調子を上げる目標設定とは?プラスの感情を芽生えさせてパフォーマンス向上!
元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第15回目。
今回のテーマは「調子を上げる目標設定」です。調子の良し悪しによっては、プレーにも大きく影響されます。試合などで調子を上げるプラスの感情を芽生えさせる方法とは?
試合で調子が悪い時の対処法とは?
中学2年生のお子さんから「試合で調子が良い時と悪い時の波が激しく悩んでいる」というご相談を受けました。調子がいい時は、積極的にプレーに参加して、ボールをもらうために声を出してたくさんアピールできるけど、なかなか調子が出ない時は、声を出せずプレーも消極的になり、ボールをもらいたくなくなるとのこと。
ここで試合中に調子が良くなっていくタイミングと、調子が悪くなっていくタイミングを詳しく相談者に聞いてみました。
うまくいっている時は、立ち上がりから声が出ていて、最初から自分のやりたいプレーがどんどんできている。逆にうまくいかない時は、立ち上がりから自分の思うようなプレーができず、ミスを気にするあまり失敗を恐れて、最終的にはボールをもらいたくなくなるとのことでした。
調子が良い時も悪い時も共通しているのは「立ち上がりのプレー」という事が分かりました。では、立ち上がりの時にどんなプレーをする事が多いのか具体的に聞いてみました。
実現可能な目標設定で良いパフォーマンスに繋ぐ方法
彼はドリブルが得意で、最初のプレーで相手を抜けるとそのまま調子が上がっていく感覚があって、逆に相手を抜けず、ボールを取られてしまうことが多くなってくると調子が下がっていく。 ここでその時の感情を聞いてみると、ドリブルで相手を抜けた時は達成感や高揚感が高まり、取られてしまった時は不安や焦りが出てくるということです。
出来事に対してプラスの感情が動くと自信に繋がっていき、逆にマイナス感情を味わうと自信を失っていきます。 この感情が自信を作るうえで非常に重要になります。 好調の波に乗ってプレーする際に、立ち上がりのギアのいれ方が関係していると感じました。
ただ、「ドリブルで相手を抜く」ということは結果です。 結果は自分が全力でプレーしたからと言って、必ず得られるものではありませんし、コントロールも難しいです。
それでは調子を上げて、自信に繋げていくにはどうすればいいのか? 彼には、結果を目標にするのではなく、行動を目標するようにしてもらい、ギアを上げていくようなイメージで設定するように伝えました。
ギアを上げていくようなイメージとは、自転車を想像してみてください。 5段階のギアがあるとして、最初から重い最大の5のギアでスタートするとスピードは出ません。 一番軽い1のギアにからスタートして、徐々にギアを上げていくとスピードに乗りやすいく加速していきますよね。
つまり「調子のギア」も同じように、最初のプレー(行動)は自分にとって目標達成が簡単な項目を設定し、小さな達成感や高揚感を積み重ねていくことで自信を構築し、良いパフォーマンスに繋がっていきます。
目標を段階的に分けて自信をつける
そこで試合を行う前に、自分の最初のプレー(行動)でハードルが低い目標を以下のように段階的に分けて設定してもらいました。
- 相手の裏のスペースに走って、味方に声を出してパスを要求する
- パスが来たらトラップして、一番簡単なパスを選択する
- 前を向けるときは前を向いて簡単なパスを選択する
- ドリブルを仕掛ける
このように少しずつ高い目標にしてもらい、達成すればOKで「よしよし、いいぞ」とプラスの感情が芽生えてきます。
試合で調子のギアを上げる事に大切なのは、結果ではなく目標を達成するという行動です。実際に試合でこの目標を意識してプレーしてみた結果、自分にとって調子がいい感覚ができやすくなり、自信をもってプレーできるようになったとのことです。
子どもが目標設定をする時に、保護者が気をつけたいこと
本番で最初から高すぎる目標をもって試合に臨むと、マイナス感情を味わうリスクが増え、調子が上がりづらくなることがあります。
お子さんが調子の波に乗れないことで悩んでいる時は、お子さんにとって低いハードルから超えていくような目標設定をお手伝いしてあげると、より自信をもって好調な感覚で試合に臨めるメンタリティが出来上がっていくでしょう。 そのハードルは大人が決めるのではなく、お子さん自身が「これならできる」というものを聞いていくことで、「より好調な自分」「自信のある自分」としてパフォーマンスに繋げられます。