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今さら聞けない!?サッカールール「選手・チームスタッフと審判のコミュニケーション」

1993年のJリーグ開幕節で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
今回は「選手・チームスタッフと審判のコミュニケーション」について。円滑にゲームを進めるにあたって、両者が心がけたいこととは?

双方向のコミュニケーションがスムーズなゲームを作る

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、昨年は多くの試合が無観客での開催となりました。声援が聞こえないのは大変寂しいことではありますが、それによって、普段は聞こえないピッチ上での選手やチームスタッフの声、そして選手と審判のやり取りが聞こえたのは、新鮮だったのではないでしょうか。今回は、ピッチ上での選手・チームスタッフと審判のコミュニケーションに注目してみましょう。

 

「なんのファウル!」「ファウルだろ、どこ見ているんだよ!」という声がサッカーのゲームを見ていると聞こえてくる時があります。選手たちがヒートアップするのも一生懸命、真剣に戦っているからでしょうし、チームスタッフも選手と同じ目線で選手以上の情熱で取り組んでいるので瞬間的に熱くなることは理解できます。あるいは、選手を鼓舞するために戦略的に大きな声を上げることもあるでしょう。
サッカーを愛してやまない仲間なので、そのような言葉もある意味でリスペクトし、受容しています。そもそもゲームに対する想いや考え方が異なる多種多様な人々がピッチ上に集まってプレーをしているので、いろいろな声が聞こえてくるのも当然ではないかと思います。

以前は、審判は選手やチームスタッフの方と話すことは好ましくない、とされたこともありましたが、最近は上手くコミュニケーションをとってゲームを円滑に運営するように心がけています。コミュニケーションとは、気持・意見などを、言葉などを通じて相手に伝えることであり、双方向のものです。矢印は一方通行ではなく、互いに向いている状態であることをイメージし、相手への伝達だけでなく、相手からの情報をいかに「上手に、正確に、受け取るか」という点も押さえておくことが重要だと思います。自分の思いを一方的にぶつけるだけではなく、相手の立場、見方も尊重していきたいものです。

選手と同様、審判は一瞬の出来事を自分が得た情報を頼りに、瞬時に判断し決断しています。残念ながら情報が少ない、あるいは時には見えないこともあり、間違った判断をすることがあります。その結果、判定に対して「どうして!」といった声が上がるのは仕方がないことだと思います。しかし、その後に審判に向かって「そんなのも見えないのか!どこ見ているんだ!」「ちゃんと見ろよ」などと言ってしまってはコミュニケーションが成立しません。

このように言葉遣いがエスカレートしていく時は、注意したり警告・退場に値するカードを示さなければならなくなります。こういった場面では、その言葉の一語一句ではなく、その時の状況やそれまでの経緯、態度・行動も含んで審判は判断し、冷静に大局的に対応しなければならないと思います。

繰り返しになりますが、審判は選手同様、一瞬の出来事を瞬時に判断しなければりません。判断できなかった、間違ったかな、と感じた時は申し訳ないと思って「次はしっかりやらなくては!」と切り替えています。そんな時、「次は見てくださいね!」という選手の声に救われることもあります。

また、選手が「どうしてファウル?」と尋ねてくることもあります。そんな時は、「ボールに触った反対の足で相手選手を倒しているのでファウルですよ」「ノーマルな接触とみました」など、しっかりとその質問に答え、コミュニケーションをとれるといいでしょう。そして、説明を受けた選手側も、「わかった」「ありがとう」という言葉や表情を審判に伝えられると、お互い気持ちよくゲームを再開できるはずです。

このように選手と審判とのコミュニケーションがとれていると、お互いにリスペクトされ、ゲームがスムーズに動いていくように思います。家庭や学校、社会生活においても、お互いのコミュニケーションが必要なことと同じですね。

チームスタッフもコミュニケーションの意識を

 

試合中に警告を受けるのは選手だけとは限りません。チームスタッフに注意、警告、退場を言い渡すこともあります。

特にピッチ上よりもベンチからの方がよく見える時は、チームスタッフと審判の感じ方が異なることがあります。自分の見た事象や感覚と判定とが食い違うと、不満を感じるのは理解できますが、それによって審判に対する言動がエスカレートするような場合は、選手がプレーに集中できるように審判も対応せざるをえなくなります。また、判定の不満だけではなく、審判の役割や人格を否定するような発言は断じて許されないものだと考えます。サッカーの仲間という関係性を否定されるのは非常に辛いものがあります。

