メインコンテンツに移動
『出来ないことに向き合う前に』子ども達の想いとそれをサポートする大人が気を付けたい事とは?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】 - Cloned

『出来ないことに向き合う前に』子ども達の想いとそれをサポートする大人が気を付けたい事とは?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは。大槻です。
12月も残すところあと僅かで1年が終わろうとしていますね。皆さんにとって、どんな1年でしたか?個人的にはクラブを移籍して新天地での活動がスタートしました。初めての土地で慣れないこともありましたが、仲間に助けられて本当に素晴らしい1年を過ごすことが出来ました。

来年も良い1年になるように日常を大切にしていきたいと思います。さて、今回は『出来ないことに向き合う前に』と題して、試合に出て活躍したい!という子ども達の想いとそれをサポートする大人の皆さまに考えて欲しいポイントを整理していきます。

自分を表現する前にやるべきこと

試合に出られない時間が続くとどんな選手も頭を悩ませるものです。『自分の良いところを出したい!』と気合が入ってしまいますね…。しかし、そういった時には試合の状況を無視して、自分のやりたいプレーを選択しがちです。試合の状況を考えずに選択したプレーは、ミスに繋がりやすいものです。そしてミスが続いていくと焦りに繋がり、同じように状況を無視したプレーを繰り返してしまいます。

サッカーはチームで得点を競い合うスポーツですから、独りよがりなプレーをしていても上手く機能はしません。ですから、自分を表現する前にまずは『チームにとって必要なことは何か?』を考えることからスタートするべきでしょう。

ドリブルが得意だからといって、ドリブルばかりではいけません。チームが劣勢の状況であれば守ることも必要ですし、仲間を助けるプレー、声掛けも必要なこともあるでしょう。

選手としての武器や特徴を意識することも大切ですが、それを発揮するためには全てチームが中心にあることを忘れてはいけません。『チームの勝利のためにプレーするんだ!』という気持ちがベースにあるべきですし、そのために自分の特徴や良さを活かしていくこと、活かそうとすることが大切です。

 

日常の中にある成長のチャンス

何事も同じことが言えるかもしれませんが、思い通りにいかないこと、上手くいかないことがあった時に、その理由を自分の外側に求めてしまうことがあると思います。

もちろん本当に原因が外側にあることもありますが、まずは〝自分自身に出来ることはなかったか?〟という視点を持つことはとても大切なことです。それはサッカーの現場でも同様です。試合に出られなかったり、思うようなプレーが出来ないことが続くと、その理由を外側に求めてしまうようなことがあると思います。環境が悪い、コーチが悪い、仲間が悪いなど…子ども達がそのような考えを持っていたら、大人は少し冷静になって『自分に出来ることはなかったの?』と聞いてみてください。他責にするのは簡単ですから、自分自身に矢印を向けて考えられるように働き掛けてみてください。

そういった思考は、サッカーの時だけではありません。日常の中でも沢山あると思います。『やることが多いから勉強が出来ない....』とか『〇〇が悪いから、〇〇出来ない。』など、日常生活の中にも他責にしてしまう場面があると思います。私はその全てが成長のチャンスなのだと思います。内面的な成長は取り組む姿勢を育ててくれますから、保護者の皆さまとの日常の中でのコミュニケーションを見直してみることも大切です。

とは言え、まだまだ未熟な子ども達です。〝出来ないからダメ!〟ということではなく、少しずつ自分自身と向き合えるように働き掛けていきましょう。

 

気を付けたい、子ども達への働き掛け

サッカーに限った話ではないかもしれませんが、失敗や苦手なこと、課題や反省点についてはすぐに目がいくものです。しかし、良かったことや長所については、振り返ることが少ないのではないでしょうか。もちろん失敗や苦手なことに向き合うことは大切なことですが、そこに引っ張られ過ぎてしまうと、出来ていることや得意なことも忘れてしまいがちです。

これは大人の働き掛けが特に重要です。

例えば、試合の中で沢山の良いプレーがあったとします。しかし、失敗した場面や出来ていないところばかりを取り出して指摘していると子ども達の意識はそっちに引っ張られてしまいます。ですから、まずは良かったところや出来たことをしっかりと認めてあげましょう。そしてその上で『もっと良くなるためには…』といった具合に話を進めていくと良いと思います。子ども達にとって認めてもらっているという安心感は、チャレンジする気持ちと姿勢を育てていきます。

大人の当たり前は子どもの当たり前ではありません。大人の考えを押し付け過ぎずに子ども達を見守って欲しいと思います。

 

まとめ

『試合に出たい!』
『もっと上手くなりたい!』
『認めてもらいたい!』
どんな子ども達もそういった気持ち、感情を持っていると思います。しかし、自分を表現することばかりに注力し過ぎてしまい、独りよがりになってしまうこともあると思います。そんな時は、どんな振る舞いをするべきなのか?を伝えてあげてください。もちろんすぐに出来る訳ではないと思いますが、そこに向き合うことは出来るはずです。

技術を磨き、戦術を理解することは大切なことです。しかし、それを支える精神力や取り組む姿勢を育てることはそれ以上に大切なことだと思います。そしてそれはサッカーだけで養われる訳ではありません。日常の些細な会話の中、学校での過ごし方、お友達との付き合い方など成長のチャンスは日常に溢れているということです。

特に育成年代の子ども達は、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的に捉えていくことが必要です。

余談

余談ですが以前、担当していたジュニアチームで、雨が振った日に室内で子ども達に、少し難しい算数のテストを出題した時の出来事です。『コーチ、終わりました!』と一番に持ってきた子がいました。採点するとしっかり満点だったのです。

彼はサッカーの実力はあるものの、周囲に対して一歩引いていた様子で本来の自分の力を発揮しているとは言えない子だったのです。周囲から『すげー!』と感嘆の声が上がり、自然と拍手が起こったのです。その後、彼は今までの姿が嘘だったかのように積極的なプレーを見せるようになりました。グラウンドで『積極的にプレーしよう!』と声を掛けるだけでなく、多角的な働き掛けが子ども達の成長を促すこともあるという良い例かもしれません。

アンケート

大槻さんに聞いてみたい事がありましたら、以下のアンケートからご応募ください。今回のコラムについての感想もお待ちしております。
以下のアンケートは回答したい質問だけでもご応募が可能です。

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル