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今さら聞けない!?サッカールール「プッシング」

1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
今回は「プッシング」について。プッシングは試合中でもよく起きる反則ですが、腕や手で押すといっても色々な状況があります。どのような状況だとプッシングになるか、分かりますか?

プッシングクイズ!何問分かる?

最近は高度な内容が増えてきたので、今一度初歩的な「プッシング」の反則を取り上げたいと思います。
次の10問のクイズにチャレンジしてみてください。正しければ○、誤りであれば×で答えてくださいね。

  1. プッシングは手や腕で相手を押す反則なので、身体の他の部位で押す場合はプッシングではない。
  2. ゴールキーパーが手で持っているボールで相手を押すことはプッシングである。
  3. 相手選手を押しても、プレーに影響がなかったり、バランスを崩さなければプッシングではない。
  4. ボールキープしている選手が手を伸ばして相手の身体との距離を測ったり、相手の出方を探ることはプッシングである。
  5. 相手がジャンプする寸前に、相手を親指で押してヘディングをさせなかった。押したのが指で軽い接触なので、プッシングではない。
  6. ボールを追いかけていると、前の相手選手が急にスピードを落とした。その際に身構えた結果、相手の背中に両手で触れてもプッシングではない。
  7. ボールをキープしている選手が自分の身体にもたれてきたので、手で相手を支えたのはプッシングではない。
  8. ボールをキープしている選手がボールを奪われないように手で相手の腿を押すのはプッシングである。
  9. ボールをもらおうとする選手が、マークしている相手の胸を押して反動を利用して距離をとるのはプッシングである。
  10. 両方の選手が互いに手で押し合っているが、プレーができている時はプッシングではない。

いかがでしたか? ○、×を迷わずにつけることができましたか? それでは解説していきます。

プッシングクイズ 回答&解説

 

1.プッシングは手や腕で相手を押す反則なので、身体の他の部位で押す場合はプッシングではない。
⇒(×

プッシングは手や腕だけではなく、身体を使って押す場合も反則です。特に、胸や腹で押す場合が多いです。
ただし、ボールをプレーできる範囲内で自分の肩と相手選手の肩でぶつかるプレーは身体的接触が認められており(正当なチャージング)、反則ではありません。


2.ゴールキーパーが手で持っているボールで相手を押すことはプッシングである。
⇒(

ゴールキーパーが手で持っているボールで相手を押すこともプッシングです。ペナルティーエリア内で反則をすればペナルティーキックが相手チームに与えられます。


3.相手選手を押しても、プレーに影響がなかったり、バランスを崩さなければプッシングではない。
⇒(

フィジカル・コンタクトは、「不用意に、無謀に、または過剰な力で」で行われないかぎり、ファウルではありません。選手がどのような意図を持ってプレーしたか、またその力が相手のプレーにどの程度影響を与えたかが見極めるポイントになります。
特に小学校の高学年の試合では、成長の早い子と遅い子がおり、大きな体格差がありますので、プレーにおける影響度をよく見極める必要があります。


4.ボールキープしている選手が手を伸ばして相手の身体との距離を測ったり、相手の出方を探ることはプッシングである。⇒(×

相手がどこにいるのか、どのくらいの距離にいるのかなど、探るような手の動きは認められているため、プッシングではありません。いわゆる「探り手」と言われており、審判は選手の動きが自然かどうかを判断します。


5.相手がジャンプする寸前に、相手を親指で押してヘディングをさせなかった。相手が倒れることもない軽い接触だったので、プッシングではない。
⇒(×

ジャンプする前に相手の背中を手で軽く押した場合、相手が倒れなくてもバランスを崩してプレーできなかったのですから、親指による軽い接触とはいえプッシングです。
選手がどのような意図を持ってプレーしたか、また相手のプレーにどの程度影響を与えたかが見極めるポイントになります。


6.ボールを追いかけていると、前の相手選手が急にスピードを落とした。その際に身構えた結果、相手の背中に両手で触れてもプッシングではない。
⇒(

身構えたとき相手の背中に両手で触れる場合も、自然な動きなのでプッシングではありません。いわゆる「かばい手」と言われています。たまたまそうなってしまった行為は反則とはなりません。しかし、その手で相手を押してバランスを崩させるとプッシングとなります。


7.ボールをキープしている選手が自分の身体にもたれてきたので、手で相手を支えたのはプッシングでない。
⇒(

相手がもたれてきたのをかばう、自然な手の動きと考えます。先ほど同様、「かばい手」と言われるようなプレーですね。しかし、その腕に力を入れて伸ばす、あるいは支えた手を押し返して、プレーに影響を与えるとプッシングです。


8.ボールをキープしている選手がボールを奪われないように手で相手の腿を押すのはプッシングである。
⇒(

このような場面では、相手を押すプッシングというよりも、相手がボールを取りに来れないように腿や胸を押さえるホールディングとなることが多いように思えます。


9.ボールをもらおうとする選手が、マークしている相手の胸を押して反動を利用して距離をとるのはプッシングである。
⇒(

ボールをもらおうとする選手がマークしている相手の胸を押し、反動を利用して距離をとるのはよく使われる手口の一つです。ボールをもらう前の動きなので見落としがちになります。いわゆる「アーリーヒット」と言われています。


10.両方の選手が互いに手で押し合っているが、プレーができている時はプッシングではない。
⇒(

両方の選手が互いに手で押し合っていても、プレーができている時はプッシングではありません。これもプレーに影響がなければ反則としないケースです。
しかし、どちらかが先に相手を強く押してバランスを崩させ、それを押し返すことになった時は、先のプッシングはどちらの選手だったかを見極める必要があります。このような状況では、タイミングと力の強さを判断することが求められています。

プッシング見極めのポイントは「プレーの意図」と「プレーへの影響」

 

いかがでしたか? 何問正解できたでしょうか?
プッシングと言ってもいろいろな形や種類がありますが、注意や配慮が欠けたり、慎重さがなかったと判断されれば反則です。一方で、「かばい手」など、自然な動きでそうなってしまった行為は反則とはなりません。

各解説を読んでいただくと感じ取れるかと思いますが、フィジカル・コンタクトは、選手がどのような意図を持ってプレーしたか、また相手のプレーにどの程度影響を与えたかが見極めるポイントになります。
「ボールにプレーしようとしているか」という競技者の意図、チャレンジの方向、タイミング、スピード、強さ、距離(ボールの位置、相手の位置関係)、接触部位(使われた部位、接触した部位)、状況などの要因を考えて判別するようにしています。そのためには審判員は「選手のプレーの前・中・後」を把握しておかなければなりません。

身体的接触が認められているのがサッカーですが、「ずるさ」「危なさ」を排除して、それぞれの選手の優れた技能を引き出したいものです。

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WRITER PROFILE

小幡 真一郎
小幡 真一郎

1952年7月21日生まれ、京都府出身。元国際主審。
サッカーの競技規則の側面から、サッカーの持つ魅力、またはサッカーそのもののを伝えたいと思います。著書に7月21日発売『おぼえよう サッカーのルール』(ベースボールマガジン社)、『すぐに試合で役に立つ! サッカーのルール・審判の基本』(実業之日本社)、『失敗から学ぶサッカー審判の教科書 しくじり審判』(カンゼン)がある。

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