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子どもにとって“スポーツ”が大切な理由

子どもにとって“スポーツ”が大切な理由

スポーツは子どもの成長にとって大切だとわかってはいるものの、その本当の理由とは――。スポーツ教育における人間形成の可能性などを研究している、早稲田大学スポーツ科学学術院教授・友添秀則先生にお話をうかがいました。 文/編集部

できないことが“できる”ようになる喜びを 身体を通して感じるからこそ成長できる

スポーツをすることで子どもは、できないことが“できる”ようになることが、端的にわかるようになります。それは勉強でもいえることですが、どうしても勉強はパーソナル(個人)なことになります。一方、スポーツを通して“できる”ようになったことは、可視性がある分、より周りから褒められ、認められたりするものです。子どもは承認欲求が強いため、指導者や仲間から認められることで充足感も得られます。スポーツを通して努力の重要性を学び、“できる”ようになる喜びを自分の身体を通して味わうことで、子どもは成長していくのです。

運動欲求を充足することは子どもの心の発達に不可欠

人間にある運動欲求。子どもの場合は、体育の時間はもちろん、休み時間、土日の遊びやスポーツ中で、運動欲求を充たしてあげることが重要です。生理的な運動欲求を抑圧してしまうと、心の発達に影響する場合があるからです。スポーツをして運動欲求を充足することは、子どもの心の発達のためにも必要不可欠なのです。

競争欲求を充たし、集団達成感が味わえる

小学3・4年生になると、競争欲求がでてきます。競い合って勝ったり、負けたりが楽しくなるこの欲求を充たすことができるのはスポーツならではといえるでしょう。また、集団達成感も同様です。仲間と協力し、自分たちで考えた戦術が上手くいくという経験は、仲間意識、帰属意識も一層高めていくのです。集団達成感というと集団スポーツだけかと思いがちですが、練習は仲間と一緒にするもの。従って、どんなスポーツであれ、集団達成感が味わえるのです。

実際の人生で経験するようなことがスポーツの世界では味わえる

スポーツの中では、実際の人生で経験するような葛藤がいろいろな場面ででてきます。例えば、同じチームの中で共存・敵対したり、屈辱感を感じたり。勝利と敗北の中で、この上ない幸福感や悲しみを味わったり、人間関係が上手くいかずに苦悩し、時に傲慢になってチーム内で孤立することもあるでしょう。そうした実人生でも経験するようなことをスポーツの世界では味わえるのです。

スポーツ教育とは?

スポーツ教育とは、運動を通して発育発達期にある子どもの心身の発達を促す教育的な営みで、学校の体育の授業や部活動なども含まれます。また広い意味では、幼児から高齢者まで健康で活力に満ちた生活を送れるように支援するものという考え方もあります。指導者がいてスポーツを通して学ぶ人がいれば、それらはすべてスポーツ教育にあたるということです。

スポーツは非日常だからこそ乗り越えられることがある

実人生の中では、なかなか回復できない辛い経験も少なくありません。スポーツの中でも、時に辛い経験や苦悩はあるでしょう。けれど、スポーツはあくまでも非日常で行われていること。だからこそ、スポーツで経験する辛さや苦悩は乗り越えられ、修復力もついていくのです。子どもたちにとって、辛さを体験したその時は実人生そのものかもしれません。でも、後に振り返ると、スポーツを通して得た貴重な経験は成長や向上につながるのです。

ジャンピングや重力の運動を適切に行えば骨密度が高くなる

運動不足が続くと、子どもでも肥満や過体重となり、コレステロールや血中脂質が増大することがあります。また、骨密度も低くなる場合があります。骨の形成を促し、骨密度を高めるには、ジャンピングや重力の運動を適切に行うことが大切です。また女の子は、子ども時代に極端に運動経験が少ないと成人後、骨粗しょう症になりやすいともいわれています。子どもの時に運動の楽しさを経験し、生涯にわたって運動をし続けることが、健康寿命の延伸にもつながっていくのです。

「運動の適時性」があり、後からでは習得しにくい

バレーボールのアタックやテニスのサーブ。これらは、子ども時代に投げるという動作を経験していないと上手くはできないものです。また、子どもの頃に泳ぎを学んでいないと、大人になってもなかなか泳げないですよね。運動には「運動の適時性」というものがあり、その時期に学ばないと後からでは習得しづらいことが多いのです。そのため、小学生の間は、1つのスポーツに限定するのではなく、多様なスポーツを経験することが大事。その中で、自分にとって1番のスポーツ、2番は……と決めればいいのです。そうすれば、より能力も伸びていくはずです。また、指導者の比較ができるので親にとってもプラスに。

有酸素能力が高い子どもは、学力も高い!

有酸素能力とは、全身持久性能力のこと。長い距離が楽に走れ、体力的にもバテないような有酸素能力が高い子どもは学力も高いというデータもあります。また、運動が知的能力の向上によい影響を及ぼすというエビデンスも。子どもの時に、日常的に運動をして有酸素能力を高めれば、知的能力を高めていくことにつながるのです。

指導者が勉強することの大切さを伝えれば、学んでいくように

子どもにとって、指導者が決定的な影響を及ぼすことはデータからもわかっています。子どもは指導者を一つのモデルとして捉え、近づきたいと思っているものです。そのため、指導者が勉強することや努力することの大切さを伝えていけば、学んでいくようになるのです。

運動経験が少ないと身体的スキルや器用さに影響!

運動経験が少ない子どもは、身体的なスキルや身体の器用さが身につかず、日常的な基本動作にも支障をきたす場合があるといわれています。例えば、体育の授業のマット運動で前転する時に、肩を脱臼したり、学校の廊下で走ってきた友だちをとっさに避けられず、思わぬケガをしてしまうこともあります。そういったことにならないためにも、いろいろな運動やスポーツを経験することが大切です。

スポーツにデメリットはある?

スポーツそのものが悪いのではなく、指導者の質に大きく関係するということです。指導者が命令し、服従させるような環境では、いくら子どもが頑張っても自主性や創造性が育ちません。指導者が創造的な練習を心掛けないと、子どもたちは学年が上がるにつれてあるレベルまでしか勝てなくなってしまいます。勝利至上主義の環境で勝てなくなってくると、やけくそになったり、ドロップアウトしていく傾向もデータからわかっています。

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