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勝ち負けに拘るのはいいこと?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは。大槻です。
4月になり新年度が始まったのと同じく、子ども達のサッカーも新しいシーズンがスタートしようとしています。

お子さんがサッカーを始めたばかりの頃は、勝っても負けても微笑ましく感じていた方がほとんどだと思いますが、大きくなると少しずつ子ども達への要求も高いものに…なんてこともあるかもしれません。
そこで今回はジュニア年代にフォーカスして、勝敗と育成について考えていきたいと思います。

子ども達以上に大人の競争意識が高くなっている?

 

スマートフォンの普及により、いつでもどこでも手軽に情報が入るような時代になりました。日本のみならず世界中の情報がリアルタイムで手に入る時代です。サッカーにおいても様々な情報にアクセスしやすい環境になりました。それは育成年代の話題でも例外ではありません。

SNSや報道で結果だけがクローズアップされてしまうことで、子ども達以上に周囲の大人の競争意識が高くなってしまう側面もあるような気がしています。勝ち負けだけでクラブの価値が決まってしまうような風潮を作り上げてしまっていないか?と疑問に感じることもあります。

勝ち負けに拘ることと『楽しさ』の両立を

 

一方でサッカーは、そもそもが『遊び』であり『ゲーム』ですから、勝敗があって当然です。『勝利』を目指すことがサッカーの目的であって、負けていいという試合は一つもありません。チームとして勝利を目指すのは当たり前のことで、子ども達自身の『勝利』への執着心を育てることも育成年代の指導においては重要なポイントです(子ども達自身の執着心なので、大人が子どもの『勝ち負け』に執着するのではありませんよ)。

しかし、『勝利』への働き掛けの方向性を間違えてしまうと、たとえ試合に勝っても悪い方向に向かってしまうこともあります。このことを周囲の大人は理解しなければならないでしょう。年代に応じてその働き掛けは違ってくると思いますが、最も重要なのは子ども達自身が『楽しんでいるか?』それに尽きるのではないでしょうか。

子ども達自身が楽しいと感じることであれば、自然と『負けたくない!』という気持ちを育むことが出来ます。そして、何よりも子ども達自身が『どうやったら勝てるか?』を考えるようになっていきます。ですので、指導にあたる際は、ゲーム性のあるトレーニングを取り入れて勝敗を楽しめるような働き掛けをするように心掛けています。

保護者の皆さまは、「楽しかった?」と聞いてみてください。「楽しかった!」という返答もあれば、「楽しくなかった…」という返答もあるかもしれませんが、そこから会話が広がってきたら、技術や戦術のアドバイスよりも、その状況をどのように考えていたのか?を整理してあげられるといいと思います。

そして、出来なかったことよりも出来たことを見つけてあげてください。その働き掛けの繰り返しが、子ども達の『楽しい!』という気持ちを育て、チャレンジする勇気を与えるのだと思います。

全員が試合に出場することの意味

 

勝敗と育成というテーマでは、この話題に触れておく必要があるでしょう。チームの全員が試合に出場するということは、ポジティブに捉えられることもあれば、ネガティブに捉えられることもあります。

ポジティブな部分

  • 全員に出場機会を与えることで、成果や収穫、課題や問題もチーム全員の経験値になる
  • 選手全員にチャレンジする機会が与えられる

ネガティブな部分

  • 順番で試合に出場する機会があることで、自分自身と向き合わずに子ども達の課題が整理されていかない側面もある
  • 全員出場=勝敗を気にしない方針と捉えられてしまうことがある

ポジティブな部分を作り出すことも、ネガティブな部分を解消することも周囲の大人の働き掛け次第です。具体的には、下記のような点を意識しておけるといいかと思います。

  1. 拮抗した対戦相手とのマッチメイク
    →力の差があると、お互いの技術レベルに適した負荷を与えることが出来ません。拮抗した対戦相手と試合を行えれば、個々の技術レベルに応じたスピードでプレーすることが出来るので、技術の習得に繋がります。
  2. 子ども達に同じモチベーションを維持させること
    →出場する選手がそれぞれに課題を持って試合に取り組めるように働き掛けるといいでしょう。
  3. 成果と課題を示してあげること
    →出来なかったことや課題を口にすることは多いと思いますが、個人で出来たことやチームで出来たことへの評価は子ども達のやる気に繋がります。子ども達のやる気を引き出してから、課題を整理していくような働き掛けがいいでしょう。

指導者であれば『チーム全員を試合に出場させたい!』という想いを持っている方が多いと思います。しかし、試合に勝っていくことで自信に繋がっていくところもありますから、公式戦などでは思い切って決断出来ないこともあると思います。

子ども達にチームが勝利する喜びを感じさせることも大切ですし、試合に出場出来ない悔しさも大切な経験です。全員出場がただの美談になってしまってはいけないとも思います。

試合はもちろん、普段の練習から子ども達全員がチームの力なのだと感じられるように働き掛けていくことが重要ではないでしょうか。

『楽しい!』と思って始めたサッカーを変わらず続けていくために

時代の移り変わりと共に子ども達の取り巻く環境は大きく変わってきています。何が良くて、何が悪いのか、溢れる情報に迷ってしまうような時代です。

本来は『楽しい!』と思って始めたサッカーが、いつからか出場機会や試合の勝敗、トレセンや選抜に選ばれるかなど、何かに追われて苦しくなってしまうことがあるような気がしています。そんな時は一番近くで子ども達を支えている保護者の皆さまが安心出来る環境を作り、チャレンジする楽しさと勇気を与えてあげて欲しいのです。

余談ですが…先日、息子が初めて公式戦を戦いました。大差で負けてしまったようなのですが、帰宅すると試合のことを目をキラキラさせて話してくれました。あまりにも楽しそうだったので、「楽しかった?」と聞いてみると、「楽しかった!次は1点取りたい!」と嬉しそうに話していました。コーチ達には本当に感謝です。息子の話を聞いて、自分自身も我に返ったようでした。

WRITER PROFILE

 大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー