第3回『絶対的なピンチをストップできる!? ゴールキーパーは唯一前を向き続けるポジション』
皆様こんにちは!元なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)でゴールキーパーコーチの秋山智美です。暖かい日が続いていましたが、一気に寒くなってきましたね。ゴールキーパー(以下、GK)にとっては、寒い日や雨の日は辛い時期でもありますが、私は雨の試合が大好きでした。現役時代、西が丘で大雪の中で試合をした時は、味方側のコーナーキックなどのタイミングで、体が冷えないようにひたすらダッシュしていた覚えがあります(笑)。
第3回では、どんな時も必ずゴールを背に前を向き続けているGKだからこそ、経験できる事や魅力、そしてサッカーを通して学んだ大切な事などをご紹介していきます。
絶対的なピンチをストップできる権利を持つポジション
GKの1番のピンチはなんだと思いますか?
数多くあるピンチの中でも私が思うのはPKだと思います。なぜならば圧倒的にキッカー有利と言われている1vs1の場面だからです!ご存知の通りゲーム中のPKはペナルティエリア内に相手はもちろんのこと、仲間選手もキックされるまでは入れませんよね。
そして仲間やベンチメンバー、ファンサポーターの方達もGKになんとかしてくれ!と、願うことしかできません。そんな大ピンチの中、私たちGKはその視線を受けながらシュートストップに挑むわけです。これって、とってもすごいことじゃないですか!?
この絶対的なピンチをチームの中で唯一ストップできる権利を持っているのがGKなのです!カッコイイポジションだと私は思います。ピンチをチャンスと捉え、是非PKを止めた時のことをイメージしてワクワクしながらそのプレーに挑んでもらえたらと思います。
まさかというピンチをチャンスに変えた高校時代
人生には『3つのさか』があると言います。『上り坂』『下り坂』、そして『まさか』です。そのまさかをどうチャンスに変えるか。その経験を私は高校時代にしました。関東大会2日前に左肩を脱臼する怪我をしました。大会直前になんで…と焦りもあってとにかく痛かったです。その状態で試合に出場して、2回戦でまさかのPK戦へ。相手選手が左側に蹴ってくる事を考えると、怪我を気にして左に飛ぶのが怖くて躊躇していました。
そんな時にメンバー・ベンチ・応援メンバー、そして監督やコーチ、保護者の方々を見ました。この仲間や応援してくれる人の為に「私が絶対止めるのだ!」と気持ちを強く持つことができました。そして相手が絶対に左へ蹴ってくるであろう体勢になった事を確認して、思いっきり飛んだら見事に止めることができて、その試合は勝利を収める事ができました。そのまま勝ち進み決勝では負けてしまいましたが、関東2位で全国に行くことができた思い出の関東大会でした。
人の想いを背負いプレーをすると倍の力を発揮できると教えていただいたことがあります。ゴールを背にして、常に前を向いているGKだからこそ、思えるポジションですね!
恩師からサッカーと人間力を学んだ
先日、私の恩師でもあり、第二の父でもある本庄第一高校の日野 聡先生が他界されました。生前の日野先生から学んだことはサッカーだけでなく『人間力』です。人として大切な部分を沢山教えて頂きました。
- 感謝の気持ち
- 謙虚さ
- お陰様
高校時代の私は傲慢で意味がわかりませんでしたが、大人になるにつれて、この『3つの大切さ』がわかるようになってきました。
仲間・対戦相手、応援してくれる人へ感謝の気持ちを忘れない
先ほどの話に戻りますが、日野先生はPKで勝った試合の後、全く喜んでいませんでした。まず言われた言葉は「相手の立場になって考えなさい。相手に想いやりを持つことを忘れるな。最後までしっかりやりなさい。」という言葉でした。
これは、調子に乗るなよ、相手を想いやる心を忘れるな、応援してくれている人へお礼の挨拶を最後までしっかりやりなさい。という意味だったのではないかと思います。なんせすぐ調子乗っちゃう私なので(笑)。
人として大切な事を教えてくださったからこそ、サッカー選手としても成長できたと思います。サッカーの技術も大切ですが、更に人間力を磨く事の方が重要かもしれません。
謙虚な気持ちを持ってピッチに立つ
常にゴールを背に、前を向いているポジションだからこそ、仲間のおかげでゴールを守りながらボールを奪うGKにチャレンジができます。そうした謙虚な気持ち、ありがとうの気持ちをもちながらピッチに立つとオーラが変わります。
そんな仲間や相手を想いやる事ができる『人間力』のあるGKが増えていくように活動していきます。次回はリーダーシップについてお話しさせて頂きたいと思います!