、君たちも一緒に夢を持って実現させようと。その考え方がサッカーを通じて、今後の生き方においてもブレない軸にしてほしいと思うのです。

トップレベルのトレーニングでもまず子どもたちとの会話が指導のベース

僕が子どもたちを指導する際に、一番大切にしていることは、コーチも含めて楽しくサッカーをするということ。スクールでは、子どもたちが常に自己主張できるような空気感を作ることを第一にしています。コーチが上から抑えつけるような雰囲気では、彼らの良さは引き出せません。子どもでも疲れている日や怒られた日もあり、さまざまな感情を抱いています。だから、まずは彼らの気持ちになり、会話の中からその変化に気付くようにする。子どもたちなりの考えを吸い上げ、その日のトレーニングに落とし込んでいく方が、より堅い信頼関係が築けるはずです。

トレーニングでは本田が世界で体感し、必要だと感じたことを練習に反映させています。例えば、以前に本田が日本代表の香川真司選手のステップや、長友佑都選手の体幹、アジリティ(俊敏性)のすごさについて語っていたので、それをトレーニングに取り入れています。他にも、小学校低学年から戦術理解についても教えてほしいとのことだったので、試合をして何で点を取られたのかを子ども同士で考えさせ、話し合わせ、そこから改善して再度試合をさせました。それは、子どもたち自身が常に考える力を養ってもらいたいという考えからです。本田は世界で体感したことをスクールにフィードバックしてくれるので、得るところは多いと感じています。

また、子どもたちには勝敗に関わらず、試合後に握手を交わし、「良い試合だったね」と互いを称える気持ちを持ってもらいたい。勝った選手が相手を見下したり、負けた選手が負け惜しみを言うのは決して格好のいいことではありません。そうした姿勢を身につけることで、仲間や相手の痛みも分かるようになり、負けて悔しくても「ありがとう」と言える選手になるのです。

そして保護者には過度に関わりすぎず、子どもにとっての逃げ場であってほしいと思います。子どもが点を取って帰ってきたら、「すごかったね」「良かったね」と言うくらいの環境でいい。親にも指導者にも挟まれ、子どもたちはプレッシャーの中でサッカーをやっているな、と感じてしまうときがあります。だから指導は我々に任せて、よい食事や睡眠を取らせてあげるなど、当たり前のことをやってもらい、常に子どもの良き理解者でいてもらえたらと思います。

※この記事は2014年12月8日に掲載したものです。