言われたことしかやらない子どもに主体性を持たせるには?【サッカー指導者コラム】
スポーツ×教育をテーマにしたWEBメディア「SPODUCATION」で行われた指導者対談から、サカママ、そしてサッカー指導者にとって気になるトピックを取り上げてお届けします。
今回は、「言われたことしかやらない」子どもに主体性を持たせるにはどうすればいいのか? 日本サッカー指導者協会でセミナーダイレクターを務める藤原明夫さんの考えをご紹介します。
藤原明夫
1958年5月25日生まれ、茨城県出身。筑波大学体育専門学群を卒業後、千葉県サッカー協会の要職及び県立千葉高校サッカー部監督を歴任し、2019年3月教職員を退職。現在は、JFCA(日本サッカー指導者協会)セミナーダイレクターを務め、全国で開催しているJFCA主催の研修会、講習会の責任者として指導者の育成に従事している。
監督を辞めアドバイザーに。選手でスケジュールやメニューを考えるように宣言
2019年3月まで千葉県で教職を務め、進学校である県立千葉高校のサッカー部で監督を歴任した藤原さん。実は最初のうちは生徒に主体性があまり見られず、言われたことはできるけど、指示がないと考えられないような状態だったそうです。そこで、藤原さんは就任3年目に監督を辞め、アドバイザーになることを宣言します。
「県立千葉高校では3年目に監督を辞めてアドバイザーになると宣言しました。というのも、子どもたちが言われたことはきちんとやるけど、僕が指示を出さないと自分たちで考えることができていないと気がついたから。例えば、僕が出張でいないと、自分たちでどんな練習をしたらいいか分からないといった感じでした」
自分たちで練習メニューを考え、先発メンバーも決めてみるように生徒に宣言。
月曜日・・・中学女子も含めたミニゲーム
火曜日・・・外部コーチを呼んだ練習
水曜日・・・休み
木曜日・・・藤原さんによる練習
金曜日・・・生徒たちだけで考えた練習
このように自分たちでスケジュールやメニューを考えていくうちに、段々と生徒たちに主体性が見られるようになったそうです。
監督を辞めるという思い切ったやり方に至ったのは、子どもたちが言われたことはきちんとやるけど、指示を出さないと自分たちで考えることができていないと気がついたことがきっかけだったという藤原さん。
「これから世の中に出て、日本の中枢を支えていく子たちがこれではマズイなと。だから子どもたちと一緒に苦しんでやっていこうと思いました」
アドバイザーとして生徒からの相談は受けつつも、最終的な判断は自分たちでするように伝えていたそうです。まずは週のスケジュールの内の一日や、メニューの一つを生徒が考えるなど、部分的に取り入れてみると子どもたちの主体性を伸ばすきっかけになるかもしれません。
試合に出たいから監督の言うことを聞くではなく、選手自身が考える環境作りを
年齢やカテゴリーが上がってくると、ただサッカーを楽しむだけではなく、チーム内での競争が生まれてきます。大規模なチームともなれば、どうしても試合に出られない選手も出てきます。
今の日本は監督の言うことを素直に聞く選手が選ばれ、監督に言われた作戦で試合に勝つ風潮が強いと感じるという藤原さん。しかし、藤原さん自身は筑波大学に入るまでは、あまり指導を受けたことがなく、ずっと20人くらいのチームで自分たちが考えた練習を行っていたそうです。
「自分たちに何が足りないか、それを補うにはどのような練習をしたらいいか、皆で話し合って決めていました。スポーツにはそのような部分はとても大切だと思います」
試合に出たいという想いが強くなれば、まず監督の言うことを素直に聞こうとなるのは自然な流れかもしれません。ですが、それだけになってしまうと主体性は薄れてしまいます。こういった問題に対して藤原さんが考えるのは、チーム内をさらに小規模に分けて指導するということ。
「僕は1チームの人数は20人くらいで、リーグ戦をするのがいいと思うのです。100人選手がいたら、5チームに分けて。そうやってスポーツを皆で楽しむ方向に持っていきたい」
チーム全体を見るのは指導者であっても、チーム内をさらに細分化して、その中で選手たちが主体的に考える機会を与える。そうすることにより、自分たちで試行錯誤する楽しみという側面も出てくるのではないでしょうか。
この記事はSPODUCATIONにて行われた指導者対談の内容を再構成したものです。対談の内容は下記、SPODUCATION WEBサイトのコラムよりご覧いただけます。
★「育てる」から「育つ」へ~子どもが自ら育つ土壌を作るためにできること~(前編/後編)