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指導者の言霊「福井和哉 FC VIDA レディース総監督」

指導者の言霊「福井和哉 FC VIDA レディース総監督」

責任と思いやりがあって自主的に判断できる人間に

もともとは男子を指導していましたが、2000年に村田女子高等学校の指導を手伝うようになってから、今日まで女子サッカーを指導しています。男子もそうですが、女子も、テクニックはあるが、サッカーはうまくない子どもが多いように感じています。ボールをどこに置けば、どう変わるのか。駆け引きや判断力といった要素が養われていないのです。困ったときに選手たちがベンチを見てしまう。そんな光景を見たことはないでしょうか?指導する上で私は、自分たちで考え動けるような選手になってほしいと考えています。実はこれが一番難しいのですが(笑)。 私は中高校生を教えていますが、指導者として、こういうところを目指していると話した上で、最初は練習メニューを行っていきますが、ある程度したら自分たちでやらせる時期を作ります。最初のうちは、だいたい、次は何をやればいいかと聞いてきますが、自分たちで考えられるようになれば、さらに成長するのです。

指導する上では、やるべきことがしっかりできる子どもに育てたい。私は「責任と思いやり」のある人間になりなさいと伝えています。例えば、選手がある位置にボールを蹴りました。そのとき、なぜ、そこに蹴ったのかを聞いてあげてほしいのです。どういう理由で、そこにボールを蹴ったのか。その子が自分で考え、それを語ることで責任感が出てきます。また、思いやり。これはサッカーにおけるサポートやカバーにも当たります。サッカーは互いに助け合うチームスポーツなので、それが惜しみなくできるような選手になってほしい。ゴールを出したり、ボールを片付けたり、これもチームに対する責任や思いやりですからね。すべては動機。どうしてそうしたいのか。ボールを奪われたくないからドリブルがあったり、ポゼッションがあるのです。子どもたちがサッカーをすると、ボールを奪うために団子状態になりますが、あれはまさに究極の動機じゃないでしょうか。みんなボールに触りたいから奪いに行く。ボールを奪われたくないから取られないようにする。その気持ちを大切にしてあげたいですね。

止める、蹴るといった基本は大事ですが、それもただやらせるのではなく、なぜ、その技術が必要なのかを理解させるだけで成長は違ってきます。また、楽しくサッカーができるように、達成感があって、自分で判断できるようなコーチングをしてほしいと、自分のチームのコーチ陣には話しています。

子どもはサッカーを楽しんでいるか サッカーは個人競技ではなく集団競技

子どもたちにも小さな社会があって、その中でいろいろ考え、葛藤しています。止める、蹴るという行為だけでも筋力には負担がかかっていますし、練習では必要十分な運動もさせています。保護者の方たちには、子どもが自主的にやりたいと言うのであれば別ですが、必要以上に家に帰ってからや他の日まで練習を強要することはないと思います。また、最近感じるのは、親が無理矢理やらせているケースです。いくら立派な選手に育てたいからといって、過度な練習や日程を組む必要はないのではないでしょうか。また、サッカーは個人競技ではなく、チームスポーツ。みんなでプレーすることで、いろいろな化学反応が起き、子どもたちは成長していきます。育成年代では、今の結果ではなく、未来を見据えた指導も必要。目先の結果にとらわれることなく、また自分の子どもだけを見るのではなく、チーム全体を見てもらえればと思います。

私は「いつでも、どこでも、誰とでもできる選手」を育てたいと考えています。自分のチームに誇りを持ち、本気で楽しんでやっていれば、どのカテゴリーであろうと、どのレベルであろうと、それは真剣勝負です。なでしこジャパンがW杯で優勝して、一躍、注目度は高まりましたが、女子サッカーの裾野はまだまだ広がっていません。大人になってから女性がサッカーを続ける環境も整っているとはいえません。近年、O-30のチームも立ち上げたのですが、女性にとってもサッカーが生涯スポーツになればと考えています。

取材/原田大輔(SCエディトリアル)

※この記事は2015年1月12日に掲載したものです。

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