症状や原因から紐解く、普段の生活から改善できる熱中症の予防や対策とは
7月に入り、暑さが厳しい季節に突入しました。今年も暑さがさらに厳しくなるとの予報ですが、夏休みには合宿や大会参加で試合数も多くなり、しっかりとした体調管理が必要となってきます。この季節になると嫌でも思い出すのが、私自身が運動中に「熱中症」になったという苦い経験です。
定期テスト明けの寝不足状態で部活に参加したときのことです。炎天下でのランニング中に意識が朦朧となり、手足の自由が効かなくなって、スピードを落とすことなく壁へぶつかり頭部打撲と裂傷という恐い思いをしました。その経験から熱中症への危機感が強くあります。今回のコラムでは、息子が行っている熱中症対策を紹介しながら、普段の生活でできる熱中症予防についてお話ししたいと思います。
熱中症の症状は?
熱中症とは、暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称です。運動や高気温によって体温が急激に上昇し、増加した皮膚血管の血流が一時的な血圧低下を起こすことで、めまいや立ちくらみ、失神などの症状や、重篤になれば命に関わります。
軽症(Ⅰ度)
〈熱けいれん・熱失神〉
汗を大量にかいた際、水分だけを補給した場合に血中の塩分濃度が低下して起こる、手足のつりや筋肉のけいれんのこと。
中等症(Ⅱ度)
〈熱疲労〉
発汗によって失われた体の水分量に対して、摂取量が不足することで脱水状態になり生じる倦怠感や嘔吐、頭痛など。
重症(Ⅲ度)
〈熱射病〉
過度な体温上昇によって脳の機能に異常をきたし、体温の調節ができなくなる。意識障害やショック状態など重篤な状態。
熱中症を未然に防ぐ心掛けと暑さ指数(WBGT)とは
体調の異変に気付いたら、少しでも早く水分を補給し、日陰のある涼しい場所に移動して休息を取るなど、適切な処置を行いましょう。小学生や競技初心者など、自己での体調コントロールが難しい場合は、周囲の大人たちが気を付けておくのが大切だと思います。
暑熱環境や運動により体温が上昇すると、体は熱を放出して体温を下げようと働きます。この体温調整機能の代表的なものが発汗です。しかし湿度が高く汗が蒸発しにくい、風がない気候では調整機能が働きにくくなり、体内に熱がこもってしまいます。それによって熱中症にもかかりやすくなります。
日本スポーツ協会(JSPO)は「熱中症予防運動指針」において、暑さ指数(WBGT)が28℃以上のときは激しい運動を避け、31℃以上になった場合には運動を原則中止するように勧めています。
日本サッカー協会(JFA)の熱中症対策ガイドラインは、これに則り2016年に作成されていますが、近年の気温上昇などの気象環境変化に伴い、今年の5月に改正されていますので参考にしてみてください。WBGTが31℃以上でもやむを得ず試合を行わなくてはならない場合は、熱中症対策ガイドラインに従いサッカー活動を行うことになっています。
運動をする際は水分だけでなくミネラル補給も
水分補給は、熱中症予防においてとても重要です。暑熱環境で激しい運動をすると、大量の発汗により水分のほかにナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルも失われます。ミネラルを失った状態で水だけを摂取すると、体内の塩分濃度が低下して低ナトリウム血症に陥る危険があります。
ナトリウム不足は意識障害や筋肉の収縮、カリウムやマグネシウムが不足すると筋けいれんなどを起こします。運動でエネルギーも消費していますので、ミネラル・糖分を含むスポーツドリンクや、経口補水液で水分補給を行うことが必要となってきます。
喉が渇いたと感じたときには、すでに脱水状態に陥っている可能性があります。夏場は運動時に限らず、こまめに水分補給をする必要があります。水分摂取を行ってから腸へ吸収されるまでに20分程度かかるため、1回量250㎖くらいを15~20分ごとに補給することを心掛けてください。
いつものスポーツに取り入れられる熱中症対策は?
運動中の体温上昇を抑える方法はさまざまで、冷却効果がある送風や冷房、ミストシャワー、冷却タオル、冷却ポンチョ、手掌冷却など、その場に応じて実施してみてください。アイスタオルやスポンジで頭や首を冷やすなど、熱中症予防の効果を高めることができます。
実際に行っていたのは…
・ペットボトルや牛乳パックに水を入れて凍らせたものと、水を個人用のバケツに入れて冷却水を作る→冷却タオル、冷却ポンチョを入れておき、運動後や待機時間に体を冷やしたり。手を入れて手掌冷却を行う。
・水筒に塩分タブレットを数個入れたポーチをつけておく→ピッチ内では水の持ち込みだけなのでタブレットでミネラル補給
熱中症の最も有効な予防方法は、日々の体調管理です。体調不良や生活リズムの乱れが生じたときに、熱中症や怪我の確率が高まります。食事や睡眠、水分補給など普段から規則正しい生活を心掛け、夏場でも楽しく安全にサッカー活動ができるように選手自身、周囲の大人も対策を頑張りましょう。
熱中症に関する予防方法が日本スポーツ協会(JSPO)・日本サッカー協会(JFA)のサイトに記載してありましたので、暑い夏を乗り切る参考にしてみてはいかがでしょうか。