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PKに強くなるための3つの方法 その3

こんにちは、メンタルトレーナーの清水です。
前回に続き今回は”PKに強くなるための方法”の3回目です。
1回目は「緊張」対策2回目は「自信」を作るために必要な要素をお伝えしてきました。3回目の今回はPKが苦手な人が試合前日にできる、「PKに強くなるための方法」をお伝えします。

人間は誰にでも、現実逃避したくなる時があると思います。僕は高校の入学試験が近づき不安になった時に、「まだまだ先だから試験のことは考えないようにしよう」と入学試験のことを考えないようにしてしまうことがありました。
これは、自信がないことを行うことに対して、プレッシャーや不安を感じる時に、その感情から逃れたいという気持ちが働いて起こります。

嫌なことは考えたくないという心理が現実から目を離す原因に

今回のテーマであるPK戦でも同じことが言えます。私のサポートした小学生のA選手の事例をお話しします。

PKが苦手な彼は、大切な試合に「PKになる前にしっかりと勝ちたい」と意気込みをもって試合へ向かいました。一見、試合への意気込みもあり、気持ちも前向きで試合を迎える準備ができているように見えますが、実はここに落とし穴があります。

実際にその試合はPK戦になり、「どうしよう」という動揺や焦りが出てきたとのこと。その時、彼はPKを3番目に蹴りましたが、外してしまい、その結果試合も負けてしまいました。彼は試合前にPKに対して考えることから逃げてしまい、事前に対策を行わないまま試合を迎えてしまったのです。

試合前に行う気持ちの準備がパフォーマンス低下を防ぐ

こんなふうに人間は起きてほしくないことから目を背けたくなる時があります。しかし、実際に起こり得ることであれば、しっかりと良い結果を出すための準備はしておきたいもの。
このA選手とはメンタルトレーニングで、こんな話をしました。

A選手 「明日は試合だから勝ちたい。今回はPKになる前に勝負をつけたい」

清水 「PKになる前に勝てたらすごく嬉しいと思うんだけど、”試合の中で一番起こって欲しくないこと”ってなに?」

A選手 「うーん…それはやっぱりPKにもつれ込むことかな」

清水 「もしそれが起きたら、どんな気持ちになりそう?」

A選手 「焦ると思う。あとは、プレッシャーが出てくるかな」

清水 「明日はPKになったら焦るし、プレッシャーも感じるということだね。PKになったらそんな気持ちになることがわかったね。もしPKになって焦りやプレッシャーが出てきたらどうしようか?」

A選手 「うーん。狙いを決めて思いっきり蹴る。何も考えられなくなるからそれしかできないかもしれない」

清水 「OK。じゃあ明日はPKになったら焦りとプレッシャーがでてくるはずだから、そうなったら狙いを決めて思いっきりPKを蹴ろう」

このように、彼には試合の中で起こって欲しくない最悪な状況を考えてもらい、その時にどのような状況になるのかを想定してもらいました。

最悪な状況を考える】→【どう感じるか(感情)を予測する】→【その時にどう行動するかを考えて準備する

彼には試合前に、避けて通りたいことから逃げず、しっかりと目を向けてもらいました。
ポイントは、最悪な状況になった時にどんな感情が出てくるかを予測し、その時にどう行動するのか、という準備をしておくこと。
そうすることで実際に最悪な状況になった時に、「やっぱりこんな気持ちになった」というふうに焦りやプレッシャーという感情を想定しておくことができます。

この気持ちの準備によって、起こって欲しくないことが起きても、自分のことを冷静に見ることができ、次にどう行動するかに意識を向けやすくなります。

1回目、2回目のコラムでもお伝えしましたが、試合中にコントロールできるものは、”自分の行動”と”自分の思考”だけです。 いくら落ち着こうとしても、感情をコントロールすることはできません。

彼は翌日の試合でもPKになったようです。
蹴る時には焦りやプレッシャーを感じたようですが、以前と違い思い切って蹴ることができ、決めることができたとのことでした。

つい、「良いイメージだけを持って試合に臨む」ほうが良いのではないかと考えてしまいがちですが、実際に起こり得る最悪な状況も想定しておくことがパフォーマンスを発揮するためには大切です。
そうすることで、現実に起こり得る全ての状況に目を向けることができ、その時の対処法を準備しておくことができます。

試合前日や試合前にできるメンタル面のウォーミングアップとしてこの”最悪な状況の想定”をしてみてください。実際に試合で最悪な状況になってしまった時でも、焦りやプレッシャーをどうにかコントロールしようとせず、やるべき行動に意識を向けやすくなります。このような前日にできるメンタルの準備をすることで、想定したくないことが起こった時にも、パフォーマンスの低下を防ぐことができるのです。