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指導者の言霊「森惠佑 サガン鳥栖U-15 監督」

トライできる雰囲気を作り、挑戦させることを第一に

サガン鳥栖アカデミーでは、フットボール面に関して「ゲームをコントロールしていく」「攻守ともに主導権を握る」ことを大きく掲げて指導しています。その上で大事にしているのが「1対1の支配力」「チームプレー」「個性」。これら育成の柱は、各年代によりバランスが異なり、例えばU-12なら支配力に重きを、U-15になるとチームプレーをより大事にするように指導しています。U-12の選手は10名程度で、その内の半分程が昇格するのですが、しっかりと土台ができていると感じています。

私自身が大切にしているのは、選手自らがアクションを起こす状態を作り出すための指導です。能動的に選手自身が動けるようになることは、試合ではもちろん、成長していく中でもとても大事だと思うからです。

そのためのアプローチとしては、第一に挑戦させること。トライできる雰囲気作りも大切にしています。とはいえ、チャレンジしても上手くいかない場合もあります。そんな時は、すぐにコーチが介入するのではなく、選手たちでチームトークができるような時間や、自分自身で考えて行動できるよう個人のトレーニング時間を意図的に設けるようにしています。昨年、優勝することができた高円宮杯JFA 全日本ユースU-15サッカー選手権大会の決勝戦では、先制点を取ったものの、追いつかれてしまったんです。でも、その後、私が何も言わなくても、選手たちが自然とみんなで集まりチームトークを始めて…。結果、崩 れることなく、延長戦で決勝点を取ることができました。普段のトレーニングでやっていたからこそ、解決策を自分たちで見出してくれたのかなと。大会で結果を出すことは成果の一部に過ぎませんが、逆境の中でアクションを起こせたことはずっと残っていくものなので、そういったことをこの年代で増やせるように指導していきたいと思っています。

また、将来のゴールや最終的にどのレベルの選手になりたいかなど、目的を考えさせることも大事にしています。答えを与えすぎず、選択肢やヒントから選手自身が解決方法を導き、時に決断する。そうしたことが、選手の経験にもなっていくと思うのです。

中学年代を指導するにあたり、常に意識しているのは「選手の将来を預かっている」ということ。だからこそ、いい結果が出たりなどポジティブなことがあっても、逆にミスをしたりとネガティブな要素があっても、選手たちが引きずらないように、かかわっていくことを心掛けています。今が最終形ではなく、次に向けていくことが大事ですから。

U-18からトップチームに昇格した松岡大起(サガン鳥栖)や、飛び級でJリーグデビューを果たした中野伸哉(サガン鳥栖U-18)など、身近にロールモデルがいるのもアカデミーの子たちにとっては大きく影響していると思います。彼らは、プレーで見せてくれるだけでなく、アカデミーの選手たちに気さくに声をかけてくれるんです。U-15の頃の話や、自分の時間をどうデザインして成長につなげたかなどの話をしてくれるので、成長曲線を上げる大きな要素になっていると思いますね。

緊張感の中で練習しているからこそ、家庭では自然体に戻れるようサポートを

選手たちは、日頃のサッカー活動の中でスピード感、緊張感のあるトレーニングをしています。というのも、我々は身体的にもメンタル的にも上の学年でも通用する選手であれば、すぐにカテゴリーアップして成長につなげて欲しいと思っているからです。ですので、親御さんには、家庭では選手が自然体に戻れ、リフレッシュできるような時間を作ってあげてほしいと伝えています。そのバランスがとれていない選手ほど、トライするアクションが少ないように感じるからです。

子どもたちを指導していると、周りが変化すれば、自分も変わるという考えを持っている子が多いように感じます。でも、そうではなく、自分に矢印を向けて挑戦すること、努力することの大切さ、そして、努力が実るには、どう工夫して取り組むべきかをサッカーを通して学んでほしいと思います。