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指導者の言霊「神川明彦 明治大学付属明治高等学校・中学校サッカー部総監督」

指導者の言霊「神川明彦 明治大学付属明治高等学校・中学校サッカー部総監督」

現在、明治大学付属明治高等学校・中学校サッカー部の指揮を執る神川明彦監督。明治大学サッカー部監督時には、日本代表としても活躍する長友佑都選手をはじめ、数々の選手をプロの道へ導いたことでも知られています。 今回は神川監督に、指導する上で大切にしていることはもちろん、サッカーを続けることの意義、文武両道についてもお聞きしました。

わずか2年でチームが成長、選手たちも評価されるように

小学生年代は指導によって大きく変わると思います。私は、サッカークリニックのようなかたちで定期的に子どもたちを指導する機会があるのですが、子どもたちは吸収する力や意欲が高いので、短時間でも新しい視点を教えるだけで、変わっていくのを感じています。

それは、中学生、高校生も同じです。明治中学は偏差値73、スポーツ推薦もありません。そのためサッカー部にも、小学4年生くらいから受験勉強しかしてこなかったような選手もいます。今、総監督になって2年目を迎えているのですが、初めて地区大会を突破し、都大会ベスト16に入ったりと、どんどんチームのレベルは上がっています。またゴールキーパーの選手が選抜に入るなど、評価される選手も増えてきました。こうしたことは、明らかに日々の指導の成果であり、指導内容が適切なものだったということを証明しているんじゃないかと思っています。

明治大学出身のプロ選手たちが長く活躍している理由

明治大学サッカー部で指導していた当時は、組織の中で柔軟に合わせていける、且つ自分を埋没させることなく、確固たる存在感を発揮できるような選手になるよう指導してきたつもりです。また、監督によって要求されることは変わるので、よく話を聞き、何を求めているかを理解すること、それを自分に向けて、何ができるかを自分自身に語りかけるような心の仕組みをつくるよう導いていました。それもあって、明治大学サッカー部出身のプロ選手たちは、割と長く活躍しているように感じています。

神川明彦
神川監督が明治大学サッカー部で指導した選手には、日本代表の室屋 成選手(FC東京)や長友佑都選手(ガラタサライ)もいる。

親御さんや指導者、選手にも伝えたい「サッカーは簡単ではないということ」

私が親御さんたちに伝えたいのは、サッカーはとても難しいスポーツなので、簡単にできるとは思わないでほしいということです。サッカーは一人ではなく、グループでするものですし、しかも対戦相手もいる。また、雨風のときもあれば、ピッチだって人工芝や天然芝、凸凹のグラウンドのときだってある。そんな上手くいかない要素が満載の中で、日ごろ練習してきているとはいえ、試合の中で何かをうまくやり遂げるというのは、とてつもなく難しいものだということを理解してほしいのです。だから、少しでも成果がでたり、ほんの少しでもできなかったことができるようになれば、選手を思い切り褒めてあげてほしいと思います。

また、親御さん、指導者の方だけでなく、選手たちもサッカーはそんな簡単なものではないということを知っておいてほしいのです。だから、できなくても落ち込むことはないし、失敗しても下を向くことはない。ただし、できていないことに目をつぶって努力を怠ったり、できていない自分を差し置いて仲間を非難することはやめるべきです。

軸となるものを見出せればサッカーを長く続けられる

繰り返しになりますが、サッカーはグループで行う、対戦相手がいるスポーツです。自分の力が全く及ばない中でも、自分自身を表現していかなければなりません。これは、まさに社会そのものだと思います。選手たちは将来、いろいろな考え方を持っている人たちが働く組織、社会に飛び込んでいくでしょう。その中で社会性が豊かな、組織スポーツであるサッカーで培ったことが間違いなく軸になっていくのです。だから、選手たちにはサッカーを通して、軸となる“これだと思えるもの”を見つけてほしいと思います。これだったら他の選手より勝てるという部分、自己肯定感を得られる要素をサッカーのどこかで見出すことができれば、よりサッカーを長く続けられるでしょう。

お父さんコーチたちは探求心を持って学び続けてほしい

ジュニアの指導者は「教えすぎない」「やらせすぎない」など「〇〇しすぎない」ということを一番に気をつけるべきだと思います。サッカーには「攻撃」「守備」「攻撃から守備」「守備から攻撃」の4つの局面があり、その原理原則の部分はしっかり教えるべきです。けれど、次の段階のことは、選手たちに考えさせる必要があるのです。なぜなら、サッカーは選手の瞬時の判断が重要であり、最終的に判断するのも選手だからです。私自身もそこに立脚し「教えすぎない」指導を心がけています。また、私が最も厳しく指摘するのは、すべての要素が平均でも、一つ能力が突出している選手が、その高い能力を活かさず、全力を尽くさないときです。持っている力を使いきらないときには、中学生でも高校生でも、厳しく指導しています。

お父さんコーチたちは、自分で飛び込んだ以上、もがくことも必要ですし、子どもたちのことを思うのであれば、探求心を持って学び続けることも大事だと思います。指導者が成長することで、子どもたちもきっと何かをつかむだろうし、本気の大人の姿を見せれば、子どもたちは感化されて、自分もこんな大人になりたいと思うのではないでしょうか。

勉強とサッカーは二者択一ではなく、両方やることで力が養われる

私は、サッカーと勉強、文武両道を目指すべきだと思っています。これから中学生になり、部活を選択すると、かなりの時間を費やすことになるでしょう。現に明治中学サッカー部でも1年間に500時間ほど費やしています。でも、私は「勉強もサッカーも、どちらも“100”でやろう」と選手たちにはいつも伝えているのです。24時間のデザインをしっかりやり、自分自身で自立を育んでいけば必ずやれるはずですし、それを目指すべきだと思うからです。

親御さんは成績が下がってしまうと、どうしてもサッカーを取り上げてしまいがちです。でも、二者択一はやめてほしいのです。それよりも、サッカーを続けながら成績をV字回復させる、その過程が力を養い、そこで身に付けた能力こそが人生の中で役立っていくのです。また、子どもたちは勉強とサッカー、両方やるからこそ自分をコントロールするようになり、自分の持っている能力にも気づけるようになるものです。

そのため、子どもたちには、勉強とサッカーの両方をチャレンジさせてあげてほしいと思います。その中で、親御さんは両方を成就させるための道筋を一緒に考えてあげて、軌道にのってきたら距離をおいて見守ることです。目的意識を持たせ、自分自身の力で目標を達成する、これをどんどんチャレンジさせていくことが大切です。

神川監督からのアドバイス!

サッカージュニアへ

  • サッカーでできないことがあったり、失敗しても落ち込まなくていい
  • サッカーを通して「これだったら勝てる」ことを見つけよう

サカママへ

  • サッカーはとても難しいスポーツだという理解を
  • 「 勉強とサッカー」は二者択一ではなく、両方をチャレンジさせてあげて

ジュニアの指導者へ

  • 「〇〇しすぎない」指導を
  • 探求心を持って学び続けることが大切