【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】自分の得意を見つけて活かす!
サカママ読者の皆さま、こんにちは!大槻です。
秋本番といった気候になってきましたね。食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋…皆さまの秋の過ごし方はいかがでしょうか?
各カテゴリーでは大会に向けた試合がスタートしてきました。
最高学年を迎えた子ども達や保護者の皆さまにとっては、思い入れの強い試合が続くと思います。結果はどうであれ、各ご家庭、各チームで過ごした時間を大切にしながら一生懸命プレーして欲しいと思います。
さて、今回は選手としての『自分の得意の見つけ方』について話をしていきたいと思います。
セレクションの際には『自分の武器を明確にすること』というポイントを以前あげさせていただきましたが、そのような選手としての特別な能力をどのように見つけ、育てていくのかについて話を進めていきたいと思います。
「ボールの扱いが上手い」=サッカーが上手い?
『サッカーが上手い』と聞くと、どのような選手を思い浮かべるでしょうか? パッと思い浮かぶのは、ボールの扱いが上手い選手といったことかもしれません。特に年代が下がれば下がるほど、ボールの扱いが上手な選手は好まれる傾向があると思います。
そうなってくると、「複雑なボールタッチが出来る、リフティングの回数が多く出来る=サッカーが上手い子」という見方がされがちです。もちろん出来る事は素晴らしいですし、練習しても意味がないという訳ではありません。ですが、周囲の大人が「とにかくボールの扱いを上手く!」と、その考えにとらわれて急き立てるようになってしまうのは少し問題があるかと思います。
上手く出来ないからといって、本人の意思とは関係なく必死に練習させること、劣等感を抱かせるような働き掛けは、マイナス要素でしかありません。そして同じようなアプローチをして身に着けた技術は、同じような選手を生み出すでしょう。サッカーは11人でやるスポーツですから、色々な選手がいなければいけません。サッカーの基礎となる技術は、上記のような技術だけではないことを理解しておく必要があります。
武器になる要素は人それぞれ、一つではない
サッカーには、基礎となる4つの技術的な要素があります。
『ボールを蹴る』『ボールを止める』『ボールを運ぶ』『ボールを奪う』です。
そしてこれらの基礎の上に個々の身体の能力や思考が加わり、選手としての武器が作られていきます。この基礎のアベレージを上げていく作業と並行して自分の武器を作り上げていくことが大切です。
話は戻りますが、年代が下がれば下がるほどボール扱いの上手な選手が好まれる傾向にあります。しかし、ボールの扱いが上手くなくても、足の速い子や身体の強い子、正確なキックが蹴れる子もいます。
中には洞察力に優れた子、諦めずに身体を張って守る子、仲間の為に声を掛け続けるような子もいます。身体の能力のみだけではなく、思考もプレースタイルを作り上げていく訳です。
出来ないことにはすぐに目が行きますが、逆に得意なことや子どもたちが自分で獲得したことを認めてあげることが大切だと思うのです。
また、現時点での足の速い・遅いも、将来的にはその差は少なくなってきます。それに、1秒遅いのなら、1秒先にチャンスやピンチに気づくようにすればいいのです。その気づきもその子の得意になるはずです。
ボール扱いが上手い、足が速い選手に注目が集まりますが、それだけではない選手としての可能性を見つけて欲しいと思います。
得意なことを見つけ、チームに活かすことが重要
「よし、それじゃあ自分の武器、得意を見つけて磨いていこう!」となるのはいいのですが、得意を見つけて満足してしまってはいけません。
以前、自分が指導してきた中で、スピードがあり、ドリブルも得意なチームの得点源となる選手がいました。まさに『自分の武器』がある選手ですね。
彼は自分の得意なことが出来る時は良いのですが、思い通りにプレーが出来ないと苛立ってしまうことが多かったのです。劣勢の試合の中でも守備に参加しないということもあり、当然チームは上手く機能しませんでした。
自分の得意なことを意識することは大切なことですが、それをチームの為に活かさなければいけません。
ただ得意なことがあるだけではなく、得意なことを見つけて、それをチームの中で活かすこと。ぜひ、ここまでセットで考えてほしいなと思います。
ジュニア年代では平均値の高い選手が好まれる傾向にありますが、大人のサッカーに近づくと1/11の役割が与えられます。私たち指導者は、何か1つでも子どもたちの得意なことを見つけ、それをチームの中で活かせるように育てていくことで、選手としての可能性も広がってくるのではないかと思います。保護者の皆さまは、子どもたちが見つけた自分の得意を認め、褒めてあげてくださいね。
さて、先ほどお話しした守備に参加せず、自分の得意なことに走ってしまう彼。後にその姿勢について指導し、今では立派な選手になっています。