【「J」に迫る強豪街クラブの中学育成論】FC多摩ジュニアユース・平林清志監督(第2回)

【「J」に迫る強豪街クラブの中学育成論】FC多摩ジュニアユース・平林清志監督(第2回)

「365日、欠かすことのない“全員指導”の意義」

中学年代は成長過程において、非常に繊細で多感な時期と言われています。長年、この世代の成長を見守ってきた指導者たちは、どのように選手にアプローチし、どのような育成論を持って接してきたのでしょうか?

今回お話しを伺ったのは、東京都を代表する街クラブの強豪「FC多摩ジュニアユース」監督の平林清志監督です。昨年度の高校サッカー選手権で準優勝した流通経済大柏高校で注目を集め、鹿島アントラーズに入団したDF関川郁万選手、今年4月の第57回デュッセルドルフ国際ユース大会で、日本高校選抜としてストストライカー賞に選出されたFW宮崎純真選手(山梨学院大学高校卒)など、有望選手を次々と高校サッカー界に輩出してきた中学年代の育成スペシャリストです。今年は関東リーグに名を連ね、街クラブにして、Jリーグクラブのアカデミーに匹敵する強さにまでクラブを育て上げました。前回はクラブ創設の歴史を伺いましたが、今回は、平林監督が考える中学年代の育成のポイントについて紹介していきます。

中学生年代は子どもの気持ちを理解することが大事

FC多摩は1学年で何人ほど受け入れているのでしょうか?

「1学年でGKを入れて40~45人ですね」

チームで120人以上。それだけの人数になると全員を見るのも大変ですね。

「正直な話、選手が何人いても、全員を見られる指導者がいなければいけないと僕は考えています。クラブOBの大学生が手伝ってくれたり、若いコーチが沢山いるのでそれに支えられていますね。ウチの場合、各学年で最低2人以上担当コーチを付け、僕はできるかぎり全学年を見るようにしています。今の中学生は昔と比べると素直な子が多くて分かりやすいですよ。『こいつ、ちょっと顔が曇っているな』とか、『サッカーうまくいってないな』とか。あと学校生活が楽しくなっちゃって、サッカーに熱が入ってないなとかですね。そこはすごくわかりやすい。そういうところがちゃんと把握できていれば、サッカーのトレーニングに集中させる方法はいくらでもありますから。要はいかに、子どもの心情を理解してあげられるか、子どもの気持ちをわかってあげるか、というのが中学生年代の指導では大事なのかと思います」

FC多摩ジュニアユース
平林監督によれば中学年代は表情を見るだけで、各々の現在の心情がわかるという。

平林監督の指導の中で大事にしていることは?

「サッカー全般のスキルを中学3年間で全部教えたいと常に思っています。そのためには当然、無理も承知で厳しいことも言いますよ。選手として預かった以上、40人いるから見られないじゃなくて、責任をもって一人一人全員をしっかり見て、『この子は楽しんでいるか、FC多摩に練習に来て充実してやれてるか』を把握しておくことが一番大事。それができないとチームとしてもよくならないし、選手間の温度差も出てしまう。先ほども言ったように、ウチでは少なくとも学年で二人のトレーナーを付けるようにしているので、そこを把握した状態でトレーニングができているという自負はあります。気持ちが乗っていない状況のままトレーニングをさせることが一番ダメだと思いますから」

なるほど。

「いくら素晴らしい練習メニューがあっても、選手がそれに対応できていなければ意味がありません。その子の性格を理解し、厳しいトレーニングも乗り越えられるように導くことが、我々指導者の役目だと思っています。気分が乗っていないときに厳しいことを言われると、中学生年代では不貞腐れてしまいますよ。腑抜けた状態でサッカーやる者が一人いれば、もっと広がっていくだろうし。その部分は一番重視してはいます。そこを分かった上で指導することができれば……、まちがいなくチーム力は全体的に上がっていくと思います。指導する側が選手個々を把握をできるように環境をつくっていくことが、練習では大事なのかと思ってます」

FC多摩ジュニアユース
FC多摩のコーチ陣はチームOBが中心となって成り立っている。平林監督(左)がかつて指導した選手だけに、各コーチがチームの方向性を深く理解しているという。

「今」ではなく、1年後、さらにその先の未来でどのような選手になるかが重要

各コーチが各選手に感じたことを最終的に平林監督が集約している?

「それもありますが、極端な話、全員を僕が見に行くようにしていますよ。トレーニングができていない子は、見ればすぐ分かります。そんな時は『どうした?』って声をかけてね。水曜日のトレーニングは、1年~3年がバラバラでトレーニングしているので、各担当コーチに任せていますが、土、日とか学年が揃うときは必ず見て話しをするようにしています。子どもたちの顔を見て、話して、ちゃんと受け答えできているかどうか、ちゃんとトレーニングができてるかを把握してね。だから僕と大久保(司)コーチはオフがありません。1年間365日、正月以外は休みなんてないですよ(笑)。それでも僕だけでは目が行き渡らない部分は、コーチに話を聞いて補っていく感じですね」

中学年代はメンタルのケアについては?

「メンタルはすごく重要ですよ。心が折れないようにすることが大事です。1学年に40人もいれば、『どうせ自分はレギュラーじゃない』と、モチベーションが落ちてしまう子が出てきてしまいます。特に中学年代は背が大きい、小さいで有利・不利が如実に出てしまいますから、そういう子たちには『今じゃないんだ』と話をします。技術であれ、身体的なことであれ、足りない要素と向き合い、いかに補っていくのか。今ではなく、1年後、1年半後、さらにその先の未来に選手としてどうなっているかが重要なんです。それに身長は後から伸びてきますからね。1年間で10㎝も伸びる子がいるんですから、腐らずに継続して練習することが一番大事なのかと思います。ウチのトップチームの中3の子で、中1のときにレギュラーじゃなかった選手なんて沢山いますから。我々は選手を信じ、選手自身も自分を信じて練習に励んでほしいですね」

FC多摩ジュニアユース
8人以上いるコーチを統括する大久保司コーチ。彼らコーチ陣が各担当学年を密接に指導することで、平林監督がチーム全体を見渡し、選手個々の状況を把握できる環境が構築されている。

次回は昨年度の高校サッカー選手権で大活躍した関川郁万選手(鹿島アントラーズ)ら、次々と注目選手を輩出するFC多摩JYの指導方針に迫ります。指導者も必見の第3回をお楽しみに!

「J」に迫る強豪街クラブの中学育成論 
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  • 平林清志監督監督(FC多摩ジュニアユース)
    第1回

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●サカママ編集部
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電話 03-6721-5715

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