知っておきたい①「脳しんとう」のコト
「頭を打ったぐらい大丈夫」はかつての話。脳しんとうは、どのような状況で起こりやすいのか、症状や対応方法などを理解して、脳しんとうにまつわる知識をアップデート!
思ってもいない方向から衝撃を受けたときに、脳しんとうが起こりやすい!
「ヘディングをしたときに、脳しんとうが起こりやすい」と思っていませんか? プレー中に脳しんとうが起こりやすいのは、不意にボールが飛んできて頭部に直撃したとき。思いもよらぬ方向からボールが飛んでくると、心も身体も準備ができていないので衝撃を受けやすく、頭(脳)が揺さぶられてしまうからです。ヘディングそのものよりも、ヘディングをする際に相手と競り合って頭を打つなど、選手同士が激しく接触することで起こることのほうが多いでしょう。
症状には個人差がある!普段通りでなければ、脳しんとうを疑って
脳しんとうは、脳に影響を与えるため幅広い症状が見られます。頭痛、ふらつき、めまいなどの自覚症状や、どこにいるのかわからなくなったり、意味不明の言葉を発したり、けいれんを起こす場合もあります(下記参照)。人によって症状が異なるため判断基準はむずかしく、頭を強くぶつけたり、揺さぶられた後、普段通りでない症状がある場合は、脳しんとうを疑いましょう。
脳しんとうの疑いがある場合は、練習や試合からすぐに外して休ませる
脳しんとうの疑いがあったら、すぐに練習や試合から外して、ラクな姿勢で休ませましょう。このとき、選手が退屈そうだからと「YouTubeでサッカーの試合を見ててもいいよ」などと指導者が許可してしまうのはNG。脳しんとうを起こしたら、脳を休ませることも重要なのです。時間が経てば回復することが多いため、選手は練習や試合を続行したいと言う場合も。けれど、症状は遅れて出てくるケースもあります。症状が回復したら保護者と一緒に帰宅させましょう。
合宿中、脳しんとうの症状が急に悪化。救急病院はどこもいっぱいで・・
山の中での合宿に帯同したサカママ。練習中に脳しんとうを起こした子がいたものの、夜ごはんも食べて一見回復したように見えたそう。けれど、午後10時頃に頭痛やめまいに襲われるなど急に悪化。救急車を呼ぼうとしたものの、近隣の救急病院はどこもいっぱいと断られてしまい…。偶然にも父親が近隣に宿泊していたため、すぐに来てもらい、1時間以上かけて住んでいる地域の救急病院へ。後遺症が残るほどではなかったものの、2~3週間ドクターストップになったそう。脳しんとうを起こしてから24時間以内は、どんな症状が出るかわからないもの。くれぐれも注意を!
ときに脳が損傷し、命にかかわることも!
脳しんとうの症状は、時間とともに変化する場合があります。頭をぶつけてから24時間以内は、選手を1人にせず、観察しておくことが大事。時間が経っても症状が改善しなかったり、悪化する場合は、頭蓋骨の骨折や脳の中で出血している可能性もあります。右記の徴候が1つでも見られる場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
テレビ、ゲーム、スマホはNG!脳を休ませることが重要
脳しんとうを起こすと、脳の中でいろいろな変化が起きているため、身体だけでなく、脳を休ませることも重要です。テレビやゲーム、スマホ、タブレットなどを使うと、画面の中のものを目で追いかけてしまい、脳を駆使することに。脳を休めるどころか疲れてしまい、気分が悪くなってしまう場合もあります。
脳しんとうを起こしてから24時間以内は、これらの使用を避け、安静にしていることが大事。また、入浴すると体温が上がり血液循環が変わるため、脳に影響が起きてしまうという説も。湯舟に浸かるのは避け、シャワーを浴びる程度にしましょう。
ヘッドギアは脳しんとうの予防には繋がらない
ヘッドギアを頭に装着していればヘディングの衝撃が減り、脳しんとうの予防になるのでは?と思う方もいるかもしれません。でも、そのようなデータはなく、上記でも述べたように、脳しんとうの多くは、ヘディングそのものが要因ではないのです。また、ヘッドギアを着けていても、頭が揺さぶられてしまうと脳しんとうを起こしてしまいます。ただし、てんかんなどの病気を抱えている子はヘッドギアを着けていれば、痙攣発作を起こして倒れた際に頭を守ることができるでしょう。
イギリスやアメリカでは10歳以下の子どもはヘディング禁止に
イギリスのとある論文によると、元プロサッカー選手とそうでない50代では、脳疾患による死亡は前者が2倍以上も多く、その原因は、若い頃にヘディングによる脳しんとうが多かったのではないかと考えられています。そうしたことから、イギリスやアメリカでは、10歳以下の子どもはヘディング禁止になっているのです。それから数年しか経っていないため、効果はまだ実証されてはいないものの、世界的にヘディングは段階的に行い、頭を守っていくという流れに。日本サッカー協会でも、育成年代でのヘディング習得のためのガイドラインが設けられています。
参考:脳振盪ハンドブック(日本スポーツ振興センター)、JFA メディカル 脳振盪(のうしんとう)https://www.jfa.jp/medical/concussion.html