ビジュアルトレーニングについて
我々の情報受容の80~90%は視覚に依存しているといわれており、スポーツも眼と密接な関係があることはいうまでもありあせん。一般的な日常で眼が良いと言えば視力のよさを指しますがスポーツにおける眼のよさは眼力とか目利きと同じ意味合いで状況判断のよさを指しています。
状況判断とは、現在の状況がどうなっているかの知覚と、それに加えて何をしたらよいかという判断を統合されたものを指しており、試合やゲーム形式の練習は状況判断の養成が目的といえます。ある状況で最適なスキルをタイムリーに発揮する選手を「ゲームセンスがある」といいますが、タイムリーに発揮するには次にどのような展開になるかを予測しなくてはなりません。
とくにサッカーのようにゲーム展開が速い競技は、常に先手の予測が必要であり、さらにレベルが高くなるにつれて予測的な判断を必要としていきます。
ビジュアルトレーニングの実施
トレーニング前に把握しておくべきこと
ビジュアルトレーニングの目的は、視覚的能力を向上させることによって、競技力を向上させることです。具体的なトレーニングの内容については、それぞれのチーム環境やスケジュールで異なりますので、以下の注意点を考えながら取り組んでみて下さい。
●楽しく継続できるメニューに工夫する
いかなるトレーニングでも、翌日に効果が出るような特効的なものはありません。ビジュアルトレーニングも同様に継続しなければ効果がありませんので、楽しくできることが継続できる一因となるでしょう。
●ローコストで身近なものを利用する
トレーニングに高額な費用を費やす必要はありません。身近なものや安価なもので十分なので、色々なものを工夫しながら利用してみて下さい。また、サッカーはチームスポーツですのでチームメイトと協働してトレーニングすれば、より色々なことができると思います。
●トレーニングの内容を複合させて興味を持続させる
最初は面白いと興味をもっていても、興味を持続させることはとても困難です。そのため、トレーニングは段々と難易度を上げてみたり、複合的な動作にしてみたりして興味を持続させる必要があります。とにかく選手のチャレンジ精神を掻き立てるような工夫をしていきましょう。
●トレーニングの実施頻度
トレーニング頻度、回数、時間などの原則は明らかになっていませんが、眼はとてもデリケートな器官なので、1日15分程度、週に3回以上が適当だと思います。
トレーニングの内容
ビジュアルトレーニングはスポーツビジョンを高める、いわば入口を広げる「基礎的トレーニング」と、それをスキル(技術)に結びつける「スキルトレーニング」に分けられます。さらに基礎的トレーニングは、動体視力や眼球運動などの各視機能を向上させるトレーニングと、毎日の練習で行なう体力トレーニングと複合させて「見る→反応」という、敏捷性を向上させるトレーニングに分けられます。
基礎的トレーニング
●動体視力のトレーニング
電車に乗ったときに、看板や駅名を眼で追うようにして外を眺め、はっきりを読み取れるようにします。最初は顔を動かしてもかまいませんが、慣れてきたら眼だけで追うようにして下さい。
●眼球運動のトレーニング
カレンダーから20~30cm離れたところから、日付を1→31、2→30、3→29の順に目を動かし、声を出して読上げるようにします。顔は動かさないように注意しましょう。
●深視力のトレーニング
カラーコーン(目標物)を前方に設置して、ボールを当たるように狙います。深視力が悪いとうまく当てることができません。
●周辺視野のトレーニング
両手で二つのボールを持ち、同時に上に投げてキャッチするようにします。視線は片方のボールにいったりしないように前を見て、周辺視で画面を把握するようにします。
●瞬間視のトレーニング
歩いているとき、急に後ろを振り返って、すぐに前に向き直ります。前を向きながらどんな建物があったかやどんな人がいたかなど、具体的な風景を思い出していきます。できるだけ色々なものを記憶するように心掛けながら実施して下さい。
●目と身体の協応動作トレーニング
指導者が瞬間的に左右の指を立てて、選手は指の本数を確認して奇数なら右へ、偶数なら左へダッシュするというように決めておきます。左2本右3本であれば、右へダッシュするということになります。体力トレーニングと複合的に実施することができ、工夫次第では色々なバリエーションが考えられます。
様々な刺激を取り入れ楽しみながら実践していきましょう。