運動能力や学力にも影響!? 朝食を抜くと起こる問題とは【鈴木啓太の腸内環境を整えよう vol.8】
腸内細菌に関わる研究を続け、腸内環境からアスリートをサポートしているサッカー元日本代表・鈴木啓太さんによるコラム。今回のテーマは朝食を抜くことで起こるさまざまな影響について。学校が休校中も朝ごはんをしっかり食べて、生活リズムを整えよう。
朝食がやる気や学力、運動能力に影響する!?
毎日、朝食をとっていますか? 学校が休校中の今、ついつい朝食抜きになっているお子さんもいるのではないでしょうか。でも、朝食をとらないと、さまざまなことに影響するのです。
下記のデータは、文部科学省が行っている全国の小中学生を対象にした学力調査の結果(朝食の摂取と学力調査の平均正答率の関係)です。
朝食をとっている子どものほうが、国語も算数も正答率が高いことがわかりますよね。
また、朝食欠食と体のだるさの関係を表したデータ(※1)からは、朝食をとっていない子ほど、体のだるさを感じていることもわかっています。
さらに、下記のデータは、体力・運動能力調査の結果です。
朝食を食べている子のほうが持久力があることがわかり、体力テストの合計点も上回っているという結果が出ています。
つまり、朝食は運動能力や成績に大きく影響し、朝食をとらないと、体力や学力が低下するといえるのです。
朝食を抜くと自立神経の働きが乱れ、腸内環境の悪化にも!
では、朝食を抜くと、腸内環境にはどんな影響があるのでしょうか。
朝食を抜くと、1日に必要な栄養素が減ってしまい、腸内環境と関係の強い食物繊維の量も不足してしまいます。そのため、腸内細菌の多様性(種類や数)が下がってしまい、便秘になったり、腸内環境の悪化につながる可能性もあるのです。
また、朝食は自立神経の働きにも関係しています。自立神経は、交感神経と副交感神経にわけかれ、この2つがバランスよく働くことで健康が保たれています。朝食をとると交感神経の働きが高まり、その後の副交感神経の働きも上がります。実は腸のぜんどう運動(腸が動き出す運動)には、自立神経が密接に関わっているのです。
そのため、朝食をとって交感神経の働きを高めておかないと、副交感神経も上がってこないので、腸の働きが悪くなり、便秘になってしまうこともあるのです。
朝食内容と脳の働きが関係している!?
朝食は、おにぎりやパンのみで済ませるのではなく、主食・主菜・副菜・乳製品の揃った食事が理想的です。というのも、朝食をとらなかった場合、糖質のみをとった場合、バランスよくとった場合では、バランスよくとった朝食のほうが、脳の働きが高まるということも報告(※2)されているからです。
とはいえ、忙しい朝は大変なので、1品で栄養がとれる「おにぎらず」などを活用するといいでしょう。具材を肉、卵、魚などのたんぱく源になるものと、野菜、キノコ、海藻類を入れることで、簡単に栄養バランスのよい朝食になるものです。腸内環境のことを考えると、具材を納豆やチーズ、味噌など発酵食品を入れると、1品で腸活にもなりますよね。また、成長期に重要なたんぱく質やカルシウムが豊富な乳製品もとるように心がけてください。
なお、試合の日などは、パン食よりもごはん食をおすすめします。というのも、食パン1枚(6枚切り)では、ごはん1杯分のエネルギーはとれないからです。ごはん食のほうが糖質がとれてエネルギー源にもなりますし、消化もよく、腹持ちもするものです。
親御さんが朝食をとらないと、どうしても子どもにも影響してしまいます。不規則になりがちな今だからこそ、しっかり朝食をとることを習慣にしましょう。
参考文献
※1 日本体育・学校健康センター『平成12年度児童生徒の食生活等実態調査』
※2 大塚製薬「朝食の質で脳活動が変わる(東北大学 川島隆太教授と大塚製薬 佐賀栄養製品研究所の共同研究)」
その他 NHK「腸の働きを活発にして自律神経を整えよう!」