【インタビュー】染野唯月(尚志高校)チーム悲願の日本一に向け、目覚めたエースとしての自覚
選手権で魅せた青森山田戦での衝撃のハットトリック。収めて、パスが出せて、類まれな得点力を有するストライカーは、鹿島アントラーズ内定を決めた。目まぐるしく変化する周囲の環境に惑わされることなく、染野は前だけを見据えている。
尚志高校3年/FW
染野 唯月 ITUKI SOMENO
2001年9月12日生まれ。鹿島アントラーズつくばJrユースを経て尚志高校に進学。1年でボランチからFWへ転向し、得点力が開花。2018年度の選手権では5得点で大会得点王タイとなる活躍でチームのベスト4進出に貢献。キープ力と展開力にも長けた万能型のストライカー。今年7月に鹿島アントラーズ内定が発表された。U-18日本代表。
自分が得点を取ってチームを勝たせたい
昨年度の選手権での活躍から半年、新たに主戦場となったプレミアリーグEAST、高校選抜、U-18日本代表での遠征と大きな環境の変化がありましたね。
「世界が広がりましたね。周囲からの目も変わったし、自分を取り巻く環境が変化したことで、色んな可能性が広がりました。それと同時にプレッシャーも大きくなり、責任感も増しました。一日一日を無駄にしないように過ごしています」
自身で向上したと実感していることは?
「選手権が終わってから、自分はできるんだという自信を得ました。『自分が得点を決めて、チームを勝たせる』という意識は大きく変わったと思います。自分に対するマークは注目が上がるごとに厳しくなってきますが、周りの仲間を上手く使いながら、最終的には自分が得点を決められたらと思っています。とにかく自分が得点をとってチームを勝たせたいという想いが強いです」
染野選手が尚志を選択した理由は?
「中学時代に所属していた鹿島アントラーズつくばジュニアユースの先輩から声を掛けていただいたことが大きいです。もともとボランチでプレーしていたので、尚志のパスサッカーへの憧れもありました」
ボランチからフォワードに転向したのはいつ頃だったのですか?
「1年生からです。入学した頃はずっとボランチでやっていくんだと思っていましたが、仲村浩二監督はすぐに僕がフォワードに適正があると感じていただいていたようです。ただ、密集したエリアにいるFWでは、ボランチの時とは相手のプレスが全然違いました。相手を背負うFWは、ボールのもらい方、置き方ひとつにしても違いがありますし、オフ・ザ・ボールの動きに戸惑いました」
ボランチでの経験が活きたことは?
「僕のストロングポイントでもある、ボールを収めること、そこから出すスルーパスなどの感覚はボランチ時代に培われたものだと思っています。もともとシュートは得意だったので、そこはストライカーとして一番必要な得点を取るということに適性があったのかもしれません。可能性を見出していただいた仲村監督には感謝しています」
練習で意識していることありますか?
「僕は味方がボールを奪った時に、まず足元にもらうクセがあったのですが、今は裏に抜け出すことを選択肢に入れ、そこを意識的に練習しています。それは代表や選抜での遠征を通し、よりスピーディなサッカーを経験し、ゴールに近づくにはDFの背後への動き出しが重要だと実感したからです」
福島の子どもたちが感動するサッカーをしたい
代表で得たことをチームに還元するという思いは?
「すごく意識しています。今、僕は海外でプレーする機会にも恵まれて、色んな経験をさせていただいてます。高いレベルでやれているからこそ、そこで学んだことを尚志に伝えていくように考えています」
尚志でプレーしたことで成長できたと感じる部分は?
「仲村監督からはピッチ内外での“人としての成長”を常日頃から指導いただいています。普段の挨拶であったり、振る舞いであったり、ピッチ外でも『日本一の取り組み』を目指し、それが自ずとピッチ内での日本一につながると言われています。尚志での経験を通じて、そこはみんなも大きく変わったことだと思います」
選手権準決勝での埼玉スタジアムでは、無数の応援バスが駆け付けましたね。
「すごく力になりました。サッカー部・サッカー選手として学校から応援される存在にならなくてはいけないと思ってきました。選手権の準決勝では学内はもちろん、福島の別の高校からも応援に駆けつけていただいて、すごく感動しました。今年はプレミアリーグEASTの試合を郡山でやることで地元の子どもたちが見に来てくれています。彼らに感動させるサッカーをして、勝利を目指さなくてはいけないと思っています」
好きな選手、参考にしている選手は?
「リヴァプールFCのロベルト・フィルミーノ(ブラジル代表)選手です。パスも出せてドリブルもできて、シュートも上手い。自分の目指すプレースタイルとして参考にしている選手ですね」
座右の銘は?
「『前後際断(ぜんごさいだん)』です。過去にとらわれず、未来を憂うことなく、今を全力で取り組むという意味です。サッカーに置き換えると、シュートを外して悔しがっている暇があるなら、今やれることを考えてプレーする、と捉えてやっています」