指導者の言霊「内藤清志 トラウムトレーニング総監督」
百聞は一見に如かず 身近に見本がいれば上達する
トラウムトレーニングは、風間八宏が立ち上げたサッカースクールです。 「本物を感じる」をコンセプトにし、子どもたちに“技術”を目で見せることをモットーとしています。そのため、5歳から18歳までの子どもたちが年齢やレベルに関係なく一緒にトレーニングを行っているのが特徴です。
現在の最年長は16歳ですが、ときには大学生もいます。百聞は一見に如かずではないですが、下の子たちは上級生と接することで、身近に見本ができ、彼らの技術を自分のものにしようとするんです。 練習の最後にはゲームも一緒に行うのですが、最初は恐怖感からボールを見ようともしなかった小さな子たちも、次第に目が慣れていきボールを追いかけていくようになります。小さな子どもたちは感受性も豊かなので、慣れるスピードも早い。 また、年上の子どもたちは、身体のサイズの違いからも年下の子に体をぶつけることができないので、ボールの置き方やスピードの強弱といった技術の基本の大切さを感じるようになっていくんです。
指導をするうえで、僕の考えるテクニックの3本柱は「ボールの扱い方」「体の動かし方」「思考のコントロールの仕方」。 とくに体を自由に動かすテクニックは、全員が共通して持つべきだと思っています。練習ではその規格を伝えることはしますが、僕の型にはめるのではなく、どちらかというと癖がつかないように指導しています。 そうすれば、子どもたちは自然と力を抜いてプレーすることができるようになり、余裕が生まれることにもつながります。 それと僕自身が一番こだわっているのは「教えすぎない」こと。 子どもたちの個性、例えばボールを蹴る、止める、運ぶことなどを導きだして、そこにアドバイスをしていく。結果、個性のあるおもしろいチームに仕上がっていくのです。
一番上手い子を伸ばし 全体のレベルアップへと導く
練習メニューは全員でのボールを使った鬼ごっこが中心です。 鬼ごっこで捕まらないという点は、サッカーに通じるものがあると思います。鬼ごっこをさせながら、数名のユニットを組んで、上手くできていないプレーを指導し、また鬼ごっこに戻す。その繰り返しです。 子どもたちは、メニューをむずかしくしてしまうと、それをこなすことに必死になってしまうので、鬼ごっこをメインにしながら、その日の子どもたちの状態をみて細かい内容を決めるようにしています。
練習中によく考えているのは「一番上手い子を見る」ということ。 一番上手い子が、どれだけ上手くなっているのかが、チームのバロメーターでもあると思います。その子が伸びれば、当然ですが2番目、3番目…と下の子たちも負けたくないと伸びていくのです。
僕たちコーチ陣が常々口にしているのは「10年一万時間」ということです。 それだけもの時間を費やしてボールを蹴れば、身につけた技術は裏切らない。言い換えれば、蹴った分しか上手くならないということです。どこにボールを蹴るか、どこで止めればいいか、敵のゴールに向かうための手段をイメージするだけなら誰にでもできる。それを足でどう表現するのかが、サッカーのむずかしいところでもあるのです。成功させるには、ボールを止める、蹴るという技術が何よりも重要。「技術の基本をなめる奴は、サッカーは上達しない」と子どもたちにはよく話しています。
僕は自分の思っているとおりに子どもたちを指導し、親御さんたちにもそれを受け入れてもらっているので、とても感謝しています。 ただ、子どもたちの中には、トレーニングをしてすぐに上達する子もいれば、そうでない子もいます。でも、ずっと変化がない子でも、ある日突然、上手くなることもあります。子どもたちは、みんなサッカーが好きで練習をしていると思うので、子どもにプレッシャーを与えず、温かく見守ってあげて欲しいと思います。馬主になったくらいの気分で、応援をしていただければ(笑)。あとは僕たちがしっかり指導していきます。
※この記事は2015年1月28日に掲載したものです。