子どもが失敗してしまった!その時どうする?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】
サカママ読者の皆さま、こんにちは!大槻です。
さて、前回は「整った環境」は子どもにとって良い環境なのか?ということをテーマにお伝えしました。前回の「環境」は、グラウンドや練習施設の設備どハード面の話題が中心でしたので、今回はまた別の角度から、子どもにとって良い環境とはどんなものかを考えていきます。
子どもを失敗から避けるために、先回りしてませんか?
グラウンドや練習施設、道具といったハード面とは別に、子どもを取り巻く環境として親のサポートがありますよね。この連載を読んでいる方も、色々なサポートに日々奔走されているかと思います。中には、「子どもには失敗してほしくないから…」と、先回りをしてしまう方もいるのではないでしょうか?
例えば、持ち物の準備が良い例になるかと思います。子どもの試合前日、持ち物を全て準備してしまうようなことはありませんか? 小さい時は一緒に持ち物を確認しながら準備をする必要はあるでしょう。しかし、いつまでも保護者が手を貸していてはいけません。それが習慣化してしまうと、忘れ物をしてしまった時でも「お母さんが用意してくれなかったから」と自分ではなく保護者の責任にしてしまうでしょう。
「そうは言っても、試合で忘れ物しちゃったら困りませんか?」そう思うかもしれません。確かに試合で忘れ物をしてしまったら、その日の試合には出られないでしょう。でも、そんな悔しい思いをしたら、「次からは絶対忘れ物はしないぞ」と思うはずですし、そのためにどうすればいいかも考えるようになるはずです。
大人の働き掛けが子どもへの気付きを与えるといった意味では、保護者が子どもに失敗しないように先回りをしてしまうような環境は子どもに気付きを与えることが難しいのではないでしょうか。
大人の出来て当たり前は子どもの当たり前ではない
では、子どもが失敗してしまった時は、どのような働き掛けが必要なのでしょうか? まず、失敗に対して頭ごなしに怒ってしまうのは効果的な働き掛けとは言えません。「失敗=怒られる」となると、失敗の本質を理解することなく、ただ怒られないことを優先して考えるようになってしまうからです。
そして、大人からすると当たり前に想定できた失敗であっても、その失敗は子どもにとっては予測もできない初めてのことである場合も多いはずです。大人の出来て当たり前は、子どもの当たり前ではないという視点を持つことも必要でしょう。
実際に子どもが失敗してしまった時は、まず怒るのではなく、失敗した後に「どうすべきだったのか?」を検証して、「次からはどうするか?」を一緒に考えることが大切です。もちろん一度失敗しても再び同じ失敗をしてしまうこともあるでしょう。しかし、そういった失敗を一つ一つ丁寧に積み上げていくことで、失敗の本質を理解出来るようになっていくのです。
これはサッカーのトレーニングにも同じことが言えます。ミスを頭ごなしに怒ってしまうと、選手は指導者の顔色を窺い、言いなりになってしまうこともあります。萎縮したプレーが増えてしまう上に、自ら考えてプレーする習慣も身に付きません。
子ども達は失敗から多くのことを学んでいきますし、失敗を避けていては実体験を積む機会を失ってしまいます。「失敗は成功のもと」という言葉があるように、子どもだけではなく、まずは保護者が失敗をポジティブに捉えられるといいかもしれません。
失敗をポジティブに捉えられるようになれば、「失敗しないように…」と先回りをするのではなく、「どうしたら上手くいく?」を一緒に考えられるようになるはずです。そして、子どもが失敗に対してチャレンジする勇気を持てるようなれればいいと思います。そのために必要になるのは、頭ごなしに怒ることではなく、どっしりと構えて「見守る力」です。
ごあいさつ
さて、2021年も残りあと僅かです。今年も1年連載をお読みいただきありがとうございました。
コロナ禍の難しい時間が続く中で、子ども達の環境も大きく変わりました。子ども達の笑顔を守り、健全に過ごせる環境を作るためにも、これまで以上に「見守る力」が必要になるのではないかと思っています。
また来年も皆さまのサッカーサポートの一助になる話題をお届けできればと思いますので、よろしくお願いいたします!