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指導者の言霊「アレックス・ラレア DV7 サッカーアカデミー ディレクターコーチ」

スペインでは、やる気のある子にフォーカスを当てて指導

スペインでは、サッカークラブが小学校チームとクラブチームに分かれています。小学校の学年も日本で言う5年生の学年が最終学年で、中学生が一年早く始まります。クラブチームは年代別にチームを作りますが、小学校のチームはカテゴリーに分かれません。それゆえ、サッカーが上手くなりたいという向上心のある子もいれば、楽しくサッカーをやりたいだけの子もいます。各選手が満足できるようにトレーニング内容を考えて指導するのが、当時の一番のテーマでしたね。戦術と技術のトレーニングを並行して行うのですが、トレーニング内容が厳しすぎないように、かといって選手が退屈しないようなメニューを組み立てるように心掛けていました。練習中はグループには分けるのですが、みんな同じメニューを行います。なぜなら週末の試合では、サッカーが上手くなりたい子も楽しみたい子も一緒にやらなければいけないからです。ただし、練習後、フィードバックに対してのコメントは、上手くなりたい子たちだけに伝え、楽しみたい子たちには何も言わなかったですね。

そうすると、時に楽しみたい子の保護者から、自分の子に対してのモチベーションが低いのではないかという指摘もあります。その場合、一度はその子にアドバイスをするんです。それでも、本人に向上する意欲が無い時は、そのことを保護者に伝えます。保護者がいくら不満を感じていても、それは子ども自身の問題だからです。

スペインでは、サッカーが国民スポーツが故、子どもたちにとりあえず1度はサッカーをさせるという文化のようなものがあり、お父さんに言われたから練習に来ている子も多いものです。ですので、そういう子たちのモチベーションを高めるというよりは、意欲のある子にフォーカスを当てて指導するのがスペインの小学校チームの現場では多いと思います。

相手をリスペクトすることをサッカーを通して学んでほしい

「親は監督ではありません」という注意書きを、スペインのグラウンドではよく見かけます。というのも、子どもの試合を見にきている熱心な親がバイオレンスな言葉を口にしたり、監督ではないのに指導をしているからです。そのため、チームは保護者との関係を拒絶していることがよくありますね。日本に来てスクールのコーチをしていると、保護者と話をするのが自然であり、それはすごくいいことだと思います。子どもについて保護者に話す時は、よくなったことなど変化した点と、もっと上手くなれることを伝えるようにしています。というのも、保護者には子どもたちの変化をまずは応援してあげてほしいと思うからです。また、保護者からは、日常どのように過ごしているかを聞くようにし、コミュニケーションを大事にしています。

サッカーは集団スポーツであり、全員でゴールを獲るものだと思うので、子どもたちには、チームメイトやチームに対して、リスペクトできるような選手に育ってほしいと思います。そのためには、私自身が選手たちの見本であることが大事になってきます。選手たちへの関わり方や振る舞いなど、常に彼らに対してリスペクトを持って接することで、彼らも私と同じような振る舞いができるようになってくれればいいなと。サッカーはフィジカルスポーツでもあるので、トレーニング中でも激しく当たりあい、互いに怒りを持つような感情が生まれることもあります。そういう時は、練習後に、ぶつかってしまった選手たちが話す時間を設け、私もその中に入って彼らとコミュニケーションを取り、またトレーニングをしながら互いを尊重できるような環境を作っていくように意識しています。練習中は、物を大事にすることや挨拶することを習慣にし、私自身も一人ひとりに挨拶をして帰るようにしています。そういったことを通じて、子どもたち自身が何故それが必要なのかに気づき、そこから生まれる気持ちが大切だと思うからです。だからこそ、私自身が誰よりも彼らの見本になるように日々生活することが大事だと思っています。