日章学園中学校サッカー部の花房監督に聞く「伸びる選手が行う6つの考え方」
日章学園中学校の「日本一」の取り組みとは?
第49回全国中学校サッカー大会で11年ぶり3度目の優勝を果たした日章学園中学校(宮崎)。全国の頂点に立った彼らは、日々どんな取り組みを行ってきたのでしょうか。チームの指揮を執る花房亮太監督にお話を伺いました。
花房亮太 監督
はなふさりょうた●香川県出身。第81回全国高校サッカー選手権出場。大阪体育大学卒業後は同校コーチを経て2011年より監督に就任し、2018年の全国中学校サッカー大会にてサッカー部を全国優勝に導く。2014年にはJFA公認A級コーチライセンスを取得。自身の学び続ける姿勢、指導者としてサッカー選手としてだけではなく、人としての成長にこだわる方針に、全国の指導者から称賛の声も多い。
1すべてはサッカーにつながる!
昨年は第49回全国中学校サッカー大会(全中)にて、大会4連覇中の青森山田中学に勝利し、11年ぶり、3度目の優勝を果たすことができました。日々、切磋琢磨を続ける中で、私は常日頃から選手たちに「日本一の取り組みをしよう」と言い続けてきました。 まず、みなさんに意識していただきたいのは、普段の学校生活におけるすべての事柄がサッカーにつながっていると言うことです。例えば「挨拶、返事、受け答え」をちゃんとできていますか? 一つの小さなことが、他のすべてのことに表れる「一事が万事」と言う言葉がありますが、日々の生活態度がピッチ上での行動につながり、それが結果となって表れるのです。 私は“日本一の選手は、普段から日本一の取り組みを行っている”と選手に教えてきました。 「サボらない」、「最後まで諦めない」、「人のせいにしない」――、それらの精神は、当たり前のようでいて、日々の行いで継続して実践することは難しいことです。しかし、日本一の選手であれば「普段からこんな行いをしているだろう」と、その理想像、選手像を思い描き、自身を投影しながら、そこに近づけていくわけです。
2達成することで見える景色が変わる!
日本一になる前は、「(日本一は)おそらくこうなんだ」と思って取り組んできたことが、今回の優勝で確かなものになってきたという実感があります。これまでとは見える景色が変わり、選手たちも日本一としての自覚が芽生えていると思います。人は現状より一歩先のステージに立つことで、初めて知り得ることがあります。それが県、市、地区、ブロックの1番でもいいんです。その目標を掲げ、達成することで、周囲から見られる目も変わり、周りの景色が変わって行くのです。チームとして乗り越えていこうというモチベーションを共有し、それを達成することに意味があるのです。
3イヤなこともできる人間になろう!
〈ふかん〉という言葉を知っていますか?一つは〈俯瞰〉といって、高いところから見下ろして全体を把握することを指す言葉があります。サッカー選手としても非常に重要な能力ですね。そしてもう一つが何も感じない〈不感〉という意味で、私がそうならないよう指導している言葉です。例えばゴミが落ちていても「誰かがやるだろう」と素通りする。靴が並んでいなかったり、挨拶ができないのもそうです。日常の当たり前のことも感知できない人間が、サッカーの対戦相手の動きを感知できるはずがありません。日常生活において正しいジャッジができるから、サッカーでもジャッジできるようになるんです。自分がイヤなことでも自発的に行える。そういった集団にするために、私はこれまで多くの時間をかけてきたと思っています。
4挑戦する気持ちをもとう!
また、最近はチャレンジしない子どもが増えてきたように感じます。「怒られるのがイヤだから」と、言われたことだけを行い、“挑戦しない”ことで自分を守るのです。そうすることで自分の可能性を狭めてしまい、「もっとやればよかった」「こんなはずじゃなかった」となり、結局は自分をダメにしてしまいます。勉強もそうです。やれない子に限って言い訳をするものです。自分のやることに意志をもち、責任を持ち、発信することが、己を強くし、人を助けることにつながるのです。
5書き出すことで伸びる!
うちのチームでは、サッカーノートは自分が出したいと思った時に提出するように伝えています。提出頻度は各々違いますが、サッカーが伸びている子は、振り返りがちゃんとできています。俯瞰できているからこそ、今の立ち位置に気づき、修正することができるのです。選手には、私が言ったことで気になったことなどをメモし、帰宅してからまとめるように教えています。「書き出す」という行為は非常に重要で、自ら整理・理解・勉強することで、それが発信力になります。成長している選手は、そこが変わってきますね。
6すべての基本を大事に!
中学生活での3年間、みなさんには基本を大事にしてほしいと思います。日章学園では4年前に完成した人工芝グラウンドで練習していますが、それは当たり前のことではありません。選手には、この環境を与えてくれた一番のサポーターである両親に感謝し、日本一の取り組みをするように伝えています。冒頭に述べたように、日常生活のすべてがサッカーにつながります。サッカープレーヤーとして、家族の一員として、そして中学生として常に基本に立ち返り、この3年間をまっとうしてほしいと思います。
日章学園中学校サッカー部
全国中学校サッカー大会にて、2006年、2007年、2018年に3度の全国制覇を果たす。2015年に完成した日章学園人工芝サッカー場で日々のトレーニングに励み、宮崎、そして九州を代表する強豪チームとして活動している。
記事提供 『中学校サッカー部』 公益財団法人日本中学校体育連盟 サッカー競技部 広報誌