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Jリーガーたちの原点 vol.03「田中 順也(柏レイソル)」

Jリーガーたちの原点「田中 順也(柏レイソル)」

自分で早起きして朝練を実行。限られた環境の中で“考えた”練習

思いは強ければかなうーー田中順也は子どものころから抱いていた夢を現実にし、今、太陽を思わせる柏レイソルのユニフォームに身を纏い、スタジアムで躍動している。「気づいたときにはもうサッカーをやっていました。親の影響でもなれば、姉がいるんですけど兄弟の影響でもない。物心がついたときには、自然とボールを蹴っていました」

幼稚園のときには、すでにボールを蹴っていた記憶があるという。「友だちともやりましたし、一人でも壁に向かってボールを蹴っていましたね。小学生になってからも、他のことには興味を示さなかった。ホント、サッカーだけでしたね」

このとき、彼の心に夢が描かれていく。「他のスポーツもやったんです。運動神経は良かったので、どの競技でも比較的楽しむことができました。でも、その中でもやっぱりサッカーが1番魅力的でしたし、とにかく楽しかった。ああ、これで生きていくんだろうなって、そのとき思ったんです」

小学生のときは練習をさぼるどころか、一人で自主的に朝練を行っていたという。「練習はむしろ休みたくなかったですね。朝も早くに起きて、近所の公園でボールを蹴っていました。リフティングにサッカーのすべてが詰まっていると思っていたので、とにかくよく練習しました。地域の誰よりも回数ができるようになりたいとも思っていたし、リフティングをやることで、キックの精度やトラップの精度を磨いていました。朝練では、シュート練習もやっていて、ポストに当てる要領で、何かに目がけて蹴っていたんですけど、僕が住んでいたのは高島平の団地で、公園も建物に囲まれているから、音が反響するんですよね。それで、近所の方に『朝からうるさいぞ』って怒られたりして(笑)。そこから練習は工夫するようになりました」

置かれた環境の中で、何ができるかを自分自身で考える。朝練の監督は自分だった。「音が響くから壁に当てないようにドリブルしたり、サッカーボールよりも小さい野球のボールで練習したり。小さいボールで練習すれば、大きなサッカーボールになったときにうまくミートできる。ポストなど、目標物に当てる練習をすれば、試合のときは少しずらせばゴールに入るし、野球のボールのときはショートバウンドさせて、それを叩く。プロになってから打っているシュートも、だいたいがショートバウンドのボールを叩いているものが多い。シュートは積み重ね。あのときの練習が今も役に立っていますね」

そう語り、はにかむ顔は、今もサッカー少年のように無邪気だ。田中少年が思い描いていたのは、“ストライカー”としてプロのサッカー選手になることだった。だからこそ、ボールコントロールはもちろん、狙った位置に蹴る練習に励んだ。「普通の練習は嫌だったんです」と笑う彼は、子どもながらに“考え”、ストライカーに必要な技術を身につけてきた。

周りが成長する中、身長が伸びずに悩んだ時期に親がかけてくれた言葉

小学生のころにはJリーグも開幕していたが、ジュニア世代の育成はまだ組織化されておらず、当時の指導者たちは手探りな部分もあった。向上心の強い田中に聞いてみると、子どものうちに身につけておきたかったこともあるという。「ボールを持ったときのルックアップやポジショニング、相手との距離感のつかみ方は子どものころにあまり教わらなかった。だから、そこは今も磨かないとって思っているんです。子どものころからシュートに特化した練習ばかりしてきたから、どこか感覚のままプレーしているところもある。今、柏レイソルの育成組織の指導を見たり、聞いたりすると、蹴るだけでなく、止めることもすごく教わっている。自分で考えて、うまくなることもすごく大事なことだけど、教えてもらうことで上達することもある。身体が大きくなってからではできないこともあるので、ジュニア年代のうちに習慣にしていってほしいですね」

小学校時代は目立つ存在だった田中だが、苦しんだ時期もあった。それを挫折ではないと語るが、当時はもどかしかったことだろう。「小学5、6年生で身長があまり伸びなくなって、気がついたら周りの仲間がどんどん成長していった。子どものころって技術がなくても、足が速い、背が高いという理由で試合に出られたりするじゃないですか。友だちのほうが、身体が大きかったり、足が速くなっていて、成長が止まってしまった自分は思うようなプレーができなくなった。小学校を卒業するまでは何とかやれていましたけど、中学生になって、三菱養和巣鴨SC ジュニアユースに入ったときには、全然だめでしたね。身長も伸びないままで、自信もなくて、試合にも出られない時期が続きました」

多感な中学生になり、田中は少なからず焦りを感じていた。そうした田中を安堵させてくれたのが、父親の言葉だった。「父親が『オレは高校生になってからまた伸び始めたから、きっと伸びるよ』って言ってくれて、その言葉を信じるしかないって思っていました」

事実、高校生になってから田中の身長は伸びた。今の身長は180cm。Jリーグのピッチに立っても、技術だけでなく、体格でも見劣りすることはない。悩む田中の心を支えてくれた両親には、いつも「やめれば」と言われていたという。「やめろって言うんですよ。横暴ですよね?」と言えるのは、それだけ絆が強い証拠だ。両親は、田中が出場する試合を見にスタジアムに足を運んでいるという。本人はきっと違うと言うだろうが、親子だから照れることもある。

「怒られると、いつも『サッカーやめる?』って言われて、サッカーやめたくないから、『ごめんなさい』って言っていました。スパイクとかボールをすぐにダメにしてしまうので、迷惑かけてましたね。今と違ってスパイクもすぐに穴が空くし、ボールも表面の皮が剥がれちゃう。家には、皮が全部剥がれたボールが5、6個ありましたね。母親には『また壊したの?』って言われるんですけど、それでも、新しいものを買ってくれました」

「やめる?」と聞かれるのは、本当にそれが好きなのかを問われていたのではないだろうか。「母親は思ったことをストレートに言う人なんです。でも、いくら周りにやめろと言われても、本当に好きなことならば、簡単には諦めない。そう言われて、やめてしまう子どももいるかもしれないので、性格を知る必要はあると思いますが、親が無理矢理やらせるよりも、子どもの自主性を尊重するほうがいい。子どもは嫌いなことは続かない。でも、好きなことならば、例え、少し辛いことや嫌なことがあっても続けると思います」

田中は高校を卒業してすぐにプロになれたわけではない。大学に進学するが、それは一般推薦だった。それでも彼は夢を諦めめず、大学4年生だった2009年に特別指定選手として柏レイソルの練習に参加すると、そこでチャンスをつかんだ。

思いは強ければ叶うーーそれを彼は身をもって示してくれている。

取材・文/原田大輔(SCエディトリアル)写真/藤井隆弘

2012年9月発行の3号掲載

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