ケガのリスクが増す現代サッカーでトレーナーに求められるものとは?
選手のコンディション管理がより難しくなっている近年、トレーナーの重要性が高まっている。選手をサポートする「トレーナー」という立場からJリーグクラブやサッカー日本代表を支えてきた前田弘氏が語る、仕事内容や働くうえでの心掛け、そして現代のトレーナーに求められているものとは!?
Q▶トレーナーの仕事内容は?
選手の健康管理やリラックスできる空間づくり
選手のコンディション管理を担う仕事です。主に練習や試合前のウォーミングアップ、終わってからのケアですね。近年はいろんなデバイスが導入され、睡眠の質や血液の状態から身体の状態を診るなど、技術が進歩しています。ですが、ストレッチやマッサージ、コミュニケーションを通して選手のコンディションをより良くする、少しでも安らぐ空間を作るという根本の部分は変わっていません。トレーナー自身も日々勉強を重ね、人と人との関わりが大切な仕事だという認識を忘れずに持つ必要があります。
Q▶トレーナーが持つべきマインドとは?
アクシデントに焦らず的確な処置を行う判断力
「的確な判断と実行力」で活動を行うことを心掛けています。アスリートを相手にしているので、往々にして練習や試合中の予期せぬアクシデントに遭遇します。どんな状況でも焦らず、状況を的確に判断して処置を行うことができるトレーナーが求められています。
Q▶トレーナーに必要な技術や資格は?
AT取得後は、それぞれの現場で必要な技術を習得
選手の健康管理やケガから復帰までのリハビリ、トレーニングの指導などの業務を行ううえで、アスレティックトレーナー(AT)のほかに、鍼灸師や理学療法士といった医療資格を取得すると、できる仕事の幅が広がるでしょう。実際に現場に立ってみて、自分がしたい仕事にはどんな技術や資格が必要なのかを確かめることが必要です。
Q▶選手に求められる空間とは?
さまざまなアプローチから、トレーナーにしかできない技術や体験を
遠征に帯同し、一日10人近い選手にマッサージを施したことがありました。セルフケアやセルフコンディショニングを怠らないトップ選手たちであっても、トレーナーを必要とし、訪れてくれるのです。マッサージの技術やコミュニケーション能力など、選手から必要とされるさまざまなアプローチがあります。そのためには教科書だけでは知りえない、現場に立ってみてこそ見えてくるものがあります。そこで自分にできることは何なのかを探してみてください。
Q▶これからトレーナーやスポーツ業界で働く学生に求められるものは?
“日本人らしさ”を大切に常に与え続ける姿勢を
“ギブ・アンド・テイク”ではなく“ギブ・アンド・ギブ”という精神を持つことが大事だと思います。トレーナーには、見返りを期待して仕事をするのではなく、与え続けることにやりがいを見出す姿勢が必要です。忍耐力や我慢することも求められますが、それが身に付けばどんな社会に飛び込んでも誰かの役に立つことができると思います。
また、選手が世界で活躍しているように、トレーナーも海外でやっていけるようなスキルを身に付ける必要があります。コミュニケーション能力や言語能力はもちろん、日本人が海外で評価されるポイントとして、丁寧さがあります。マッサージやテーピングを丁寧に行うという“日本人らしさ”を大切にして、これからスポーツ業界で働く人たちには、より上の舞台で活躍してほしいです。
写真/Getty Images