具体的になったチームスタッフへの【注意/警告/退場】

チームスタッフによる不正行為に関して、2018/19までの競技規則には「責任ある態度で行動しないチーム役員に対して処置をとり、さらに主審の裁量によって役員をフィールドおよびその周辺から立ち退かすことができる」と示されていましたが、2019/20の競技規則では次のように示され、段階的に<注意>、<警告>、<退場>となる反則が具体的になり、イエローカード、レッドカードを用いるようになりました。尚、反則があり、その反則を犯した者を特定できない場合は、テクニカルエリア内にいる上位のコーチが罰則を受けることになっています。

<注 意>
通常、次の反則は注意となるが、繰り返しまたは露骨に行った場合、警告または退場となる:
  • リスペクトある、または対立的ではない態度で、競技のフィールドに入る。
  • 副審や第4の審判員の指示または要求を無視するなど、審判員に協力しない。
  • 決定に対して軽度の不満を示す(言葉や行動により)。
  • 他の反則を犯すことなく、時折テクニカルエリアから出る。
<警 告>
警告となる反則は、次のとおりである(ただし、これらに限らない):
  • 明らかに、または繰り返して自分のチームのテクニカルエリアから出る。
  • 自分のチームのプレーの再開を遅らせる。
  • 意図的に相手チームのテクニカルエリアに入る(対立的ではなく)。
  • 言葉または行動により異議を示す、例えば:
    ドリンクボトルやその他の物を投げる、またはける。
    審判員に対するリスペクトを明らかに欠いた身振りをする。皮肉な拍手など。
  • レフェリーレビューエリア(RRA)に入る。
  • 過度に、または繰り返し、レッドカードやイエローカードを示す身振りをする。
  • VARレビューのために用いるTVシグナルを過度に示す。
  • 挑発したり、相手の感情を刺激するような身振りや行動をする。
  • 容認できない行為を繰り返し行う(注意となる反則を繰り返すことを含む)。
  • サッカーに対してリスペクトに欠ける行為を行う。
<退 場>
退場となる反則は、次のとおりである(ただし、これらに限らない):
  • ボールを放さない、ボールを遠くへける、競技者の動きをさえぎるなどで、相手チームのプレーの再開を遅らせる。
  • 意図的にテクニカルエリアを出て、次のことを行う:
    審判員に対して異議を示す、または抗議する。
    挑発したり、相手の感情を刺激するような態度をとる。
  • 攻撃的または対立的な態度で相手チームのテクニカルエリアに入る。
  • 競技のフィールドに物を意図的に投げ入れる、またはけり込む。
  • 競技のフィールドに入り、次のことを行う:
    審判員と対立する(ハーフタイムと試合終了後を含む)。
    プレー、相手競技者、または審判員を妨害する。
  • ビデオオペレーションルーム(VOR)に入る。
  • 相手競技者、交代要員、チーム役員、審判員、観客、またはその他の人(ボールパーソン、警備員、競技会役員など)に対する身体的または攻撃的な行動をとる(つばを吐く、かみつくなど)。
  • 同じ試合の中で2つ目の警告を受ける。
  • 攻撃的な、侮辱的な、または下品な発言や身振りをする。
  • 認められていない電子機器や通信機器を使用したり、電子機器や通信機器を使用して不適切な行動をとる。
  • 乱暴な行為を犯す。

(サッカー競技規則2019/20 より引用)

チームスタッフは「責任ある態度で行動すること」という表現から、上記のような反則を具体化して競技規則に記載しなければならなくなったことは、非常に寂しいことだと私は思います。

選手とのコミュニケーションは近い存在であり比較的とりやすいのですが、ベンチにいるチームスタッフとのコミュニケーションは簡単ではありません。チームスタッフと瞬時に、常時やり取りをすることは難しいからです。ですから、時にはプレーを停止してベンチの前に行き、コミュニケーションをとることもあります。スタッフの言い分を聞いて、審判の見解をシンプルに伝えるなど、こちらでも双方向のやり取りを心がけたいものです。

ゲームは選手が中心となってチームスタッフ、審判、運営、観客などが一緒になって作りあげるものです。お互いが仲間の多様性を理解し、相手をリスペクトする、「尊重する」「敬意を示す」「大切に思う」ことを心がけ、サッカーのゲームをみんなで楽しめるものにしていければと思います。

WRITER PROFILE

小幡 真一郎
1952年7月21日生まれ、京都府出身。 サッカーの競技規則の側面から、本来のサッカーの持つ魅力、またはサッカーそのものを伝えたいと思います。 サッカーが日本の文化になるような情報を発信していきます。