中央大学商学部で学ぶスポーツ・ビジネスの最前線!東京23FCホームゲーム運営REPORT
明治安田生命寄付講座
スポーツ・ビジネス・チャレンジ演習/実習
以前Jリーグクラブのキーマンが週替わりで講演する注目の講座「Jリーグ・ビジネス論」を紹介したが、今回は実際に学生がクラブ経営に参画する「スポーツ・ビジネス・チャレンジ演習/実習」をレポート!9月7日に行われた東京23FCホームゲームで起こった「奇跡」とは!?
●中央大学商学部で学ぶスポーツ・ビジネス・プログラム「Jリーグ・ビジネス論」
半年間の取り組みを経て開催した
「多文化の融和」
サッカークラブ経営に学生が参画する「スポーツ・ビジネス・チャレンジ演習/実習」。今年は9月7日、東京23FCのホームゲームを中央大学商学部の学生たちがプロデュースした。準備期間は4月からのおよそ半年間。2年生以上の26名が、企画、広報、店舗誘致、スポンサー営業、イベント企画といった試合興行に関する業務全般を担い、観客動員・集客に向け奔走してきた。
2015年に同演習科目を立ち上げた中央大学商学部長の渡辺岳夫教授も、「今年は今までにないイベントになった」と振り返る。リーダーの塚野愛果さん等が中心となって企画したイベントの目玉が「ちびっこワールドカップ」。開催地の江戸川区は、在留外国人が都内で新宿に次いで2番目に多く、多文化が共生する街だ。そこで地域コミュニティー間の融和を促進するイベントとして、さまざまな国の子どもたちが集まる大会を企画し、9月7日の動員につなげるという考えだ。
しかし、PRの部分でSNSを中心とした自分たちの発信力に限界を感じた学生たちは、行政へと働きかける。この企画を江戸川区役所に持ち込み、区議会議員との交渉の末に後援を取り付けたのだ。江戸川区の承認を経てPR活動の道筋こそ立ったが、いざ「行動を実践する」段階になるとグループディスカッションはさらに加熱。毎週金曜の17時~18時40分の講義は遅いときは22時まで議論が紛糾したという。
スポンサー営業、飲食店誘致、広報活動を担う各チームは、8月の夏季休業期間を通して奔走し、ホームゲーム開催の時を迎えた。「毎晩満員と空席の会場の夢を見た」という塚野さん。彼女らの想いは果たして――。
東京23FCが語る
中大生とのプロジェクトの意義
原野大輝さん
(東京23FC副代表)
本気で取り組んでいるからこそ、Win-Winの関係でありたいと考えています
「僕が中央大学サッカー部OBで後輩の中大職員を通じて、熱意にあふれた渡辺教授とお会いさせていただき『一緒にやりましょう』と。1年目にして、無料試合ではありましたが、恐いものなしの学生のパワーと想像力で3,300人を動員し、翌年に我々はリーグ優勝を果たしました。この活動を通じて学生もJクラブやスポーツの世界に通じることになるかもしませんし、彼らも本気で取り組んでくれていますから、授業の一環というより、お互いがWin-Winの関係でありたいと考えています。この活動で彼らは現実を知り、挫折を経験します。仕事は雑用も多いですし、営業では上手くいかないことがほとんどです。自分の想い描いていた世界とのギャップを知り、そこから彼らがどう歩んでいくかが重要だと思っています」
今季ホームゲーム最多の1,633人を動員!
9.7 東京23FCホームゲーム運営REPORT
9月7日の江戸川区陸上競技場は晴天に恵まれ、昼過ぎには子ども連れの家族が会場に現れ始めた。「ちびっこワールドカップ」には江戸川区内のインターナショナルスクール、少年サッカーチーム、小学校に通う子どもたちおよそ200人が参加。東京23FCの選手たちと共に、思いっきり天然芝のピッチの上を駆け回った。チームをつくって参加する大会以外にも、サッカーボールを使ったテニス、ボウリングなどの多数のコーナーが設けられた。在留外国人の子どもたちも一生懸命にボールを追いかけ、人種を越えた笑顔が溢れていた。
会場外には中大生が誘致したインドカレー、小籠包などの多種多様なアジアフードカーが並び、会場コンコースには縁日を思わせるちびっこ向けブースが用意され、人の波が絶えることはなかった。
中大生たちの奮闘が、東京23FCのイレブンに奇跡を起こす!?
また、この日の試合は東京23FCにとって関東リーグ1部残留を懸けた正念場。3節を残し、引き分け以下では降格が濃厚となる状況下で選手たちも奮闘。桐蔭横浜大学FCを相手に後半に追いつかれ1-1で迎えた試合終了間際、ロスタイムに値千金の勝ち越しゴールを決める「奇跡」が起きた。残留に臨みをつなぐ劇的な勝利に今季ホームゲーム最多の1,633人の観客は大盛り上がり。中大生が半年間取り組んできたプロジェクトは、江戸川区に「奇跡」を起こし、大団円を迎えた。
こんなコンテンツも学生たちがプロデュース!
PR動画を作成
多文化が共生する江戸川区をサッカーで融和しようというメッセージを込めたPR動画で、在留外国人の参加を呼びかけた。
飲食店誘致
国境を越えたアジアングルメを満喫できるフードカーを多数誘致。長蛇の列ができていた。
ミス、ミスター中大候補が彩る
中大のミス・ミスターコンテストの候補者が集結。投票をアピールしながら、大会に華を添えた。
学生の声
塚野愛果さん
(中央大学商学部2年生)
「高校生の時に留学したアメリカでイベントを企画したのですが、自分の力では100人を呼ぶことが限界でした。どうアプローチすれば、より多くの集客を達成できるのか、トライしてみたくてこの科目を受けました。観客動員5,000人には届きませんでしたが、お客さんの笑顔、逆転勝利した時の声援を聞いて、自分たちのやってきたことに意味があったんだと思えました。緊張から解かれ、達成感と安堵感から泣き出す子もいたくらいです。4月からみんなとチームとして動き出し、授業以外にも集まり、議論して、一緒に取り組んだ時間は本当に特別なものでした」