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指導者の言霊「渡辺泰明 レジスタFC監督」

指導者の言霊「渡辺泰明 レジスタFC監督」

生きる力をつけてあげることが何よりも大切

レジスタFCでは4年生から6年生の間、同じ監督が担当し、6年時にある公式戦を目標に日々練習しています。昨年の全日本少年サッカー大会で優勝できたのは、彼らを4年生のときから指導してきたことが1つの要因ではないでしょうか。

子どもたちには、サッカーの技術も大切ですが、生きる力をつけてあげたいと一番に考えています。今、一生懸命にサッカーに取り組んでいても、もしかしたらこの先、サッカ ーのない人生になるかもしれないからです。 そうなると、サッカーがいくら上手くても意味を持たなくなってしまう。だからこそ子どもたちには、生きる力―相手に負けない気持ちやチャレンジ精神、絶対に乗り越えられるという強い気持ちが必要だと思うのです。

そのため、練習で何よりも大事にしているのは気持ちの部分。とにかく「いけ、勝負しろ」とあおります。子どもたちが必死でやろうとする姿勢を持つように火を付けているといった感じでしょうか。子どもたちを褒めることは少ないですし、グラウンドで笑顔になることもあまりないですね。オンザピッチ、オフザピッチのメリハリはつけたいですし、そのほうが子どもたちも気持ちのスイッチが切り替えられるものです。 きっと子どもたちは私に対してきつい印象を持っていると思います(苦笑)。ただ、そんな中でも戦う姿勢が強くなったり、相手に負けない気持ちが持てるようになったときには「それでいい、頑張れよ」といった程度ですが、褒めるようにしています。褒めることが少ない分、そういった声かけで伸びる子もいますからね。

指導をする上でよく口にしているのは「自分で思ったことをやれ」「思い切ってやれ」ということ。子どもたちの中には、プレー1つみても、いくかいかないか迷って何もしない子もいます。でも、やってみないとそのプレ ーが失敗か成功かはわからない。たとえ失敗しても必ず次があるし、もし成功したならば成長につながるものです。 子どもたちには、失敗してもいいから、とにかくチャレンジしてほしいと思っています。

サッカーが好きという気持ちのまま次のカテゴリーへ送り出す

練習前に子どもたちが私のところへやくるのですが、わざと不機嫌を演じる場合があります。 それは、サッカーでも、人生においても、人の空気を読み取ることは大事だと思うからです。 けれど、子どもたちが今日は萎縮しているなと感じたら「誰か一発芸やってよ」と促し、笑いを誘うようにしています。つい私自身も笑ってしまうので場が和みますし、そんな空気になれば、いつもと違った雰囲気で練習を行うことができるものです。

チームが地域で一番強くなってからは、子どもたち以上に親御さんが期待をしている場合があります。でも、正直、子どもたちのレベルの差は大きく、全国レベルに達していない子も多い。親御さんたちには「あまり期待しすぎずに見守ってください」と伝えるようにしています。 ただ、今までセレクトクラスは1学年1チームだったのですが、昨年度から2チームになったので、子どもたちが活躍できる場は広がったと思います。

私は指導者として、子どもたちにサッカーを好きでい続けてもらうこと、そして、その気持ちのまま次のカテゴリーに送り出してあげることも大事だと思っています。小学生の頃はトップチームに入れなかったり、ベンチにいることが続いていたとしても、中学校、高校にあがってから伸びる子をたくさん目にしてきたからです。 子どもたちは、いつ芽がでるかわからない。だからジュニア時代は、そのときのための準備をする場でもあるのではないでしょうか。

指導者でいると〝将来〞というフレーズをよく耳にします。 けれど、子どもたちに大切なのは、先のことよりも、今、目の前のこと。過去を振り返って反省するよりも、今、すべきことを精一杯やれば、きっといい結果がついてくる。明るい未来は開けていく―子どもたちにはそう伝え続けたいと思います。

※この記事は2016年4月14日に掲載したものです。