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中学生年代の今を考える【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

中学生年代の今を考える【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは。大槻です。
梅雨が明けて、まさに夏本番という暑さがやってきました。異常なまでの暑さですから、サッカーをする頻度や時間帯も考えていかなければならない時期に来ているような気がしています。7月、8月の公式戦を行わないなどの動きも出てきていますが、現場レベルではまだまだ暑さへの警戒が足りないところもあるようです。油断せずにこの暑さへの対策を考えてください。

サッカー中の暑さ対策のおすすめ!

水と氷を入れたバケツの中にビブスを入れておいて、ハーフタイムや試合後に服を脱いで着せてあげてください。少しでも身体を冷やしてあげることで子どもたちを守ることができると思います。

さて、酷暑の夏ではありますが、育成年代のサッカークラブは次年度に向けたセレクションがスタートしています。時代の流れもあるのだと思いますが、ここ数年で良くも悪くも、子どもたちを取り巻く環境が変わってきました。今回は『中学生年代の今を考える』と題して、環境の変化に対して私たち大人が子どもたちをどのように導いてあげたら良いのか? を整理してみました。皆さんが子どもだった時代を思い出しながら読んでみてください。

余白を失った育成年代

リーグ戦文化の功罪

育成年代におけるリーグ戦文化は、レベルに応じたリーグ編成により、心と身体の成長と理解力が高まる中学生年代にとって成功と失敗のバランスが良く、成長の場所になっているというポジティブな要素があります。

一方でこのリーグ戦文化の定着は、クラブの格付けのような意味合いを生み出している側面もあるような気がします。上位カテゴリーにいることがクラブの価値の証明であり、また指導者にとっても勝つことだけが優秀な指導者としての価値の証明という構図を作ってしまっているようなところもあるかもしれません(※語弊があるといけないので補足しておくと、勝利を目指すことは当たり前のことですし、それは大前提の話です)。

もちろん上位カテゴリーにいれば、クラブへの加入希望者が増え、会員が増えれば経営的な安定につながるという背景もあるでしょう。子どもたちや保護者の方々にとっても、上位リーグにいること、勝ち負けだけが良い悪いの判断基準になってしまっているのではないか? と感じることもあります。

今は情報が簡単に得られる時代です。良い情報もあれば、首をかしげるような情報もたくさんあります。それらの情報に惑わされないようにクラブを選択できると良いと思います。自分で足を運んで、自分の目で見て、耳で聞いて、心で感じることが大切です。

過密スケジュール

さらにリーグ戦文化の定着によって、とくに中学生年代にとってはスケジュールに余裕がなくなってきました。毎週のように行われるリーグ戦や既存のカップ戦によって緊張感のある試合が続くようになりましたが、試合環境が整備され負けられない公式戦が続くなかでも、学生の本業とも言える〝学業との両立〟が求められます(※高校進学、大学進学を視野に入れた際には、成績をしっかりと確保しておくことが大切です)。

時間の合間を見つけて塾に行ったり、自分で勉強と向き合ったりと両立には日常の努力が必要になってきます(※二期制、三期制の学校があったり、地域によっては試験の時期も違うのでクラブとしても考えることがあります)。ひと昔前はもう少し時間的に余裕があったような気がします。。。

サッカーと学業との両立を目指すうえで、時間の管理がとても大切です。とくに中学生年代の子どもたちは本当に忙しい毎日を過ごしています。小学校の高学年くらいから『お休みの日のこの時間は勉強する!』と決めて勉強に向き合う時間を作ることをおすすめします。

勝ち負けと成長の個人差

ご存じのとおり、中学生年代は成長の個人差が著しい時期です。勝ち負けだけがクラブの価値であるとするならば、成長の早い大柄な子が多ければ試合が優位に働くかもしれません。そうなると必然的に成長の遅い子は試合に出場する機会が少なく、トライ&エラーも少なくなります。もっと抜本的に学年で分けるのではなく、成長の度合いに応じて(生物学的な年齢)グループを作って活動ができれば良いのですが、日本の社会ではまだ難しいでしょう。

また、成長の個人差には生まれ月も影響してきます。統計的に見ると、プロスポーツ選手は4月~6月生まれが多いというデータが出ています。これは幼少期から頭と身体の成長が進んでいることで活躍することが多く、レギュラーとして多くの試合経験を積み、自信につながっているところがあるのでしょう。指導者だけでなく、保護者の皆さまも決して焦らず子どもたちを見守り、才能を見出してあげてほしいと思います。

参考記事:子どもの成長のタイミングや評価のポイント
(『レディネス』学習のために必要な準備状態を意味する心理学用語のことで、何かを学ぶために必要な知識や経験、環境や心構えなどの準備が整った状態)

無理のない環境を

このように時代の変化に伴い、子どもたちを取り巻くサッカー環境は変わってきました。もちろん良い部分もありますが、問題も多く出てきているように感じています。そんななかでも子どもたちを無理なく適切なスピードで成長させてあげるためには、周りの大人が軸を持って導いてあげる必要があります。

次年度に向けたジュニアユース年代のセレクションがスタートしていると思いますが、実際に活動がスタートしていくと、上記のような問題に直面することがあると思います。だからこそ、まずは入口のところでクラブをしっかりとリサーチしてください。その際の基準として、このコラムでもいつもお話ししている『進路選択の三角形』を軸にして考えてみてください。

勉強との両立、成長期を考えた休息時間の確保など、軸をどこに持っていくか? で進路の選択も大きく変わっていきます。身体だけでなく心も不安定になる中学生年代ですから、無理のない環境を作ってあげたいですね。

 

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル

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