夏こそ動き出せ!大学サッカー進路のリアル
高校卒業後もサッカーを続ける選択肢の一つとして「大学サッカー」を視野に入れている部活プレーヤーは多い。しかし、いざ動き出すとなると「いつ」「何を」「どうすれば」いいのだろうか。「分からない」だけでは時間は過ぎるばかり。ここで紹介する先輩たちの体験談をもとに、未来への一歩を踏み出そう!
ポストユースの育成を担ってきた存在
東京五輪の男子サッカー競技を戦うU-24日本代表メンバー22人に、三笘薫(筑波大学出身)、相馬勇紀(早稲田大学出身)、上田綺世(法政大学出身)、旗手怜央(順天堂大学出身)、林大地(大阪体育大学出身)の5人ものプレーヤーを送り出した「大学サッカー」に注目が集まっている。
今季、若手育成のための新リーグ「Jエリートリーグ」が創設されたように、21歳以下(ポストユース)の育成が見直されている中、日本における“最高学府のサッカー”は、これまでも同年代の育成において重要な役割を果たしてきた。
高卒時に即プロの評価こそされなかった選手が、大学で才能を開花させ日本代表まで上り詰めたケースは枚挙にいとまがない。長年日本代表の左サイドバックを担ってきた長友佑都(明治大学出身)をはじめ、伊東純也(神奈川大学出身)、室谷成(明治大学出身)などのA代表、さらに先の東京五輪メンバーの5人も高卒時から今のような活躍が確実視されていた選手ではなかったのだ。
プロ、そして社会で生き抜く人間力の育成
決して潤沢とは言えない資金のなかで、大学連盟・各大学が知恵を絞り、選手に出場機会を供給する環境を創り上げた。その結果、階層化された全地域別のリーグ戦はもちろん、社会人リーグのエントリー、サテライトリーグとなる「インディペンデンスリーグ(Iリーグ)」、1、2年生を対象とした「新人戦」を創設し、選手を“ふるい”にかけるのではなく、全員がレベルにあった舞台で己を磨ける場が用意された。
研鑽の場はサッカーの技術の向上だけが目的ではない。高等教育機関として学問、そして文化としてのサッカーを探究し、主張力、傾聴力、自律心を磨き、社会に通用する人間力を培う。厳しいプロの世界では強靭なメンタルが求められるため、高卒プレーヤーがなかなか結果が残せないのもこの要因が大きいと言われている。
高校を卒業してもサッカーを続けたい──。その環境を大学に求めるなら、自ら動き出そう。待っていても扉は開かれない。入試方法、入部のプロセスを把握しておかないと時間はただ過ぎるばかりだ。
そして進学はゴールではなくスタートラインということも認識してほしい。先の4年間を見据えることが具体的な未来をデザインすることになる。ここで紹介する先輩たちの意見を参考に、まずはアクションを起こそう。大学サッカー受験はすでに始まっているのだから──。
U-24日本代表に選出された大学サッカー出身選手
三笘薫(川崎フロンターレ/筑波大学出身)
1997年5月20日、神奈川県出身。川崎フロンターレU-18から筑波大学に進学。1年次から出場機会を掴み、2年次の天皇杯ではベスト16進出に貢献し、ベガルタ仙台戦での先制点が評価され「SURUGA I DREAM Award」(天皇杯を象徴するゴール)を受賞。ユニバーシアードでは2大会(台北大会、ナポリ大会)での金メダル獲得に貢献。
相馬勇紀(名古屋グランパス/早稲田大学出身)
1997年2月25日、東京都出身。三菱養和SCユースから早稲田大学に進学。3年次にアシスト王として関東大学サッカーリーグ戦2部優勝(2017年)に貢献。翌年には昇格直後のシーズンで再びアシスト王に輝きチームを1部優勝に導く。
上田綺世(鹿島アントラーズ/法政大学出身)
1998年8月28日、茨城県出身。鹿島アントラーズノルテジュニアユースから鹿島学園高校を経て法政大学に進学。1年次からストライカーとして出場機会を得て、2年次は全日本大学サッカー選手権大会の優勝に貢献。2019年にサッカー部を退部し前倒しでプロ入りを果たした。
旗手怜央(川崎フロンターレ/順天堂大学出身)
1997年11月21日、三重県出身。静岡学園高校から順天堂大学に進学後、1年次からレギュラーとして9得点の活躍で新人賞を獲得。2年次には全日本大学選抜や世代別代表を経験。2年次と4年次でユニバーシアードに選出され、優勝に貢献している。
林大地(サガン鳥栖/大阪体育大学出身)
1997年5月23日、大阪府出身。ガンバ大阪ジュニアユースから履正社高校を経て、大阪体育大学に進学。3年次に関西学生サッカーリーグ(2018年)で得点王になりリーグ優勝に貢献。4年次にユニバーシアード(ナポリ大会)で日本代表として世界一に。関西を代表するストライカーへと成長した。
関東大学サッカーリーグ24大学のプレーヤーに意識調査
「大学でサッカーをするにはどうしたらいいのか?」その率直な疑問を解決すべく、footies!Web版の人気企画「大学サッカーのすゝめ」から、関東大学サッカーリーグ1部、2部の24チーム計48名の現役大学サッカープレーヤーの回答を抽出し、ここに紹介する!
Q1.大学は何校検討した?
4年間という貴重な時間を過ごす場所だからこそ、大学選びは慎重に検討したい。調査によると検討した学校数は6校以内。練習会に参加したケースが主で、検討数2~3校が最も多く全体の60%を占めた。0校というのはコロナ禍で海外の話が進まなかったところ、最後まで大学が声をかけ続けてくれたというケース。
Q2.大学選びはいつから準備した?
高2の冬と高3の春からで全体の70%以上を占めた。大学の練習会は早いところで春から行なわれ、夏にピークを迎える。推薦入試、AO入試、一般入試と受験形式はさまざまだが、敵を知り、己を知れば百戦危うからず。早く準備をするに越したことはないのだ。
Q3.在学する大学を選んだ理由は?
一番多かったのは練習会に参加し、大学のサッカースタイル、雰囲気、レベルの高さを実感したというもの。その他で目についたのが最高学府で学ぶことによる人との出会い、人間力の形成、資格の取得といった“サッカー以外”の要素。人生の方向性を決める大事な4年間。選択理由は幅を持って臨みたい。
Q4.大学に進んでよかったことは?
大学サッカーのトップはプロに最も近いレベルにあり、競技面での充実を実感している選手が多い。そんな中、最も多かったのが「人としての成長」だった。大学サッカーは運営、企画、広報などの活動をすべて学生主体で行なっている。サッカーに加え、社会で身に付けるべき能力を学ぶ貴重な機会でもあるのだ。
番外編 大学生活の住まいは?
寮生活が一番多く、実家、一人暮らしとあまり偏りがない。通学時間15分以内が70%を占め、ほぼ寮生活・一人暮らしの数と一致する。大学、練習場への距離が近く、自由な時間も圧倒的に多い大学生活。有意義な時間とするかは自分次第だ。
取材協力/関東大学サッカー連盟
写真提供/©JUFA/Reiko IIJIMA