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Jリーガーたちの原点 vol.56「望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)」

Jリーガーたちの原点 vol.56「望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)」

人気連載「Jリーガーたちの原点」。今号は、FC町田ゼルビアの躍進に貢献し、日本代表として2026年ワールドカップ参戦を目指すDF 望月ヘンリー海輝選手に、第37回全日本少年サッカー大会に出場した思い出を語ってもらいました。

「マリノスに勝ったー!」と大喜び。でも、気づけば全少は終わっていた

-初めに、サッカーを始めたきっかけから教えてください。

「サッカーをやっていた父の影響で、気づいたらボールを蹴っていました。小学校で入った地元の少年団(FC 上福岡サンダース/埼玉県ふじみ野市)も自由な雰囲気で、友だちと一緒に和気あいあいと楽しんでいましたね」

-RB 大宮アルディージャU12に加入されたのは4年生に上がるタイミングで?

「少年団と並行して途中からアルディージャのスクールに通っていました。その延長でセレクションを受けて合格したんです。レベルの高い選手ばかりで、最初は『みんな上手いな』と驚きました。練習の本気度、雰囲気もシビアでしたし。その中で僕もサッカー選手になりたいとなんとなくは思っていましたけど、はっきりした目標という感じではなくて、とにかく夢中でプレーしていた気がします」

-当時のポジション、得意なプレーは?

「足が速くて、まだ身長も飛び抜けて大きいほうではなかったので、その頃から右サイドが多かったです。スピードを活かした仕掛けには自信がありました。でも、当時は与えられたことをやっていただけで、自分で考えながらプレーするという段階ではなかったです」

-6年生の夏、2013年の全日本少年サッカー大会(現JFA 全日本U-12サッカー選手権大会/以下、全少)に出場されています。アルディージャは埼玉県大会を勝ち抜き、決勝大会ではベスト8に。

「全少はチームとしての目標でした。みんなで一致団結して出場を目指していましたね」

-チーム内で望月選手の位置付けは?

「全然レギュラーではなくて、試合に途中から出るか出ないかくらいの選手で。先発した仲間を『みんなすごいな』と見ていて、チーム内での役割だったり、そんなことは考えていませんでした(笑)。もちろん大きな大会でプレーしたい気持ちはありましたが、一方でミスするのが怖いという思いもあったんです」

-全少でとくに印象深い試合は?

「(2次ラウンドの)横浜F・マリノス戦ですね。僕は途中出場でしたが、チームメイトが立て続けに点を取って3ー0で勝ったんです」

-格上という意識があったのですか?

「それまでなかなか勝てなかった相手で、対戦前にはチーム内に不安もあったと思います。その中でいい試合ができて、『マリノスに勝ったー!』とみんなで大喜びしたのを今でも覚えています」

-続く準々決勝は三重県の大山田SSS に0ー2。ここで敗退することに。

「関東のチーム以外と試合することがほとんどなかったので、よく知らない相手でした。僕らにとってはマリノスに勝てたことが大きくて、おそらく少し油断もあったと思うんです。あっさり負けて、気づいたら全少が終わってたという感じで、泣いた記憶もないですね」

-県大会でも決勝大会でも途中出場からゴールを挙げていますが、得点力というのは当時から強みのひとつだったのですか?

「僕、点取ってたんですか!? マジで覚えてないんですけど…(笑)」

-ピッチ外で何か思い出は?

「散歩中になぜかわからないんですけど、突然キャプテンが泣き出したんですよね。あとは『マリノスの選手がアイスクリーム食べてたぞ!』みたいなことで盛り上がったり。本当に小学生すぎる思い出で、すみません(笑)」

-ご両親も応援に来ていたのですか?

「そのときには母子家庭だったので、母が来てくれていました。親にとっても息子の晴れ舞台だったんだと思います。プロになってからも母はよく試合を見に来てくれるんです」

望月ヘンリー海輝選手の試合風景

常に自分を一番に考えてくれた母。本気でプロを意識した大学1年の冬

-そんなお母さんは望月選手にとってどんな存在だったのでしょう?

「仕事で忙しいのに送迎してくれたり、毎日ごはんをいっぱいつくってくれたり、とても大きな存在でした。プレーや結果が良くても悪くても、サッカーに関しては何も言わなかったこともありがたかったですね。常に僕のことを一番に考えてサポートしてくれました」

-元ソフトボール選手だったそうですね。

「それもあってスポーツやサッカーをすることをすごく後押ししてくれました。ひとりで子どもを育てるのは、本当に大変だと思うんです。チームに入るにも遠征に行くにも、お金だってかかりますし。でも、いっさい僕に気を遣わせることなく、いつも『サッカー楽しんできてね』と送り出して、ずっと支えてくれていたので。当時も気づいてはいたんですけど、振り返ると感謝しかないですね」

-日々の生活や勉強など、何かサッカー以外で言われたことは?

「ないです。『宿題はやりなさい』くらいで、好きなことを何でもやらせてくれました」

-中学時代、高校時代は三菱養和サッカークラブでプレーされていますね。

「すごく自由で温かい雰囲気のチームでした。自宅から少し離れた場所で、違う学校に通う選手とプレーしていましたが、上下関係もあまりなかったですし、コーチの方々も自分のいいところを伸ばす指導をしてくれました」

-そうした環境で当時、サッカー選手としての未来をどのように描いていましたか?

「その頃もまだ…。今思えば、ちょっと甘かったなって。僕が本格的にプロを意識したのは大学1年生のときなんです。それまでは、真面目にはやってるけど本気ではやってないという状態で。大学時代や今の熱量と比べたら、まったくプロを目指せるレベルに達していなかったと思います」

-本気モードになったきっかけは?

「国士舘大学に入って1年生の終わり頃、4年生は進路が決まり始めるんですけど、めちゃくちゃ上手い先輩でもプロになれず、それどころかサッカーを続けるか続けないかの判断を迫られているのを見て、自分も3年後ああなるんだと思ったときに『ヤバいな』って」

-そこからプロを目指して実現させるのは、なかなか珍しいケースかもしれません。

「僕は足が速かったし、身体も大きくて、それでなんとか他の人を上回れていた部分がありました。だからギリギリやってこれたのですが、技術は全然足りてなくて。意識を変えてからは『成長するためにはやるしかない』と、必死に課題と向き合うようになりました」

-プロ入りして2年、今の目標は?

「一番近い大きな目標は、来年のワールドカップで代表メンバーに選出されることです。そこに照準を合わせれば、スキルやメンタルもさらにレベルアップできると思っています」

-全少に臨む選手やプロを目指す子どもたちへ、アドバイスをいただけますか。

「まずは楽しむことが一番だと。上を目指していると思い通りにいかないことも当然あります。でも、すべてにおいて楽しめていたら、おのずと上手くなるためにいろんなことを考えられたり、前を向けたりすると思います」

-最後に、子どもたちを応援するサカママに向けてメッセージをお願いします。

「サッカーにはあまり口を出さず、お子さんを見守ってあげてほしいですね。練習や試合で全力を出している分、家ではリラックスしたいはずですから。親子関係はそれぞれですが、陰ながら応援してあげるくらいが子どもにとってはいいのかなって思います」

写真提供/ FC町田ゼルビア

(2025年12月発行 soccer MAMA vol.56 「Jリーガーたちの原点 vol.56」にて掲載)


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