指導者の言霊「松原良香 FELICE スポーツクラブ代表」
日本のサッカーのためにも、世界で通用する人材を育成したい
サッカーの楽しさを伝え、育て、日本のサッカーを強くすること――。それが、我々世代の使命だと思っています。そのためには、ジュニアの時期が重要だと考え、私は現役を引退してすぐにFELICE サッカースクールを立ち上げました。その後、FELICE スポーツクラブを設立し、今は、浦安、新浦安、木更津、流山(いずれも千葉県)と、赤坂(東京)に開校し、私も現場で指導をしています。
私自身、育成年代から日本代表に選んでいただいたのですが、当時、日本は世界では全く勝つことができませんでした。18歳の時、西野朗さん(前日本代表監督)たちに背中を押してもらい、一人でウルグアイに修行に行くことを決めたんです。そこで語学を覚え、いろいろな仲間にも出会いましたし、ウルグアイで経験したことで、アトランタオリンピック日本代表にも選ばれたと思っています。だからこそ、子どもたちには世界で通用する人になってほしいですし、そういう人材を育成することが大事だと考えています。
現役時代は国内・海外の12チームでプレーし、それぞれのチームで私自身の可能性を広げてくれたと思っています。チャンスはどこにあるかわからないし、やってみないとわからない。だから、子どもたちにも好奇心、野心を持って、どんどんチャレンジして可能性を広げてほしいですね。また、我々指導者が子どもたちに本当のサッカーの意味を教えていくことも大切だと思うのです。例えば、仲間がいるから思い切ってプレーできたり、チームが勝てるということ、足りない部分を伸ばすだけでなく、自分のいいところを伸ばして武器にすることが大事なんだと。そのためにも、指導者はみんな一緒ではなく、子どもたち一人ひとりの個性を細かくみながら指導することが大切だと思います。これは世界のどこへ行っても同じです。
「サッカーと社会は隣り合わせ」と理解してサポートを
サッカーが盛んだったり、そうでなかったりなど、各地域にはそれぞれカラーがあるのではないでしょうか。現に私のスクールも、同じ千葉でも木更津と浦安では異なり、子どもたちのレベルも違います。ですので、指導者は地域性を見極めて、その地域に合ったレベルで指導することが大切です。ただ、どんなチームにおいても共通して言えるのは、指導者が笑顔でいることが大事だということ。とはいえ、子どもたちと友達のような関係になる必要はなく、レールを敷いてあげたり、時に道筋を正してあげる、そして少しでもサッカーを上手くするのが指導者の役割だと思います。
サッカーが上手くなるには「技術」「戦術」「フィジカル」「メンタル」の4つの要素が必要になってきます。指導者はどうしても技術ばかりを教えがちですが、ジュニア時代は楽しませることをメインに、これらをバランスよく、創意工夫しながら指導することで、人間力の育成にもつながっていくと思います。 子どもたちのサッカー上達には、指導者以上に親の在り方が大事になってきます。なぜなら、指導者が子どもたちと関わるのは一週間のうち数回、わずか数時間、親との時間が大半だからです。指導者の多くは、サッカーを教える中で子どもたちを自立させようと取り組んでいるので、親御さんはチームや指導に関与しすぎず、一歩引いて見守ってほしいですね。
サッカーと社会は隣り合わせです。だからこそ、社会で生き抜いていくためにも、ジュニア時代に『サッカーと勉強を両立する』ことが大事。そのことを親御さんが理解して、子どもたちをサポートしてほしいのです。
南米の選手をみていると、海外で活躍した選手も、自分が育った国やクラブに戻ってサッカーをやったり、チャリティー活動などをして社会に貢献しています。今、サッカーを頑張っている子どもたちには、もちろん目標をもってプロになってほしいと思いますが、たとえプロにならなくても、将来、人のために尽くせる人間になってほしいと思います。