指導者の言霊「石川慎之助 NPO法人つくばフットボールクラブ理事長」
「もっとサッカーがしたい」と
子どもたちに思ってもらえる指導を
2003年につくばFCを法人化し、理事長を務めています。今は指導現場には入っていないのですが、立ち上げた頃からジュニア、ジュニアユースなど、様々なカテゴリーをコーチとして指導してきました。
クラブの指導者たちにはいつも「昨日よりも今日、今日よりも明日、子どもたちが“もっとサッカーをしたい”と思えるような指導をしてほしい」と伝えています。なぜなら、子どもは言い方ひとつで「サッカーをやりたくない」となってしまうものです。今日の練習が終わっても明日もサッカーをやりたい、家に帰ってもサッカーのことを考えて、食事や睡眠のことに気を配ったり、勉強もしようと思えるようなアプローチをすることが、子どもたちにとって一番大事だと思います。
指導者と子どもたちが互いにわかり合っていれば、楽しいだけでなく、時に厳しさがあってもいいのではないでしょうか。コーチに注意されてふてくされたとしても、きっと子どもは、今は自分のために叱咤激励してくれているんだと理解し、明日も練習に来るはずです。子どもたちをしっかり見て、今日の指導を振り返った時に、自分が行っているプログラムで“明日も来たい”と選手が思ってくれるかが何よりも大切だと思います。
芝生のグラウンドは、子どもたちのやる気を引き出す要因に
つくばFCでは「本物の芝生と夢の舞台を子どもたちに 引退のないクラブを私たちに」と掲げています。実際、過去には、選手たちと一緒に芝生のグラウンド作りを行いました。自分たちで植えた芝生のグラウンドだったこともあって、選手たちは自然と練習時間より早く来たり、グラウンドが空いていればお弁当を持ってきて、1日中ボールを蹴っていたり。芝生のグラウンド作りをした年代はとにかく練習熱心で、Jリーガーも3人出たほどです。ですので、そうした環境作りも、子どもたちのやる気を引き出す一つの方法だと思うのです。うちのクラブも最初は、体育館や土のグラウンドでやっていたので、諦めず、チャレンジする気持ちを持ち続けることが大事なのではないでしょうか。
準備する力を身に付けさせるには親も一緒に取り組むことが大事
ジュニア年代は、通常のゲームではなく、変わった形のゲームを行い、「協力しないと勝てない」「工夫しないと勝てない」といった状況を作ることが大事だと思います。そうした中で、子どもたちは、「今、この練習をしなければいけないんだ」と気づいて、自然に練習するようになるのです。自分で気づけば、やる気も違ってきますよね。この“気づける力”が重要で、ジュニア年代では状況をつくってあげることで自然に身に付いていくように感じています。また練習以外でも、例えば合宿の際、食事前に一言スピーチを言うようにさせるなど、サッカーを通して、ちょっと違うことを子どもたちに経験させてあげることで、いろいろな場面で臆せずに力を発揮できる選手に育っていくのです。
日常生活はもちろん、サッカーでも“準備をする力”が重要だと思っています。なぜなら、その力を備えていれば、試合の中で一歩早く動き出せたり、いい状況に持っていけたりなど、有利に運ぶことができるからです。準備を習慣にするためには、親御さんが子どもに「準備しないと練習に行けないよ」と声掛けをすることです。時には、テレビを消して家中を“明日の準備にする時間”にするのもいいでしょう。親御さんは、一緒に取り組んだり、一緒に頑張ろうという雰囲気をつくり、子どもと共に歩んであげることが大事なのではないでしょうか。
子どもたちは、サッカーを通して自分で考えて決断し、行動できる大人に育ってほしいですし、そうなるような選手を育てていけたらと思います。また、強いチームをつくるだけがクラブの価値ではなく、子どもたちがずっと引退せずクラブに関わり続けてくれるように育てていくことも大事だと思っています。