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運動することで引き起こされる食物アレルギーって? 防ぐために大切なことは?

みなさん、こんにちは。スポーツナースの山村です。今回は、前回取り上げた健康チェックシートなどでもでよく聞かれるアレルギーについての話になります。
ここ数年はコロナワクチンの接種もあり、アナフィラキシーという単語は多くの方が耳にされたかと思いますが、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」という言葉を聞いたことはありますか? スポーツをするお子さんを持つ親御さんには、特に知っておいてほしいことになります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは?

 
実際に起こった事例が新聞に取り上げられたことも。みなさんはご存知でしたか?(写真は2019年5月13日の朝日新聞)

「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」は、特定の食べ物を食べてから数時間以内に運動をすると症状が現れるアレルギーのことです。特定の食べ物を食べただけ、または、運動をしただけでは症状は起きず、特定の食べ物を食べて運動をすることで症状が引き起こされます。

原因となる食べ物ですが、小麦が大多数(60%)とされ、甲殻類や果物でも発症の報告があります。普通の食物アレルギーであれば、多くは食べて30分以内に症状が出ますが、この食物依存性運動誘発アナフィラキシーは食後2時間以内に起こることが多いです。また、引き起こされる運動の強さについては、サッカーのようなハードなスポーツをしていて起きることもあれば、散歩のような軽い運動で起きることもあり、人により様々であると言われています。

症状は最初に蕁麻疹や痒みが現れ、そのまま運動を続けると、あっという間に呼吸困難やショックに陥る可能性があります。これはアレルギーの原因となる物質の消化管からの吸収が運動によって増強されることが原因とされていて、進行が早く重症化する傾向にあります。

違和感があった時に伝えられる環境を作っておくことが大切

 

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの初発は予測することができません。つまり、誰にでも起こりうるリスクがあります。また、好発年齢は10代、男子に多くみられる傾向にあり、サッカーに限らず、体育の授業など学校生活でもリスクがあります。実際の時間割の組み方は各学校に委ねられているものの、万が一の事態を防ぐために、教員への研修を定期的に行ったり、過去にこのアレルギーを起こしたことがある生徒のクラスは、給食後すぐの時間の体育は避けるように指導されているところもあるようです。

それでは、子どもたちのサッカーの場面ではどうでしょうか? 食事をして2時間以内は練習しちゃいけない、試合前の2時間は食べちゃいけない! というのは現実的ではないですよね。このコラムの読者の方なら実体験があるかと思いますが、グラウンドの事情などでお昼の時間のすぐ後に練習が組まることもありますし、1日で数試合をこなす時は試合の合間に食事をしなければいけません。

では、どうすればいいのか? 大切なのはとてもシンプルで、違和感があった時はすぐに伝えられる環境を作っておくことです。初期症状の蕁麻疹が出ればおかしいことに気づくと思いますが、その前段階の体が痒いくらいでは中々伝えにくいかもしれません。なので、このアレルギーの症状に限らず、普段から少しでも違和感があった時は、指導者や保護者にそのことを伝えるように教えてあげられるといいかと思います。また、違和感があった時は無理をせずに一旦運動をやめて、休憩を取るようにしましょう。

実際にアナフィラキシーと思われる症状が見られた時の対応については、私も所属するSpolinkJAPANのアナフィラキシー対応マニュアルが参考になります。文末にリンクがあるので、こちらを参考にしていただければと思います。
マニュアルにもありますが、休憩を取っても症状の改善がない、もしくは悪化するようであれば危険な状態で、救急要請も必要になってきます。万が一の事態を防ぐためにも、指導者や保護者の方がこういったアレルギーがあることを知っておくだけ、子ども達の小さな違和感にも気が付けるようになるのではないでしょうか。


  • SpolinkJAPAN アナフィラキシー対応マニュアル(順天堂大学呼吸器内科 新田(荒野)直子医師監修)
    https://spolink-japan.com/anaphylaxis-manual/
  • 今回は医学的内容が多く含まれるため、内科医でありスポーツドクターをされている岡田有史先生にご協力いただきました。

WRITER PROFILE

山村麻衣子
山村麻衣子

シングルマザーとして3人の子育てをしながら、救命センターで看護師として働き、スポーツナースとしても活動しています。末っ子は高校サッカーで全国を目指し奮闘中です。万が一が起きている現場にいるからこそ、スポーツの現場でも安全や予防の必要性を感じているので、コラムではメディカル目線のサポート情報などを中心にお届けしていきます。

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